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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十二章

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俺の家族です1

 二つの用事は案外あっさりと終わった。

 けれどせっかくイバラツカまでやってきたのでもう少し留まって観光していく。


 正確には観光というよりも色々と食べるのがメイン。


「はははったね」


「ほーはね」


「ふっふ、2人ともちゃんと話せてないぞ?」


 今は辛いものを食べてきた帰りだった。

 辛いものが得意ではないタミとケリの2人でも食べられるぐらいの辛みと美味しさがある料理でついついパクパクと食べてしまった。


 美味しかったのだけど口はヒリヒリとしていて2人とも半分口を開けっぱなしにしたように話すので変な感じの話し方になっている。

 秘訣はなんですか? なんて無邪気に聞いて美味しい美味しいと言って食べるので秘伝のスパイスまでいただいた。


 相変わらずの愛されキャラである。


「少しいいかな?」


「はい? なんですか?」


 クレモンドにお薦めされたお店も一通り回った。

 流石のチョイスでどのお店も美味しく大満足だったのでそろそろ帰ろうかなんて考えていた。


 そんなジケたちにちょび髭の男性が声をかけてきた。


「そちらのお嬢さん方、平民の子かな?」


 そちらのお嬢さんと言って見ているのはタミとケリであった。


「だとしたらなんでしょうか?」


 貧民だけど、暮らしぶりからすればもう平民と変わりない。

 むしろ良いところの子供よりも良い生活している可能性すらある。


「私の養子にならないかい?」


 ちょび髭の男はにっこりと笑って予想外の提案を口にした。


「私はチホビアラという貴族です。たまたま道を歩いていたらお嬢さん方を見かけてね。非常に優れた容姿をしている」


 見かけない可愛らしい女の子がいる。

 普通は養子にしようなんて声をかけることはない。


 だがチホビアラはタミとケリの周りにいるジケたちを見てどうやら身分のある人の子ではなさそうだと判断をした。

 貴族の子供なら貴族の子供らしい護衛なりがいたりする。


 タミとケリは見た目がいいので我が家に、という貴族がこれまでいなかったわけではない。

 しかしタミとケリ自身がその話を断ってきた。


「不自由させることはない。教育も服も欲しい物も全て買ってあげよう。私と一緒に来るんだ」


「ちょっと待ってください」


 初対面なのに圧が強めにタミとケリに迫ってくる。

 2人は怯えたような顔をしてジケの後ろに隠れた。


 普通に断って普通に終わるならジケも口を出さないがタミとケリを怖がらせるなら話は違う。


「なんですかあなたは?」


「それはこちらのセリフです」


 ジケを見てちょび髭の男は不愉快そうな眉をひそめた。

 ちょび髭の男の護衛が割り込んできたようなジケを威嚇するように剣に手をかけた。


 こいつら中々ヤバそうだなとジケも不快感を覚える。


「この子たちの兄弟か? にしては似てない。だがこの子たちと一緒に来たいというのならお前も引き取ってやってもいいぞ。馬小屋の掃除ぐらいはさせてやる」


 失礼極まりない。

 この場にグルゼイがいなくてよかったとジケは思う。


 腕に鈍るなんて言って冒険者ギルドに行ったグルゼイは今ついて来ていない。

 もしいたらちょび髭の男は切り捨てられていたかもしれない。


 ジケも正直ちょび髭の男に不快感がすごい。

 いきなり現れて養子にしてやると言い放ち、ジケには馬小屋でも掃除していろと言うのだ。


「2人は養子になりたいか?」


「やだ」


「この人嫌い」


 その前から嫌だったけどジケのことを馬鹿にした態度にタミとケリも怒っている。


「チッ! なんなんだお前ら? この私が引き取ってやると言っているのに!」


 護衛が剣を抜く。

 まさかこんな往来のど真ん中でそんなマネをするなんてとジケも怒りの表情を浮かべた。


「そんな脅しをされてもこの子たちは渡しません」


 ユディットとリアーネも剣を抜いて構える。

 エニもジケに近寄りながら杖を構えて戦う用意をしている。


「金か? 何が欲しい?」


 この後に及んで浅ましい人間性を出してくるものである。

 どうしてそこまでタミとケリが欲しいのかは知らないけれど道で見かけた女の子にこんなに執着するのは普通のことじゃない。


「この子たちは俺の家族です。お金でなんか手放さない」


「ジケ兄……」


「ジケ兄ちゃん……」


 タミとケリは感動したようにジケのことを見ている。


「いいのか? 俺はここの領主と知り合いなんだぞ! 貴様みたいなガキどうとでもできるんだからな」


 周りの人も見て見ぬふりをするように通り過ぎていく。

 本当に権力者なのか、普段からこんな感じで面倒臭そうに力を振り回しているのか少し判断がつきにくい。


 ただし本当に領主と知り合いなのだとしたらラズグマンも付き合いを考えた方がいいなとは心配になる。


「やってみろ!」


 なんと言われようとタミとケリをちょび髭の男には渡さない。

 生意気な口を聞くジケに対してちょび髭の男は顔を真っ赤にする。


「このガキ! 少し分からせて……」


「少し前から話を聞いて考えていた。私にお前のような知り合いがいるかどうかを」


 突如としてちょび髭の男の肩が後ろから掴まれた。


「う……な……」


「だがいくら考えてもお前の顔を見たことがない……教えてくれるか? 私とお前は、どういった知り合いだ?」


 ちょび髭の男の肩を掴んでいたのは非常に冷たい目をしたデオクサイトであった。

 指がちょび髭の男の肩にめり込むほどに強く肩を掴んでいて、ちょび髭の男は痛みで顔を青くしている。

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