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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十四章

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身も心も温まりたい4

「氷、意外と使うから覚えた!」


「そうなのか?」


「キーケックは広く魔法を扱う才能がありますね」


 多くの人には得意な属性というものがある。

 エニやリンデランは分かりやすい例でエニは火、リンデランは氷である。


 一方でキーケックは特別に得意といえる属性がないもののどの属性もちょっとだけ得意といえるぐらいには扱えた。

 不得意な属性なく満遍なく扱えるというのもまた才能だといえる。


 キーケックがエニと同じように火を練習しても勝てないけれど別の属性を使えばいい。

 実際の戦いでも色々と使えるし実験なんかでも多属性を使いこなせれば便利なことも多い。


 これまでキーケックはあまり氷を扱ってこなかったけれども、クトゥワに習いながらやってみると案外できたのでキーケックの才能が分かった。


「すごい?」


「ああ、すごいさ」


「うふふふふ〜」


 キーケックは少し頬を赤らめて嬉しそうに体を揺らしている。

 得意属性がないというのは器用貧乏になりがちで批判する人もいる。


 けれどなんでもできる可能性は広いのだとジケは知っている。

 ジケは得意な属性が分からないほどに魔力が少ないので羨ましさも感じてしまう。


 ともかくキーケックが色々とできるようになればジケとしてもありがたい。


「もうすぐ着くぞ」


 川が見えてきてリアーネが馬車の方を振り返る。

 キーケックの素直に褒めてといえるところは少し羨ましいなとリアーネは思う。


 川に着いたら馬車から降りて水をケントウシソウのコブに吸収させる準備をする。


「落ちるなよ、フィオス」

 

 澄んだ水が流れている川をフィオスは覗き込むように見ている。

 沈んたりはしないだろうけどフィオスに川の流れに逆らう力はない。


 落ちたらそのまま流されてしまうことになる。


「まずは水をかけてみましょうか」


 水を吸収させるのにも効率的なやり方というものもあるかもしれない。

 少しやり方を変えながら試していく。


 ユディットが木のバケツを使って川から水を汲んで地面に置いたケントウシソウの乾燥コブに水をかける。

 ジャバッとかけられた水が地面に広がる。


「おお〜すごいですね」


 流石にかけた水を瞬間的に吸収はできなかった。

 けれどもケントウシソウの乾燥コブの周りの水がみるみる吸収されてなくなってユディットは驚く。


「ふむ、これでは効率が悪そうですね」


 水を汲んではかけてを繰り返してケントウシソウの乾燥コブは普通のコブと同じく丸くパンパンになった。

 これでも水を吸収させることができるけれどただ地面に置いて水をかけていくのは予想通り非効率的である。


「はぁ〜ちゃんと元通りになるんだな」


 リアーネは丸くなったケントウシソウのコブをパンパンと叩く。

 水を含んでしっかりと丸くなったケントウシソウのコブは水を絞る前の状態とほとんど同じである。


 やや小さいかなぐらいにはリアーネは感じたけれど誤差程度である。


「まあこの方法がダメそうなのは分かってたから次に行こう」


 川から水を汲んでかけるなんてめんどくさそうなことをやるつもりはなかった。


「じゃあ次はこれ!」


 本命となる方法を試してみる。

 ジケが取り出したのはロープを編んで作った網である。


 網の中にケントウシソウの乾燥コブを入れて川の中に沈める。


「早い」


「流石に水かけるよりはな」


 水に沈めたケントウシソウの乾燥コブは川の水を吸収してみるみる大きくなっていく。

 水をかけた時には何往復も必要だったのだけど水に沈めればあっという間に水をたっぷり含んだコブになった。


「やはりこの方が効率がいいですね」


 水をかけるより労力が少なく、水を吸収させる時間も短い。

 直接川に浸けてしまうのがよさそうだ。


「んじゃもう一つ……」


 網に入れて川に入れるのはやり方としてほとんど確定。

 こうなるだろうなと思っていたジケは更なる改善案を考えていた。


「箱ですか?」


 ジケが馬車から持ってきたのは木の箱だった。

 大きさは水を含んだケントウシソウのコブぐらいで、枡みたいに一つの面が開いている。


 そして開いている面の逆側も完全に板で覆われているのではなく格子状になっている。


「なんだこりゃ?」


 木の箱を持ち上げたリアーネが箱を覗き込む。

 格子の向こうに笑顔を浮かべるジケの顔が見えていた。


 この箱では水を汲むこともできない。


「これでどうするんだ?」


 不思議な箱にリアーネは首を傾げた。

 何に使うのか予想もできない。


「ふふ、こうするんだよ」


 ジケはケントウシソウの乾燥コブを変な箱の中に入れた。

 そして網の中に入れて川の中に沈める。


「んー?」


 箱に入れたからなんだというのだ。

 リアーネが不思議そうに眺めていると箱の中のケントウシソウのコブは水を吸収して膨らんでいく。


「よいしょ」


 十分に水を吸収したので網を引き上げる。

 網の中から箱を取り出すと箱の中でケントウシソウはパンパンに膨らんでいる。


「どーすんだ、これ?」


 膨らんでいるのはいいけれどミッチミチでこれじゃあ取り出せない。


「こうするんだよ」


 ジケは箱の格子状になっている方から棒を差し込んでケントウシソウのコブを箱の中から押し出した。


「おおっ!」


「うん、上手くいったな」


 箱の中から押し出されて出てきたケントウシソウのコブは箱の中で膨らんだために四角い形をしていた。


「面白いことを考えますね」


「この形の方が運びやすいんじゃないかって思ってね」


 ジケが箱を用意した理由はケントウシソウのコブの形を変えられないかと考えたからだった。

 膨らむとケントウシソウのコブは丸くなってしまう。


 それで不都合なこともないのだけど、丸いコブは運ぶ時になかなか面倒ではある。

 そこで四角くして馬車に積み込みやすくできないかとふと箱に入れてみたらどうだろうと思いついたのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] >落ちたらそのまま流されてしまうことになる。 魚の擬態を覚えれば何とかなりそうだね
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