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他力本願6

過去の記憶でもウダラックは討伐されていた。

 思い出すと胸が苦しくなるような出来事。


 過去では戦争が始まってしばらくしても王がいる首都は平和に過ごしていた。

 戦争の影響は出てきて物価の上昇などはあったけれど直接戦火に見舞われることもなく、強制的な徴兵もなくジも日々を暮らしていた。


 そんな時に貧民街に悲鳴が響き渡った。

 平和な貧民街に突如現れたスケルトン。


 非力でなんの力持たない貧民街の住人は非力な魔物のスケルトンに蹂躙された。

 それもそのはずでスケルトンは1体だけではなかった。


 軍隊のように押し寄せるスケルトンは1体1体は貧弱でも痛みを感じずただ愚直に迫ってくる。

 被害は大きかった。


 貧民街で起きたことなので把握も遅かった。


 国の主要な部隊は戦争に出ていて少ないし王の側を離れられず小規模しか派遣されなかった。

 大神殿まで話がいって残った聖職者たちが集まってようやくスケルトンは撃退された。


 調べてみると貧民街にほど近い城壁が破壊されていた。

 スケルトンが自然に大量発生するはずもないし、まして城壁を破壊することもできない。


 裏に何かがいる。

 怪しい気配を感じた大神殿は他の国から聖職者や聖騎士を呼び寄せて調査をした。


 そこであの墓地でウダラックと思われるリッチを見つけた。

 墓地が消し飛ぶほどの戦いがあった。


 聖騎士と聖職者が激しい戦いを繰り広げながらライフベッセルを探したがライフベッセルは見つからなかった。

 それも当然の話だと今では思う。


 そもそもウダラックのライフベッセルは2つあった。

 1つは遠くビッケルンにあったのだ。


 ウダラックの話を聞いて考えるとリッチとして人を襲っていたという事はもうどこかで隠していたウダラックのライフベッセルは壊されていた可能性がある。


 ともあれ、聖騎士と聖職者は焦った。

 ライフベッセルが見つからずただ戦いで消耗していく。


 ライフベッセルを見つけられないことを悟った聖職者は仕方なく次善案を取った。

 持っていたアイテムと総力を上げてリッチを拘束した。


 殺せないなら捕まえてしまう。

 その後どうなったのかジは知らないけれどきっと大神殿の地下とかで封じていたのだろうと思う。


 最終的にはリッチは討伐されたと発表された。


 そのタイミングは王弟側が大敗して大きく戦線を引き下げたのとほぼ同時期だった。


 そこでジは予想した。


「ビッケルンが闇の魔法を研究していてリッチを生み出そうとしていると広めてほしいんです」


 リッチが討伐された事は本当だろう。


 拘束している間も神聖力を用いてはいただろうからライフベッセルの魔力が無くなってリッチが消滅したということも考えられる。

 けれどよほど神聖力を用いて攻撃しない限りそんな事は難しい。


 ならばやはりライフベッセルを破壊したと考えるのが自然な流れである。


 戦線が下がったこととライフベッセルが破壊されたことに何か因果関係があるとしたら。

 つまり、後方に位置していたビッケルンまで進軍した結果ライフベッセルが破壊されたとジは考えた。


 リッチやスケルトンが出て軍に被害があったなんて話は聞かなかったけれどリッチを生み出すほどの黒魔法を使っていたなら軍隊に同行している聖職者が気づかないはずがない。

 ビッケルンがどうしたかは重要ではなく、王様側の軍によってライフベッセルが破壊されたのではないかということが重要である。


「そうするとどうなる?」


「そこまで進軍できれば少なくとも早めに調査が入ると思います」


 ビッケルンの領地まで軍隊を進めさせることなんてジにもルシウスにも出来ない。

 やるのはただ噂を流すだけ。


 特に聖職者を中心に流してもらえればいいかなと思う。


「つまりは他力本願ってことか?」


「そうですね」


 グルゼイが呆れ顔をする。

 良い考えでもあるかと思ったのに王様側の軍が勝ち進んでビッケルンまで進んで、ライフベッセルを見つけることを期待するだけとはなんとも希望的な考え。


 ジも賭けに近いやり方だけど悪くないと思っている。


 過去とはもう違う。

 戦争が起こってしまう事は止められなくても王様側をだいぶ有利に、王弟側を不利にできた。


 結局ルシウスはどっちにしろ戦争で戦う事はなく、リアーネも王様側として戦争で戦うことがなくなってしまった。

 それでもパージヴェルの参戦やリアーネ1人でも王弟側にいないことは有利に働く。


 ついでに相手の大きな戦力でもあるヘンヴェイも捕らえられ、ニノサンも行方不明。


 それにもう1つ。


「まあ、王様も出ていることですし、ビッケルンまでちょちょいですよ」


 過去王様はこの時期表に出なくなった。

 謀反から逃げたはいいが大怪我を負ったとか王弟の謀反にショックを受けて寝込んでしまったとか言われていた。


 そのために首都の残留部隊も多く、ロイヤルガードも王様について残っていた。

 それが今回は前線に向かっている。


「そう上手くはいかないと思うがな……」


 ビッケルンまで進軍してもらえればあとは闇魔法の痕跡を見つけてもらう必要がある。

 聖職者の間でそんな噂が流れていればきっと積極的に探してくれ、過去よりも早く見つけてくれる。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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