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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十二章

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人は人にお任せよ

「パルンサンの墓所ですか?」


「はい、そうなんです」


 次の日、ジケはデオクサイトのところを訪れた。

 なんとなくだけどこうしなきゃいけない気がしたからだ。


 フィオスがオオカスミを説得してくれた。

 ジケたちにパルンサンのお墓を荒らす気はなかったのだと伝えてくれたのだと思っている。


 だがこのままではパルンサンのお墓は見つかって、オオカスミはそこを守るために戦うことになるだろう。

 仮にお墓を見つけたところで利益になるようなものは何も置いていない。


 となると冒険者たちとオオカスミの無駄な争いが起きてしまう。

 それを止めねばならないとジケは思ったのである。


 フィオスが説得してくれた時オオカスミはジケのことを見た。

 確証はないけれどフィオスがジケならなんとかしてくれると伝えたように思えたのだ。


 本当のところは分からないけど、フィオスと繋がっているジケのそんな思いはきっと間違っていないのだろうとみんな肯定してくれた。

 この事態を収拾するためにはイバラツカの領主であるデオクサイトの力が必要となる。


 デオクサイトのところを訪れたジケは何があったのかを説明した。

 森にパルンサンのお墓があって、元魔獣がそれを守ろうとしていると。


「なるほど……そんなことがあったのですか」


 正体不明の魔物の正体がようやく分かった。

 まさかそんな事情があったとはデオクサイトも驚いている。


「けれどどうしろというのですか?」


 デオクサイトはパルンサンとオオカスミの事情については一定の理解を示す。

 だが事情が分かったとてオオカスミが人を襲うという事実に変わりはないのだ。


 むしろ住処が分かったのなら早急に倒してしまうべきである。

 領主として人々の安全を守る義務がデオクサイトにはあるのだ。


「一度だけでいいんです。チャンスをくれませんか?」


「チャンス、だと?」


 デオクサイトは眉をひそめた。


「パルンサンのお墓周りを立ち入り禁止にしてください。そうすればあの魔物は人に手出ししないはずです」


「ほう?」


 お墓を荒らされると思うからオオカスミは暴れるのだ。

 手を出さないと分かれば大人しくしているはず。


「そのようなこと、本当にできるのですか?」


 デオクサイトは懐疑的な目をジケに向けている。

 人と契約している魔獣ならともかく、今のオオカスミはもう人と契約していないただの魔物である。


 何かの命令を聞く必要はなく、制御できるとはとても思えなかった。


「……できます」


 それでもジケはオオカスミならできると思った。

 フィオスの説得に応じてジケたちを見逃してくれた。


 そして何より長いこと主人を思い、その存在を守り続けようとする優しさがオオカスミにはある。

 たとえ魔物でも心があり話が通じるのならチャンスはある。


「もしそれでも人を襲い続けるのなら倒しましょう」


 住処は分かっている。

 まだ人を襲い続けるのなら探し出して倒すことは難しくない。


「ナワバリを持っていてそこに入らない限り襲ってこない魔物もいるじゃないですか」


 人と共存に近いような形態の魔物もいる。

 絶対的なナワバリがあってそこに入りさえしなければ敵対しないような魔物もいるのでオオカスミもそのような魔物だと思ってもらえばいい。


「確かにそういう事例はあるな」


 互いに一線を引いて過ごせば安全に暮らすことができる。

 ケントウシソウもある種そうしたものに近い。


「どこまでをナワバリとするか難しいところではあるがいいでしょう。他でもないフィオス商会の会長殿の頼みだ。私の父も君のところのアラクネノネドコを使い始めてから機嫌がいい」


 それだけ長い間を生きてきた魔物は倒すのも簡単ではない。

 戦えば受ける被害は決して小さく終わることがない。


 立ち入り禁止にするという苦労はあるけれども魔物との無用な衝突を避けられるのならその方がいいかもしれないとデオクサイトは考えた。


「それに人の墓所を踏み荒らすべきではないことは私も賛成です」


 過去でパルンサンのお墓はどうなったのだろうか。

 ジケは知らない。


 でも少なくとも今回はパルンサンとトルシアとオオカスミ、邪魔されることなくゆっくりと過ごせるといいなとジケは思った。


 ーーーーー


 次の日ジケはオオカスミのところを訪れた。

 フィオスを抱えたジケにオオカスミ一瞬の警戒心を見せたけれど、お墓の入り口からあまり中に入らないようにして敬意を払うように一礼すると攻撃はしてこなかった。


 ジケは今回のことをオオカスミに説明した。

 言葉が通じているかは分からないがオオカスミはパルンサンの棺の横でジケのことを見つめながら話を聞く。


 ジケが今回のことを話し終えて、最後にお墓には人が立ち入らないようにしておくので人をもう襲わないこと、けれどもお墓の中に立ち入った人がいるなら倒してしまってもいいことを伝えた。

 するとオオカスミはゆっくりと立ち上がりジケの前まで歩いてくる。


 そしてジケの頬とフィオスに鼻先をトンと押しつけるとまたパルンサンの棺の横で寝始めた。


「……話通じたのかな」


「そんな感じするね」


 一緒に来ていたエニもそんな不思議な光景を見ていた。

 魔獣でなくても真心を込めれば思いが伝わることがある。


 デオクサイトはジケのお願いを聞いてくれてパルンサンの墓所があることを公開して、その近辺を立ち入り禁止とした。

 魔物は墓所を守っているものとして手を出さないようにと冒険者ギルドを通じて領主の命令として出した。


 するとその後オオカスミによると思われる被害はパッタリと無くなった。

 時々森の中で目に見えない巨大な魔物が動く気配を感じる人もいるというが襲われることはない。


 オオカスミはきっとパルンサンと共にいるのだ。

 一緒に大冒険を繰り広げた相棒を守るためにパルンサンが死んでもそばにいることを選んだ誇り高い魔物。


 人のみではなく魔物の未来もフィオスの力で変えられたのかもしれない。

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