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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十二章

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寝不足はいけません

 ニノサンに帰るのが遅れることを伝える手紙を送って良い宿でのんびりと過ごす。

 南の諸国に近い国なのでそちらの方の情報も集めたりした。


 以前ジケが盗掘団絡みで行くことになったモンタールシュという国では新たな遺跡が見つかったらしい。

 もう呪いの魔道具なんてものはないだろうけど気をつけてほしいものである。


 他にもイェルガルという国の話を聞いた。

 南の諸国にある国ではないのだけれど色々な国の人が集まるので話も入ってきていた。


 実はジケはイェルガルという国に関わりがある。

 もちろん今も過去でも行ったこともない国なのだけど今回の人生はちょっと行かなきゃいけない用事ができてしまっていた。


 港湾都市のポージェナルに行った時に海岸の洞窟で悪魔教と一悶着あった。

 その時に見つけた難破船でゾーディック・イェルガルという人の白骨死体を見つけた。


 ゾーディックはイェルガルという国の王太子であったのだが船が座礁して洞窟に残されてしまった。

 そのまま洞窟を脱出することができずに死んでしまったのだ。


 さらにはゾーディックは王家の証を持っていてイェルガルにその証を返してほしいと言葉を残していた。

 ジケはとりあえずその思いを汲んで王家の証を持って帰ってきていた。


 当然返そうと考えていたのだけど大きな問題があったのだ。

 それはイェルガルが王位を争う内戦の最中であったということだった。


 王家の証がないためなのかイェルガルでは王位を争う兄弟間で戦争が起きていたということが調べてみて判明した。

 どっかの国の話みたいな気もするがイェルガルの戦争はかなり長いこと続いている。


 そんな時に王家の証ありますよなんてノコノコとイェルガルに行ってしまえばトラブルに巻き込まれること間違いなし。

 しばらく様子を見て、王位を継ぐことになった方に王家の証を返せばいいやと考えていた。


 どうやら戦況は傾きつつあるようで終わりの時も近いという話を聞いた。

 折を見てイェルガルに連絡を取る必要があるかもしれない。


「失礼します。ジケ会長はいらっしゃいますか?」


 シャルデーンにまとめてもらった南の国の情報を読んでいるとクレモンドが部屋を訪ねてきた。


「どうかしましたか?」


「モロデラ様がお尋ねになられています」


「モロデラさんが? 部屋に通してもらえますか?」


「分かりました」


 全ての手記を解読するにはまだ早い。

 何かあったのだろうか。


「ジケさぁ〜ん」


「うわっ! モロデラさん!?」


 部屋に入ってきたモロデラの顔を見てジケは驚いた。

 目の下が真っ黒になるほどのクマができている。


「聞いてください……」


「ダメです」


「えっ?」


「フィオス、えいっ」


「んぶぉっ!」


 ジケはテーブルの上にいたフィオスを拾い上げるとモロデラに投げつけた。

 フィオスがモロデラの体を包み込んでいくけれどモロデラの抵抗は少ない。


「プハッ!」


 フィオスから出てきたモロデラはほんの少しだけ綺麗になっていた。


「リアーネ、モロデラをベッドに寝かせて」


「おう」


「え、ええっ!?」


 リアーネがモロデラを肩に担いでベッドに運ぶ。


「な、何を……」


「いつから寝てないんですか?」


 顔を見れば分かる。

 モロデラはおそらく寝ずに手記の解読に当たっていたのだと。


 ジケがモロデラのところを訪れてから数日。

 多分寝ていないのだ。


 モロデラはジケに何かの話があったみたいだけど過度の寝不足の状態ではしっかりと話すことも難しい。


「寝なきゃダメです。健全な肉体と精神がなきゃ変なところでミスしちゃいますよ」


「ですが……早くぅ……話……た……」


 シャデルーンが経営している宿は超高級宿。

 マットレスにはアラクネノネドコを使っていて、お布団も高級品でふかふかである。


 眠くなくても眠くなる。

 そんなレベルのベッドなのに寝不足の人間が寝転がって抗えるはずもない。


 ベッドに寝かされたモロデラは瞬く間に眠気に襲われて、そのまま抵抗することもできずに眠りに落ちてしまった。


「よー、こんなんなるまでやってんなぁ」


 気絶するように寝てしまったモロデラを見てリアーネが呆れかえる。


「よほどパルンサンの手記が嬉しかったんだね」


「私にゃわかんねぇわ」


「リアーネだってシスターの日記、必死に読んでたよね?」


「な、それとこれとは違うだろ!」


「でも日記が山ほどあってもきっと読んだでしょ?」


「う……まあそれはそうかもしんないな」


 話は少し違うが知り得なかったものを知るための手がかりが目の前にあるのなら読んでしまうだろう。

 母親代わりのシスターの心の内、ずっと追い続けてきたご先祖様の軌跡。


 内容としては異なっているのだが知りたいものということは共通している。

 そんな風に考えてみるとモロデラが無茶をしたのも理解できなくはないのかもしれないとリアーネは思った。


「でも私は寝るぞ」


 夜更かしして日記なんか読んでいたらシスターの怒る声が聞こえてきそうな気がする。


「まあ……そこら辺はモロデラがちょっとやりすぎだね」

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