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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十四章

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木のクマを倒せ!5

「ウッドベアがそちらに向かったぞ!」


 ジケたちの方にきたミニウッドベアは結構な数を片付けた。

 ルシウスの声が聞こえて渓谷の真ん中の方に目を向けるとウッドベアが巨体を揺らしてジケたちの方に走ってきていた。


「迎撃しろ!」


 魔法使い騎士のリーダーの号令で手の空いた魔法使い騎士たちが一斉に魔法を放つ。

 最初のようなまとまりはないものの各々から放たれた火炎が迫り来るウッドベアに向かっていく。


「うっ!」


 少し離れたジケも熱を感じるような魔法であったけれどウッドベアは口を大きく開けて咆哮した。

 耳が痛くなるようなウッドベアの咆哮によって飛んでいった魔法がかき消されてしまう。


「効いてないわけじゃなさそうだな」


 少し遅れて放たれた魔法までは打ち消すことができずにウッドベアに直撃する。

 けれどウッドベアはそのままは炎の中を突っ切ってくる。


 見ると体のところどころに火がついている。

 それルシウスたちにやられた傷の部分であり、ミニウッドベアと同じく切られたりして中身が露出したところは燃えやすいようだった。


「ミュコ、逃げるんだ!」


 ウッドベアが真っ直ぐに向かう先にはミュコがいた。


「ふふん、私だってやれるから!」


 ジケの言葉も無視してミュコは双剣を構える。


「わっ、すごい!」


 ウッドベアは大きく口を開いてミュコに噛みつこうと迫った。

 ミュコはクルリと回転しながらウッドベアの口をかわすと同時に双剣を振った。


 狙いはウッドベアの足。

 ミュコとウッドベアが交差するようにすれ違い、ウッドベアがガクンと体を落として地面に倒れて転がった。


 回転を活かし、しっかりと魔力を込めた一撃だった。

 それが偶然ルシウスが傷つけていたところに当たってウッドベアの足を切り裂いたのである。


「にひっ!」


 ウッドベアから飛び退くようにして離れながらミュコはジケに向かって二本指を立てて笑顔を向ける。

 ある種の運もあったのだが、運も実力のうちと言う。


「ユディット、ウルシュナ!」


「はい!」


「オッケー!」


 前足を切られてバランスを崩しているウッドベアはモゾモゾと起きあがろうとしている。

 この好機を逃してはならないとジケ、ユディット、ウルシュナの三人でウッドベアに攻撃を仕掛ける。


「ハァッ!」


 ユディットはウッドベアの残った前足を狙う。

 魔剣にさらに魔力を込めて放った一撃は切断までいかなくてもウッドベアの前足を深々と切り裂いた。


「うりゃあ!」


 ウルシュナは横からウッドベアを攻める。

 硬いことも分かっているので無理をしないようにウッドベアの胴体を槍で突いて表面の傷を増やす。


「フィオス!」


 以前からフィオスと色々試していて一つ面白いことが分かった。

 盾の形をしていたフィオスがジケの腕を伝い、右手に持った魔剣レーヴィンにまとわりつく。


 そしてうにょうにょと形を変えて剣をベースにした奇妙な斧の形を成す。

 金属化したフィオスが剣の先端のところに斧のような刃を作り出したのである。


 レーヴィンの真っ白な魔力のオーラがフィオスの刃を包み込む。

 何と不思議なことにフィオスとレーヴィンが一体となるとレーヴィンの魔力をフィオスがまとうこともできるのである。


 今この瞬間ジケが持っているのは魔剣フィオスレーヴィンなのだ。


「おりゃああああっ!」


 ジケは斧のようなフィオスレーヴィンをウッドベアの頭を目がけて振り下ろす。

 破壊力という点でみれば剣よりも斧の方が高い。


 レーヴィンの白い魔力をまとったフィオスレーヴィンはウッドベアの頭を縦に二つにかち割った。


「リンデラン! 拘束するんだ!」


「分かりました!」


 リンデランが冷たい魔力を放つ。

 ウッドベアの手足が凍りついて地面に縛り付けられて動けなくなる。


「よくやったな」


 ジケには見えていた。

 後ろからルシウスが来ていることが。


 地面を蹴って大きく飛び上がったルシウスはウッドベアに向けて槍を突き出した。


「エニ!」


「トドメだね!」


 身動きが取れないウッドベアの胴体にルシウスの一撃で大きな穴が空いた。

 全身ボロボロ。


 頭は割れて、胴体に大穴と露出しているところも多い。

 最後にエニが全力で炎を放つ。


 ルシウスが慌てて退避にしなければ巻き込まれてしまっていたかもしれないぐらいの火力がウッドベアに襲いかかる。


「燃える……」


 ウッドベアの体に火がついた。

 割れた頭や体の穴を中心に激しく燃え上がり、全身火だるまになって激しくもがく。


 しかし一度勢いよくついた火は簡単には消えない。

 まだ残っていたミニウッドベアを騎士たちが処理してもウッドベアは燃え続け、月が完全に真上に来る頃ようやく黒焦げになったウッドベアは倒れて動かなくなった。


 燃えたせいなのか二回りほど小さくなったウッドベアは念のためにと騎士たちがバラバラにして再度魔法で燃やして完全に処理されてしまった。


「勝利だー!」


「うわっと!」


 勝った。

 そのことが嬉しくてミュコはジケに抱きついた。


「あっ、ずるいです!」


 感情を素直に表に出せるミュコが羨ましい。

 リンデランは少しそんなことを思いながら頬を膨らませる。


「じゃあリンデランも!」


「ブゥー、そうじゃないです!」


 ミュコがニコニコの笑顔でリンデランの膨らんだ頬を指でつつきながら抱き締める。


「とりあえずこれで終わりですかね?」


「あとは再び周りの調査を行って脅威がないとわかれば終わりだ」


「……ふわっ。とりあえず眠いですね」


「そうだな。まずは拠点に帰って休もう」


 夜の戦いだった。

 思ったよりも戦いは長引いてすっかり深夜の時間帯になっている。


 ジケも普段は夜更かしなんてしないので戦いが終わってみると眠くなってきた。

 後の処理は騎士たちに任せてジケたちは渓谷の入り口にある拠点まで戻った。


 みんな戦いで興奮していたけれどやはり戦いは疲れるもので、テントで寝転がるとすぐに眠りに落ちてしまったのだった。

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