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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十二章

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困ってるなら助けよう2

 村には宿がなかったけれど空き家があるということでそこに泊まらせてもらうことになった。


「ありがとうございます」


「いやいや、こちらこそあまりものを高く買ってもらって助かるよ。……こんな時だからね」


 まだ旅は続く。

 次の村まで距離もあるので食料品の余りがあれば買い取りたいと村人に申し出た。


 いくらかの食料品を少し高めの値段で買わせてもらう。

 正確には余りではなく村の備蓄の一部なのだろうがどうせ何事もなければ期限ギリギリで消費してしまうしかなくなる。


 村人しては高く売れるし、ジケたちは食料品が手に入る。

 互いに得のある取引なのである。


 こうしたところに出し渋りしないというのも後々人のためになるのだ。

 食料品が買えたので余裕を持って旅できるなと思いながら宿にしている家に戻る。


「お兄ちゃん、冒険者?」


「ん? 俺か?」


「うん」


「まあ、一応冒険者かな」


 家に帰る途中で村の男の子に声をかけられた。

 冒険者として活躍しているかは怪しいところであるが冒険者としての身分はあるし、多少活動していることもある。

 

 冒険者と名乗っても間違いではない。


「何か用事もあるのか?」


「お願いします! 魔物を倒してください!」


 持っていた荷物を一緒に来ていたリアーネに預けてジケは男の子に向き直る。

 モジモジとしていた男の子はジケの前に手を出して頭を下げた。


「お金……それに石?」


 男の子の手に握られていたものを見てリアーネは首を傾げた。

 わずかなお金といくつかの石。


 それに男の子が放った言葉も何事だろうと疑問に思う。


「お願いします!」


「……とりあえず話を聞かせてくれないか?」


 リアーネと一度顔を見合わせたジケは話ぐらいは聞いてみようと思った。

 荷物を持ったままでは落ち着かないのでまずは男の子も伴って家に帰る。


「魔物の群れがいるんだ」


 この村は近くに現れる動物の狩猟や薬草などの採取を行なって生計を立てている。

 これまで平和に暮らしてきた村であるのだが最近になって近くに魔物の群れが現れた。


「この間は……お父さんが襲われちゃって……」


 そのうちどこかに行くかもしれない。

 村人は魔物と鉢合わないように気をつけながらごまかしごまかし生活を続けていた。


 しかしとうとう怪我人が出てしまった。

 それが男の子の父親であった。


 薬草を採取して乾燥させ近くの町などに卸している仕事をしていて、薬草の採取中に魔物に見つかって追い回された。

 何とか逃げることができたものの足に怪我を負って今は家で休んでいるのだとか。


 当然村人としてはもう見逃すことのできない問題となった。

 ただ村人に魔物を倒す力はなかった。


 そこで冒険者に依頼を出すことになったのだが、それにも問題があった。

 わざわざこんな片田舎まで来てくれる冒険者が少ないということである。


 すでに人を送って冒険者ギルドに依頼は張り出してあるのだけどいまだに受けてくれる人は現れていなかった。

 だんだんと村の事情も苦しくなってきた。


「みんな困ってるし……お父さんも落ち込んじゃって……」


 極限まで追い詰められているとは言い難い。

 しかし魔物がこのまま居座り、誰も依頼を引き受けてくれないのなら村を捨てるという選択肢も余裕があるうちに検討しなければならないのだ。


 だから村人は食料品の備蓄を出すことも厭わなかった。

 少しでもお金が欲しい状況だったのである。


「お兄ちゃんたち強そうだし……他に村に来るような人いないし……」


 魔物が出たから村を捨てるということは時々あることだ。

 住み慣れた村を捨てることは住んでいるものにとって大きな選択であるが魔物に殺されるより遥かにマシである。


 モンスターパニックなどの影響から小さな村では余力が少ないことが多い今では早めに他の村に合流してしまうことも合理的な考え方なのである。

 でもまだ子供な男の子としてはそんなこと受け入れがたい。


 あるいは男の子の父親が自分が襲われたせいでそうした話が出てきてしまったことに責任を感じていれば余計にどうにかしたいと思うのだろう。

 だから勇気を出してジケに声をかけたのだ。


 ジケも腰に剣を差している。

 一流の冒険者には見えなくても戦う人なのだろうと男の子は思った。


 冒険者なら依頼を受けてくれるかもしれない。

 少ないお小遣いと宝物の石を持ってきた。


「どうか……魔物を倒してくれませんか?」


 それが男の子に出せる最大限の依頼料であったのだ。


「話は分かったよ」


「じゃあ……!」


「待って。すぐに引き受けるとは言えないよ」


「う……」


「でも仲間と話してみるからさ。期待はしないでくれよ?」


 男の子には何となくだけど分かった。

 優しく笑うジケの顔を見て、引き受けてくれるのだと、そう思った。


 ジケは男の子を帰らせて、同じく話を聞いていたみんなの方を振り返った。


「好きにしろ」


「そりゃジケがやるなら私もやるさ」


「会長のご命令とあらば」


「お人好しなんだから……」


「やっちゃえ!」


「助けてあげて!」


「私は……戦えないので」


 ここで見捨てていこうなんてことを言う仲間はいない。

 まあ困ってるなら助けよう。


 それがジケと、そんなジケの周りに集まった人々なのである。

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