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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第九章

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モンタールシュの建国祭7

「ということでロノベの講演でございました!

 素晴らしい演劇でしたね!」


 白い衣装に身を包んだ男性がステージに出てきた。

 ステージで行われる出し物は1つではない。


 連続して色々とやるのだけど準備もある。

 男は司会のような役割で小話で場を繋いでいる間に後ろではステージの大道具をせっせと片づけている。


 ちょっとした出来事をいじって小さな笑いを取っているとステージの上からものがなくなった。

 ステージの袖から声をかけられて司会の男がそちらを見てうなずく。


「それでは次の準備ができたようです。

 テレンシア歌劇団でーす!」


「えっ!」


「まさか!」


「ミュコちゃん!?」


 知っていると思った。

 次は何だろうとワクワクしていたタとケも興奮がマックスになる。


 テレンシア歌劇団の一番手が出てくる。

 ひらりとした目を引く衣装をまとった美少女がゆっくりとステージの真ん中まで歩いてきた。


「ミュコちゃんだぁ……」


「きれー……」


 周りの邪魔にならないように声を抑えているタとケの目はキラキラしている。


「あっ……」


 正面を向いて深く頭を下げたミュコ。

 顔を上げた瞬間知っている顔を見つけて声が漏れた。


 1番前に座っているのだから簡単にミュコはジのことを見つけた。

 驚いたように目を見開いたがミュコだってプロである。


 すぐに気持ちを切り替えて表情をピタッと真面目なものにするとスッとポーズを取った。


「あなたが見てくれるなら……」


 普段だってもちろん真剣だ。

 しかしジが見てくれているのなら最も美しい姿を見てもらいたい。


 音楽が鳴り始めてミュコの舞が始まった。

 弛まぬ努力を続けているのだと見ただけで分かる。


 ジが招待して披露してもらった時には圧倒的な美しさでわかりにくかったものの少し荒はあった。

 習得したてでしょうがないのだけどまだまだ細かなところでは未熟な部分があった。


 今のミュコはさらに練習を重ねて指先の1つまで美しく全ての人の目を奪っていた。

 タとケも思わず口を開けてミュコに見入っている。


 ミュコの中にもジがどう思って見ているのか確認したい気持ちがある。

 しかしジの顔は見ない。


 最も美しい姿のためには顔や視線も全て意識しなければならない。

 ジならきっと見てくれている。


「素晴らしいな」


 踊り終えた後音楽が止み、誰もが呼吸すら忘れたように会場が静かになった。

 クオンシアラが拍手をし始めてようやくみんなハッと惜しみない拍手をミュコに送った。


 タとケ、ジも拍手をする。

 最後袖に引いていくミュコとまた目があった。


 南の国で公演がいくつかあるとは聞いていた。

 けれどこうした場所で会えるとは思ってもみなかった。


 国主催の建国祭のパーティーに呼ばれていたなんてやはり南の国では知る人ぞ知る歌劇団だったのだなと少し自慢げに思う。

 さらにはジのおかげでよりレベルアップしているものだから感謝までしてほしいほどだ。


 テレンシア歌劇団の演劇のレベルは高い。

 ミュコの印象が強いけれど他の人のものもかなり楽しめる。


 テレンシア歌劇団だけではない。

 南の国で活躍する劇団などが次々に登場してタとケも興奮しっぱなしであった。


 途中ニノサンに料理を持ってきてもらったりしながら1日ステージで行われる公演をジたちは楽しんだのであった。

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