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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十二章

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ニャボルト4

 トラはまだホブニャボルトを追いかけていて戦いの最中の叫び声を聞きつけて乱入したのだ。


「うおっ、と!」


 トラがジケに飛びかかる。

 ホブニャボルトよりも力強くて速い。


 ちょっと引っかかれるだけでジケなんてズタズタになりそうな爪をかわして剣を構える。

 フィオスには再び盾になってもらう。


「ユディット、エニ、こいつ倒すぞ!」


 予定にはなかった相手であるがこのままトラを放っておくことはできない。

 このままにしておくとホブニャボルトを追いかけていって他の人とトラが遭遇して事故が起こってしまう可能性がある。


 ここでトラを倒しておかなきゃいけないとジケは思った。

 トラさえ倒せればニャボルトたちも逃げてしまったし問題も解決する。


「ジケ!」


「大丈夫だ!」


 トラは逃げたホブニャボルトを追いかけずに執拗にジケを狙う。

 ホブニャボルトを傷つけたからだろうか、トラにはジケのことしか見えていない。


 トラの力は強くて真正面から受けるのは危険。

 ジケはフィオス盾を巧みに使って力を受け流すようにトラの攻撃を防御する。


「こんにゃろ!」


 受け流しているがそれでも腕が痺れるような威力がある。

 いきなり乱入してきたことに対する若干の苛立ちも感じているジケの反撃をトラはひょいとかわす。


 魔物としてはトラの方がニャボルトよりも遥かに格上である。


「こいつ素早いですね!」


 ジケの反撃をかわしたトラを先回りしてユディットが切りつけたけれどそれもかわされてしまう。


「ジケ、行くよ!」


「分かった!」


 気づくとエニの周りに無数の火の玉が浮かび上がっている。

 ジケとユディットは同時にトラに攻撃を加えてあえて距離を取らせた。


「いっけー!」


 エニが杖を振り下ろすと火の玉が雨のようにトラに降り注ぐ。

 流石の魔力量だなとジケは感心している。


 多少増えた今でも火の玉を何個か出せばジケはあっという間に魔力不足で倒れてしまうことだろう。

 それなのにエニは大量の火の玉を降り注がせても平然としている。


 エニの魔法で片付くかなと思ったけれどそんなに甘くもない。

 トラは火の玉をすり抜けるように火の玉をかわしていく。


 ただエニだってなんの考えもなしに火の玉を降らせているのではない。

 トラは気づいていなかった。


 火の玉をかわしながら誘導されていることに。


「いいぞ、エニ!」


 まだいくつか火の玉が降り注ぐ中でトラはジケの目の前に来てしまっていた。

 トラは判断を迫られた。


 正面にはジケ。

 右側にはまだ多く火の玉が降ってきていて、左側にはユディットが回ってきている。


 下がるしかないと思った。

 もうすでに前に出かかっていた体を止めて後ろに飛び退こうとした。


「くらえ!」


 ジケがトラを逃すまいとさらに一歩踏み込んだ。

 しかし剣はトラに届かないぐらいの距離ができていた。


 そう、剣なら。


「さすがフィオス!」


「俺もだろ!」


 トラの視界が半分黒く染まり、鋭い痛みに叫び声を上げた。

 剣なら届かない距離だが剣よりも長い武器なら届く。


 トラは判断を迫られていてジケの手に盾がなかったことも見えていなかった。

 変幻自在のフィオスが取れる形は剣と盾だけではない。


 ジケがあまり使わないからならないだけで斧やメイス、杖のような形にもなれるし、あるいは槍のような交戦距離の長い武器にもなれる。

 ジケの求めに応じて槍の形を成したフィオス。


 さらにはいつものランスモードなら取り回しがしやすいようにやや短めの槍になるように練習していたが、今は長めの槍になっていた。

 剣ならば届かないけど槍なら届く距離。


 トラはもっと必死に下がるべきだった。

 だが剣しか持っていないジケの攻撃の届く距離を把握して余力を残して下がったためにフィオス槍が目に突き刺さったのだ。


「フィオス、やってやれ!」


 残酷な追撃。

 突き刺さったフィオス槍の先端がさらに形を変えてトラの内部に突き刺さる。


 頭を振ってフィオス槍を引き抜こうとするが、目の中で突き刺さっているために抜けない。


「はあっ!」


 ユディットがトラの横から接近して後ろ足を切り裂いた。

 体を支えられなくなってトラが横倒しになる。


「……悪いな」


 好きなメスを守りにきたのかもしれない。

 しかしその追いかけ回すという行為のせいでジケたちも村の人も、そしてホブニャボルトすらも危険に晒した。


「好きならちゃんと相手のことも考えろよ」


 ジケは倒れたトラの首を刎ねた。


「はぁ……疲れた」


 フィオスがスライムに戻ってジケの胸に飛び込んでくる。


「ジケ!」


「おう、いい連携……」


「怪我してるじゃない」


「あっ……ちょっとかすってたみたいだな」


 ジケの腕に切り傷ができていた。

 いつ怪我したのかも分からない。


 下手するとトラからやられたのでもない可能性もある。


「今治すから」


「こんぐらい……ありがと」


 別に痛みもないので大丈夫だと言おうとしたけどエニはジケの腕に手を添える。

 相手を攻撃する赤い炎の魔力と違って淡く温かな光がジケの腕を包み込む。


 本当にかすり傷程度の軽いものだったので瞬く間に治ってしまった。


「これで大丈夫」


 エニはニコッと笑う。

 怪我しちゃったこと怒られるかもと思ったけどわざとでもないし怒ることはなかった。


「すごい魔法だったな」


「ジケこそ頭良いじゃん」


 ジケが褒めるとほんのりと頬を染めてエニは笑顔を浮かべた。


「あれ、そういえば師匠は?」


 また何か足りないところを指摘されるかなと視線を向けるとそこにはリアーネしかいなかった。


「向こうだよ」


「向こう? あー」


 リアーネがアゴで示した方を向くとグルゼイがジケたちの方に向かってきていた。

 手にはホブニャボルトの首が持たれていた。


「上手く倒したようだな。よくやった」


 ホブニャボルトたちが逃げ出した時グルゼイは素早くホブニャボルトを追いかけた。

 人に攻撃された魔物はより人を警戒してしまう。


 出来るなら逃さずその場で倒してしまうことがいいのである。

 だからグルゼイはジケたちがトラと戦っている間にニャボルトたちを全滅させていた。


「帰ろう。タミとケリが心配していることだろう」


 特別苦労していた相手ではなかった。

 しかし3人で戦っていたホブニャボルトたちをグルゼイは1人で片付けてしまった。


「さすが師匠は強い……」


 まだまだ越えねばならない壁は高くそびえ立っているのだなとジケは笑う。

 自分もあそこまで強くなれるのかもしれないと思うと同時にドキドキもするのであった。

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