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死者の王4

 そもそもの話リッチの最大の武器といえば魔法である。

 剣を手放したところで素直に降参だと受け入れられはしない。


 リッチそのままゆっくりと床に降り立ちグルゼイに貴族のような一礼をした。


 敵意は感じない。

 問答無用で攻撃もしてこないし会話も通じそうな雰囲気がある。


「警戒なさるのは当然なので剣は下ろさなくて結構です。


 まずは自己紹介から。

 私はウダラックと申します」


 今度はリアーネの方に頭を下げてみせる。


「1つ話を聞いてはいただけませんか?」


「嫌だと言ったら?


 殺すか?」


「ううむ、そのような返事は想定していませんがお話を聞いていただけないというのであれば仕方ありません。


 私にも事情というものがありますので……」


 返事の内容によっては先行を取って切る。

 足に体重をかけていつでもウダラックに切り掛かれる体勢をとるグルゼイ。


「聞いていただけるまでここから出しません!」


「は?」


 子供のわがままのような返事。


 子供が言えば可愛いものだけどリッチが言えばただの脅しに他ならない。

 肉もない骨が故に表情を読み取ることはできないけれど声色には冗談めいた色が見えているので力で脅したいようには思えない。


「ただ話を聞くだけでドアが開くのですから悪くない話でしょう?」


「……分かった、話は聞いてやる。


 ただし話を聞くのは俺だけだ。


 そっちの3人は先に逃してもらおう」


「師匠……」


「ダメだ」


「なぜだ?」


「特に、そこの少年だ」


 ウダラックが指先をジに向ける。

 リアーネとユディットがジの前に立ちはだかるけれど魔法を使ったのでもなくただ指差しただけだった。


「俺?」


「そう君だ」


「君からは不思議な感じを受ける……僕を運命の鎖から解き放ってくれる、そんな感じがするんだ」


「何を言っている?」


 グルゼイと目が合うけれど言われているジ本人も何のことなのか理解できない。

 目玉のない虚空がジを見つめる。


 思い当たる節がないとは言えない。

 こうして時間を巻き戻して子供に帰ってきたことが何かの影響を与えているのならば魔物であり魔力に関して感覚の鋭敏なリッチには何かが感じ取れるのかもしれない。


「それにそちらのお嬢さん。


 あなたからは死のにおいがする。

 おそらくその魔獣と繋がりが深いのでしょうね。


 きっと私の目的のためにはあなたの力が役に立つ。


 どうしてもというならそちらの子は出て行っても構いませんよ」


「な、俺だって戦えないわけじゃない!


 それに自分の仕える主君を置いていけるわけないだろ!」


 わずかにユディットの手が震えている。

 リッチといえばユディットでも聞き覚えのある強力な魔物だった。


 ゴブリンにもまだ苦戦するユディットなら指先1つで倒されてしまう。


 それでもユディットはジのために命をかけると誓いを立てた。

 まだまだシハラを助けてもらった恩を返せないばかりか雇ってもらい、お金まで貰っている。


 少し前にはグルゼイに連れられてどこかに行った時には命の危機に晒されたとまで聞いた。

 ジに仕える騎士として出来たことなんてまだ何1つない。


 ここで行って良いと言われても主を置いては逃げられない。


「それは……」


 ユディットの意志に反応するかのようにユディットの魔法剣の魔力が音を出す。

 羽虫のようでありながらどこか鈴の音のような心地よい魔力の音。


「魔法剣かい。


 また珍しい物を……ふむ、今は使い物になりそうにないけど鍛えれば強くなりそうだね」


 ユディットはグルゼイとリアーネに鍛えられているだけあって実力は同世代の子と比べると頭1つも2つも飛び抜けている。

 実戦経験が少ないだけで今もそれなりの強さなのだけど。


「むしろ……あなたの方が出ていく方がいいかもしれませんね。


 この中で1番価値がない」


 とんでもないことを言う。

 1番価値がないと言い放たれた相手はグルゼイ。


「なんだと……!」


 単純な強さ以外のところに注目するならグルゼイが最も意外性がない。

 プライドを一刺しにされたような気分にグルゼイはひどく気分を害した。


 今にでも切り掛かりそうなグルゼイだがここでくだらないプライドを傷つけられたと切り掛かっても良いことはないと思い留まる。


「じゃあこうしましょ、年長者は尊重すべきですからご退室しても大丈夫です。


 この3人には私の話を聞いてもらいましょう。


 ご心配なさらなくても私が3人に手を出すことはございません」


 すでに傷つけられたグルゼイのプライドの傷口に塩を塗るようなウダラック。

 わざとやっているというよりも本当にグルゼイには興味がないために言っている。


 ウダラックが再び指を振ると教会のドアが開く。


 グルゼイに向かってどうぞとジェスチャーをしてみせるウダラックは顔があったならきっと悪気のない晴れやかな笑顔を浮かべている。


「……貴様」


「俺は!


 俺は、師匠がいないのなら話を聞くつもりはありません」


 これ以上2人を会話させると待ち受けるのは開戦の未来しかない。

 グルゼイの言葉を遮るようにジが先に断りを入れる。


 何を話されるにしても3人では判断が難しい。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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