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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十二章

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大泥棒が休む場所2

「とりあえず探してみようか……」


 ここまできたらやるしかない。

 また透明化する魔物に襲われるかもしれないしパルンサンの秘密拠点探しを始める。


「石をどうしたらいいの?」


「石そのものがスイッチか、もしかしたら下に何かあるかもしれません。なので持ち上げて確かめていただけると」


「めんどくさいな」


 面倒だなと思っていたけどジケは口に出さなかったがグルゼイはサラッと言ってしまった。


「はははっ……どうかお手伝いお願いします」


「俺は周りを警戒する」


 そんな細かい作業をグルゼイはするつもりがない。

 透明化する魔物を感知できるのはグルゼイかジケぐらいであるし、グルゼイが周りの警戒にあたるのは理にかなっている。


 ジケたちは石を拾い上げて秘密拠点への入り口がないかと探す。

 拾ってその場に戻すとだんだんどの石を確かめたのか分からなくなる。


 なので少しずつ場所をずらして戻し、作業した場所を分かりやすくしながら進めていく。

 地味で根気のいる作業。


 モロデラが結構雑にポイポイと石を確かめていくのでジケたちもそれにならって結構適当にやっていく。


「はぁ〜疲れた」


 日が真上まで昇ってきたので一度休憩を取ることにした。

 森の中で水辺が近いので地面が湿っている。


 だから防水布を敷いて座り、お昼を食べる。


「本当にあんのかね?」


 しとしと流れる細い川の始まりを眺めながらリアーネはため息をついた。

 最悪の場合ここにパルンサンの秘密拠点があるならいいけどなかった場合衝動的にモロデラのことをここに埋めて帰ってしまうかもしれないと思う。


「ここが最も可能性が高いはずなんです」


 ジケたちが休む横でモロデラはまだ石を拾い上げては投げ捨てている。

 休んだらいいと言ったのだけど自ら休まないと言って続けているのだ。


「うーん……」


「どうしたの、ジケ?」


「いや……」


 ジケは考えていた。

 パルンサンは割と豪快な性格だと思う。


 文字もワイルドだし盗んだものもかなりすごいものだった。

 残されたメモの語り口調もざっくりとしたもので細かいことをあまり気にしないような人なんだと推測ができる。


 その一方で罠はかなり繊細だった。

 発動させるスイッチも分かりにくく、かなり昔のものなのに問題なく起動もした。


 パルンサンの協力者という人がどんな人なのか知らないけれどかなり細かなところまで気を使うような性格の人なのではないかとジケは考えていた。

 宝物庫の方はともかくこの秘密拠点があると思われる森は人里から近い。


 となると地面の石にスイッチがあるだろうかと疑問が出てきた。

 何かのタイミングで誰かが蹴ってしまえば発動してしまうようなところに入り口のスイッチを置いておくとは思えない。


「人がまず触れないところ……」


 きっと入り口のスイッチを作るにしても絶対に普段は人が触れないようにしているのではないか。


「絶対に人が触れなくて、変わらない場所……」


 地面に転がる石ではない。

 ふとした拍子に人や魔物が触ってしまうかもしれない。


 木々や草でもない。

 形が変化してしまう。


「……ジケ? な、なにしてんのよ!」


 すくっと立ち上がったジケは上着を脱いだ。

 エニが顔を赤くして手で目を覆ったけれど一応指の隙間から何をするのかは確認する。


「リアーネ、服持ってて」


「……」


「リアーネ?」


「あ、おう!」


 意外といい体してる。

 思わずリアーネはジケの体を無言で見つめてしまっていた。


 リアーネに服を預けたジケはフラフラと水が染み出している壁に近づいて手を突っ込んだ。

 川の始まり、パルンサンの思い出の川、そして誰も触れずに変化も起こりにくい場所。


 グッと手を突っ込むと水が染み出しているところの横に小さな空洞があった。


「ん……これかな?」


 ジケが指先に力を入れて空洞の壁を押すとガチャリと音がした。


「わわっ!?」


 地面が揺れる。

 水が染み出している場所の横がスライドして開き、中に空間が続く入り口が現れた。

 

 ジケが振り返ると驚いたような表情をしてみんながジケと入り口を見ていた。


「み、見つけちゃった」


「う、うおおおおおおおっ!!!!!! ジケさーん!」


 号泣。抱擁。

 本当にパルンサンの秘密拠点があった。


 モロデラはものすごい勢いで涙を流しながらジケに抱きついた。


「は、放してください!」


 おっさんに抱きつかれる趣味はない。

 ジケは必死に抜け出そうとするけれど興奮したモロデラには何も聞こえていない。


「やりましたよ、ご先祖様! やりましたよ、父さーん!」


「いいから放せ!」


「ふおおっ! わたしぶぁ!?」


「落ち着け」


「な、何を……」


「昼もまだ途中だ」


 カプッとグルゼイの魔獣であるスティーカーがモロデラの首に噛みついていた。

 モロデラの手から急激に力が抜けてジケは解放された。


「それにうるさくてたまらん」


「ほろ……ご先祖……様」


 そのままモロデラはパタリと地面に倒れた。


「な、何したんですか?」


「うるさいから眠らせただけだ」


 もちろんグルゼイが急にモロデラを殺すわけがない。

 スティーカーが打ち込んだのは弱い睡眠毒で、モロデラの興奮を抑えるためにはこうでもしなきゃいけないと判断したのである。


「入る前に昼飯ぐらいしっかり食ってからにしよう」


 きっとあのままにしておけば1人でも中に突撃していったことだろう。

 モロデラが寝かされている間にジケたちは改めてしっかりとお昼を食べることにした。

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