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謀反4

 ブラックウルフと呼ばれた女傭兵。

 真っ先に敵に切り込み、いくつも首をとって帰る強者だった。


 ある時敵の勢いを削ごうと決闘を申し出た敵の大将とリアーネが戦い、相手の首を取ってみせた。

 それからリアーネの名前は敵を畏怖させる英雄のようになり、魔獣や相手の血がついて黒っぽく見えることからブラックウルフという異名で呼ばれた。


 しかし所詮は雇われの身。

 不利を悟った味方の軍に見捨てられ、リアーネを含めた傭兵部隊は囲まれて全滅してしまった。


 戦争の英雄の話が好きなやつが話していた。

 だから会ったこともないのに会ったような感じがしていたのだ。


 どのタイミングで参戦したのかは不明だがおそらく過去ではこのタイミングではまだ参戦してはいなかったのだろう。

 ルシウスが腕利きの冒険者を探した結果リアーネがいたということはその時点では過去でもフリーの冒険者であった。


 きっと過去においては内戦が本格化する後々に王弟側に雇われていたのだろうと思う。


 数奇なものだ。

 本来参加するはずでなかった王側にジは参加し、王弟側に付くはずだったリアーネも王側にいる。


 このまま逃げ切ることが出来たならきっとリアーネはこのまま王側の傭兵になるだろう。

 顔を覚えられてはいなくても1番最初の1番大事なところを邪魔しておいて敵側に寝返ることはまず考えられない。


 今回の内戦は早く終わるかもしれない。

 淡い期待がジの胸に広がる。


 王様を助けてルシウスも生きたまま生還できれば確実に未来は変わる。

 過去ではルシウスもパージヴェルもいなかったのだが今回生かすことが出来たなら戦争の風向きは全く異なってくる。


 その上戦争で名を挙げたリアーネも味方に付いているなら国内の暗い時間は短く済む。


「何見てんだ?」


「あっ、リアーネはいい女だなと思いまして」


「ばっ、何言ってんだ!」


 思い出した衝撃でジィッとリアーネを見つめてしまった。

 誤魔化そうと口を出た言葉もとんでもなかった。


 一瞬で顔が真っ赤になるリアーネ。


「お前……年上が好みだったのか?」


 歯の浮きそうなジのセリフに怪訝そうな顔をする。

 美形の女の子2人に甲斐甲斐しく世話をされていた記憶は新しく、最初に聞いていた話なら知り合いっぽかった方の女の子がジの好きな人だと思っていた。


 どちらかと言えばリアーネがジを気に入っていたものだと思っていたのに。

 もしかしてこいつ意外とタラシなのでは、とグルゼイは思い始めた。


 それにグルゼイの好みからするとリアーネの戦闘力は好ましくても容姿は好みではなかった。

 いい女と口に出して言うほどグルゼイには思えなかった。


「イチャついてないで行くぞ!」


「イチャついてなんかいねぇ!」


 ジたちも移動を開始する。

 キャスパン城は今頃状況把握に必死になっている。


 ーーーーー


「チッ……生きてたのか」


「ああ? なんの事だよ?」


 息付く暇もなく走り続けると王様一行に追いついた。

 城からだいぶ離れたところ、ようやく草原は途切れて森になっていた。


 相変わらず王の肩には矢が刺さったままだったので休憩がてら矢を抜いて治療をしていたところだった。

 そこには王の護衛部隊の生き残りと裏部隊の分かれた連中もいた。


 王を見つけた時点でジラムは自分の魔獣を通して連絡を入れていた。

 ジラムから連絡を受けた連中は戻ってきたところで王様一行に出会い、そのまま護衛する形で先に脱出していた。


 すっかり仲が悪くなったリアーネは口喧嘩をした男冒険者を見つけるとすぐさま舌打ちした。

 普通に忘れていた。


 他の冒険者はともかくあいつだけは生き埋めにでもなればよかったのにと思う。


「これからどうするつもりだ?」


 今逃げてきた方向は王城がある首都の方向ではない。

 誰が王弟側につくのか分からないのでさっさと安全なところに逃げるべきである。


「心配はない。


 逃げるためのルートは考えてある。


 このまま森をぬけて隣の領地に兵を待機させてあるんだ。

 キャスパンの領地の主とは仲が悪いから隣の領地に兵を集めていても裏切ることはないだろう」


「……傷は大丈夫なのか?」


「緊急用のポーションがあるからひとまず大丈夫だろう。


 矢に毒が塗っていなかったのが幸いだ」


「逃げ切れるか?」


「…………この先は渓谷になっていて大きな橋がかかっている。


 緊急事態だからジラムが先に兵を動かすように人をやったそうだからそこまで行ければ、というところだな」


 敵は全力を上げて追ってくる。

 今いるのは護衛と裏部隊合わせて30人にも満たない。


 王弟の襲撃によって多くの者が命を落としてしまったのだ。


 多くはない人数。追いつかれて囲まれれば突破することも難しい戦力。


 悲観的なことを考えても何にもならない。

 息を整えた一行は再び移動を開始する。


「弟子よ、良くやったな」


 走りながらグルゼイがジに話しかける。


「隠し通路での機転のことだ。


 しっかり戦えていたこともそうだがあんな風に相手に動揺を誘うことは思いつかなかった」


「ありがとうございます」


「……すまなかったな、こんなことになって。


 今からでもお前はここを離れても誰も怒りはしないだろう。

 俺は依頼を受けた以上最後まで残るつもりだがお前までそうすることはない」

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] サモナーの方と逆になってますね
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