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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十三章

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泥棒に狙われる宝石2

「それが……」


 ウェルデンは複雑そうな表情を浮かべる。

 あまりこうした顔をする人ではないのでよほどのことがあったのだなとジケも自然と察する。


「ジケ商会長殿にはお話ししましょう。まだ正確には何があったのかは分からないですが、襲撃に気づいて駆けつけた時にはかなり奇妙な状況になっていました」


「奇妙な状況……? 何が?」


「襲撃者の正体も分かっていないのですが……その、多くのものが死んでいまして」


「ええと……どういうことですか?」


 歯切れの悪いウェルデンが何を言いたいのかいまいち理解できない。


「報告を受けて警備長と共に金庫に駆けつけた時にあった光景は開けられた金庫と……多くの死体でした」


 金庫の中にはジケの宝石だけでなく色々なものが入れられている。

 金庫が襲われたと聞いたウェルデンは剣を掴んで自ら金庫に駆けつけた。


 歴戦の商人は滅多なことでは驚かないなんて言われることもある。

 ウェルデンも経験豊かな商人であり、驚くことはあってもそれを態度に出すことは少ない。


 しかしそんなウェルデンですら驚くような光景が金庫の前に広がっていた。

 金庫が破壊されていたことも驚きなのだが、それよりも金庫の前が血の海になっていたことの方が驚きだった。


 当然警備の兵士が黙って見ているはずもないので強盗しようと思えば倒されているのは当然だ。


「しかし襲った側も多くの人が血まみれで倒れていたのです」


 守ろうと抵抗すれば戦いになるので強盗側にも死傷者が出て然るべき。

 けれどその状態が普通ではなかった。


「切り倒された者もいたのですが……血を噴き出して倒れていた者もいたのです」


 警備の兵士たちは剣を使っていた。

 だから切って倒された死体があるのは理解できる。


 けれど奇妙な死体もいくつかあった。

 目や鼻などから大量に出血して倒れている死体があったのである。


 警備の兵士たちの死体ではなく強盗側の死体でそうなっていた。


「一体何をしたらそんなことになるのか……」


 警備の兵士たちは普通の人たちである。

 血を噴き出して死んでしまうような攻撃を行う者などいない。


 そうなると強盗側に何かがあったのだろうということになるのだが、何があったのか皆目見当もつかない。

 ウェルデンはため息をついて首を振る。


「ともかくお預かりした宝石は探し出します。もしこのまま取り返せないことになったら……一生かけてヘギウス商会で償わせていただきます」


 本来なら莫大な金額になってもおかしくないピンクダイヤモンドを盗まれてしまった。

 最低額でもジケが要求すればヘギウス商会を丸々手に入れることだって不可能ではない。


「まあ……何か分かりましたら教えてください」


 けれどジケにそんなつもりはない。

 大人たちが揃いも揃って深刻そうな顔をしている中で相手を強く詰めることなどできはしない。


 ヘギウス商会にはお世話になっているので潰れるようなことはしたくない。

 取り返すことができなければその時はその時でしょうがないだろうと思っておく。


「もちろん、何か分かりましたらすぐにご報告させていただきます!」


 ヘギウス商会だって人が亡くなっている。

 一切ジケは今回のことについてヘギウス商会を責めるつもりがない。


 動揺することもなく怒り出すこともない。

 かなり大人な対応にウェルデンは感動すら覚えていたのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ジケ君からしたら拾い物で自分の物って感覚がほぼないからまあいいやってなってるんですよね。 1周目だったら怒ってたかもしれませんけど。
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