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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第九章

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君と一つ

 回顧録、実験ノート、あるいは公開を多くつづった日記だったのかもしれない。

 遺跡は異常さを認められて、これ以上の危険がないかなどを調べるために騎士なども動員されて徹底的に調査された。


 そして最初に入った管理部屋のようなところの奥に隠し部屋があることを見つけた。

 狭い隠し部屋にはイスに座った骨と密閉された箱が置いてあった。


 その箱の中には何冊かのノートが入っていた。

 密閉された部屋、密閉された箱の中だったので保存状態がよくて内容を読み取ることができた。


 その内容は遺跡で行われていた悪魔のような実験について書かれていた。

 当時モンスターパニックなどの災害で遺跡を作った国は荒れていた。


 国民は苦しみ、じわじわと崩壊に向かっていた。

 どうしようもなくなった当時の王が考えたのが他国への侵略戦争だった。


 不満を他国に向け、略奪によって自分の国を保とうとした。

 しかし相手の国だってタダでやられるはずもなく、国力が弱っている中では戦争を長期間続ける余裕もない。


 そこで行われたのが魔獣融合実験と呼ばれるものだったのである。

 人と魔獣を無理矢理融合させて強い戦士とする実験であり、戦争を優位に進めるために非人道的な実験に手を出していたのである。


 魔獣融合実験の経過を記した本の他に実験の責任者の日記のような本もあった。

 最初の方から実験に懐疑的ではあったのだけど国のため、国民のためにと自分を押し殺すように実験に従事していた。


 けれど日記の最後の方には深い後悔ともう後戻りができない苦悩が書かれていた。

 最初は志願した大人の兵士で行っていたのだが魔獣との融合には子供の方が適していることが分かった。


 そのために戦争で苦しくなった国は優秀な魔獣を持つ子供を実験に動員した。

 デュラハンもソロイという少女の魔獣であったことが日記の中に触れられていた。


 しかし子供は兵士ほど精神的にも強くない。

 魔獣と融合が進むにつれて子供たちは理性を失い始めた。


 理性を失っても統制し、戦わせるために使われたのが呪いの魔道具であった。

 強制的に精神を支配して相手を従わせる魔道具で魔獣と融合した子供たちを戦いに動員した。


 だがそんな非道な実験許されるはずもない。

 他の国にそのことがバレてしまって戦争に介入された。


 元々理由も薄い侵略戦争だったので崩れると早かった。

 ソロイたちは戦争に投入されず他の国から隠すように遺跡に封じられた。


 日記を残した人物は上からの指示でほとんどの資料を燃やしたが罪悪感に負けて日記を含めたいくつかの資料を残したのであった。

 子供たちは遺跡に閉じ込められて死んでいった。


 しかしアンデッドであるデュラハンと融合したソロイは生き残ってしまっていたのである。


「……ひどい話だよな」


 ジたちがモンタールシュを出発して帰る直前にクオンシアラは分かったことを教えてくれた。

 決して気分のいい話ではないが一生疑問に思うのとどちらがいいのか迷うところである。


 ソコはそんなソロイと呪いを通じて繋がってしまった。


「でも悪いデュラハンじゃなかったんだ」


 ソロイと繋がったソコはソロイの気持ち、そしてソロイと融合したデュラハンの気持ちの一部を覚えていた。


「あのデュラハンはソロイを守ろうとした。そしてソロイと自分をこんな風にした人たちに怒りを抱えていたんだ……」


 呪いの魔道具を破壊して自由を取り戻し、ソロイを悲しませた人に復讐する。

 それがデュラハンのやろうとしていたことだったのである。


 デュラハンはあくまでもソロイを守ろうとしていたのだ。


「……悲しいな」


「でもソロイは感謝してたよ。ソロイだけじゃない……シュデルカも」


 帰りの馬車の中は少し重たい空気。

 ジに寄りかかるようにタとケは寝ているがジとソコは寝れるような気分ではなかった。


「でも……ほんの少しだけ」


 羨ましいかもしれない。

 そんなことを思う自分もいる。


 戦争とかそういうことではなく、気持ちがわかるほど魔獣と一つになったことがちょっとだけ羨ましいなと思った。

 フィオスが何を考えているのかはジでもなかなか分からない。


 もし仮にフィオスと一つになれたのならフィオスの考えていることが分かるのかな、なんて長い馬車での移動中に考えてしまった。

 決して人道的なことではないのだけど物言わぬ魔獣との意思疎通は難しいところがある。


 フィオスが過去の記憶を持っていそうなことは分かっている。

 けれどどこまで覚えているのかとか覚えているならどう見えていてどう思っているのかとか知ってみたいと思ってしまうのはどうしようもない。


「フィ……」


 悪いことを考えていたのがバレたのかもしれない。

 膝の上に乗っていたフィオスが急にジの顔に跳んでぶつかった。


「そうだよな……お前はお前か」


 どんな考えであれフィオスは側にいてくれた。

 少なくともジに対して否定的なことは思っていないはずだとなんとなく思える。


「いや、融合なんかしなくてもお前と俺は一つか……」


 ジはフィオスを撫でる。

 少し沈んだ気分だったけれどジに撫でられて幸せなフィオスの幸せな気分が胸に流れてくる。


「とりあえずソコも悪夢から解放されてよかったよ」

 

「うん、そうだね。色々ありがとう」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 初期では魔獣と連携や協力をして戦う描写もありましたが、ダンジョンでも今回の騒動でも魔獣達の出番は殆ど無く、契約魔獣の設定が殆ど空気になってしまっています。 フィオスがぽよんぽよんしてい…
[一言] >融合なんかしなくても そうは言っても時々融合してスライム人間になり 「フィオフィオのピストル」とか撃ってみたい気も
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