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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十四章

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木を守るモノ2

「ユディット、リアーネ、俺のことを守ってくれ!」


「分かりました!」


「いくらでも守ってやるさ!」


 何かがいる。

 それは確かである。


 一瞬しか姿を現さないのならそれでもいい。

 その一瞬を逃さなければいいのだから。


 ジケは剣を構える事をやめてだらりと腕を下げる。

 リラックスしたような体勢を取って目を閉じて魔力感知に集中する。


 目を閉じても魔力を鋭敏に感じ取れれば世界は視える。

 剣を振る騎士、しなる木の根っこ、木の葉っぱの一枚までジケが今の集中状態なら視ることができるのだ。


 ただ集中しても周りにおかしなものはない。


「ジ、ジケ?」


 流石に戦いの場で無警戒すぎるのではないかとウルシュナは思う。

 ユディットとリアーネが守ってくれているとはいっても限度がある。


 しかしジケはウルシュナの声が聞こえていないように集中を続ける。


「……そこだ!」


 一本の木の後ろに魔力の揺らぎを感知した。

 走り出したジケは魔力を込めて剣を振り抜く。


「見つけた……ぞ」


 真横に切り裂かれた木が倒れて木の後ろにジケが探していたモノが現れた。

 それは女性の姿をしていた。


 薄緑色の腰まで伸びている髪のところどころに葉っぱが生えていて、ほんの少しだけ人と違うのではないかとジケに感じさせた。

 けれどもそれ以外のところは人と変わらない。


 新緑色をした瞳と目があって思わずジケも相手も驚いてしまった。


「ドライアドだ!」


 ルシウスは相手の正体を瞬時に見抜いた。

 女性の正体はドライアドという魔物だった。


「主人!」


 ドライアドが手を前に突き出すとジケの周りから何本もの根っこが飛び出してきた。

 それを見たニノサンがジケを助けに入る。


 ニノサンと背中合わせになるようにして迫り来る根っこを切り裂く。


「フィオス……なにを!?」


 ジケが根っこの最後の一本を切り裂くとドライアドが顔を歪めた。

 次はドライアドを相手しようとドライアドの新緑色の瞳に目を向けたジケの腕からフィオスが飛び出した。


 盾の形態からいつものプルルンボディに戻ったフィオスはドライアドとジケの間にある切り株の上に着地した。


「みんな攻撃を止めろ!」


 ドライアドがフィオスを見下ろして根っこの動きがピタリと止まった。

 ルシウスが指示を出して騎士たちは警戒しながらも根っこを攻撃する事をやめた。


「……フィオス、会話してる?」


「そんな感じするよね」


 ドライアドが膝を抱えて座りフィオスと顔を近づける。

 フィオスはピョンピョンと跳ねてドライアドは小さく頷いた。


 ウルシュナとエニはフィオスがドライアドと会話しているようだと感じた。

 フィオスが跳ねて、ドライアドが頷く。


 こんなやりとりが数回行われて、ふとドライアドの新緑色の瞳がジケのことを見た。

 ルシウスや騎士たちも含めてみんながフィオスの状況を見守る。


「根っこが……引いていく」


 何度切っても復活してきた根っこが地面の中に戻っていく。


「え、ええと?」


 ドライアドがそっとフィオスを抱きかかえるとジケの前に歩いてきた。

 ニノサンがジケを守ろうとしたけれどジケは手でニノサンを止める。


 敵意は感じない。

 けれども真っ直ぐに見つめてくるドライアドの意図が分からなくてジケは困惑してしまう。


「ジケ、ドライアドは何を意図している?」


「そんなこと聞かれても……」


 以前にも似たようなことがあった。

 フィオスが魔物と意思疎通を取っているような素振りを見せたのである。


 その時もなんと言っているのかなんで聞かれたけれどもちろんジケにフィオスがなんと言っているかなんて分からない。


「……なんだ?」


 ドライアドはジケにフィオスを渡す。

 そして大木を指差して、何を振るようなジェスチャーをして、手をクロスさせる。


「何かを言いたんだな?」


 ドライアドは何かを伝えようとしている。

 とりあえず何を言いたいのかと理解しようとするジケにドライアドは同じジェスチャーを繰り返す。


「あの木を切るなって言ってるのか?」


 何かを振るようなジェスチャー木を切っている動作なのではないかとジケは思った。


「当たりのようだな」


 ドライアドはパッと顔を明るくして何度も頷く。


「つまり君は……あの木を守るために人をさらっていたのか? ……違う?」


 一瞬迷ったようにドライアドは首を振った。


「あっ、おい! どこ行くんだ……」


 待ってろ、と言わんばかりに手を出してドライアドは森の奥に行ってしまった。

 どうしたらいいのか分からずジケはみんなの方を困った顔で振り向いた。


「今のところドライアドに敵意はないようだ。待ってみよう」


「ドライアドって何ですか?」


 とりあえず状況が状況だったのでドライアドのことを受け入れていたけれどドライアドがなんなのかジケは知らなかった。


「ドライアドは木の精だ」


「先ほど話していた妖精の一種ですよ」


 ジケの疑問にルシウスとニノサンが答えてくれる。


「木に宿る妖精ですが……性質としては精霊に近いものがあって人にも友好的な魔物です」


「へぇ」


「今のドライアドも特別人間を敵対視している感じはないのですがね」


 ただドライアドが木こりたちをさらったということは間違いなさそうだとニノサンは肩をすくめる。

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