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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第九章

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モンタールシュの建国祭1

 過去の人生の中で大きなパーティーに出たことがあっただろうかと考えた。

 思い出せる限りではない。


 当然パーティーを開くような知り合いはいなかったし戦勝の時でも戦闘に出ていなかったジにはパーティーに呼ばれる機会もなかった。

 だからパーティーに出たことはない。


「緊張なされていますか?」


「そりゃ……するよね」


 とうとうモンタールシュの建国祭の日を迎えた。

 この日ジはモンタールシュの王様に招待されたお客様として王城で開かれるパーティーに向かっていた。


 緊張するなという方が難しい。

 パーティーに呼ばれることだって過去にも経験のないことである。


 それなのに他国の王様の招待となれば多分もう一回人生をやり直したとしても出会えるイベントではない。

 いつもよりもかなりかっちりとした服装に身を包んだジは王城から派遣された馬車の中で硬い表情をしていた。


 今回は同行者も連れていける。

 沢山の客を招いてそれを受け入れることがパーティーの主人としての度量の証明にもなるという文化でタとケを始めとしてみんながパーティーに行けることになっている。


 少しズルいなとジは思う。

 目の前に座るニノサンも護衛としてパーティーに参加するのだけどちゃんとした格好をしている。


 顔がいいのでかなり衣装が映える。

 ジだって多少は垢抜けてきたと思うのだけどそれでもニノサンと並ぶと主人と護衛ではなくニノサンが主人でジが使用人として雇われている子供みたい。


 ニノサンは以前に騎士としてパーティーに出たこともある。

 顔が良いのでいるだけで見栄えもするなんて理由もあるがともかく経験もある。


 さらにジ以外のことに興味が薄くたとえ王様が主催のパーティーでも興味がなかった。

 だからあまり緊張もしていない。


「そう重たく考えられることなどありません」


「何か緊張しないコツとかあるのか?」


「そうですね……全員、オークだと思えばいいんですよ」


「オ……えっ?」


「オークです。

 くだらない豚の鳴き声だと思えば緊張もしなくなるでしょう?」


 思わずポカンとしてしまうジ。

 笑顔でサラリととんでもないことを言ってくれる。


 ニノサンの経験からのアドバイス。

 騎士で顔も良く、そのためにパーティーに出ろと言われていた。


 こうなるとニノサンの周りに集まってくるのはニノサンを狙う貴族女性たちだった。

 自分で好き好んで出たのでもなく命令で出ている。


 勝手に帰るわけにもいかなければ貴族女性たちを切り捨てるわけにもいかない。

 ニノサンはそんな貴族女性たちをオークだと思うことにした。


 エサに群がる卑しい魔物。

 自分の容姿を褒める言葉は豚の鳴き声。


 そうやってあたかも戦場にいるかのように思い込んで何とか精神的な平穏を保っていた。


「さ、参考にさせてもらうよ……」


「ブタが必死に鳴いていると思えば意外と愉快なものですよ」


 これから会う人たちのことをいきなりオークだと思い込むのは不可能だろうなとは思うけど爽やかに笑うニノサンを見てると冗談を口にしているとも思えない。

 そうした方法もあるのだなととりあえず納得しておくことにした。


 まあニノサンなりの苦労の結果だろう。

 なかなか他の人には聞かせられない会話であったがそのおかげで少し緊張はほぐれた。


 会話している間に王城に着いた。


「どうぞ、お姫様」


 馬車に乗っていたニノサンやソコ、ジが先に降りてジがスッと手を差し出す。


「えへへ……」


 馬車から手が伸びてきてジの手と重なる。

 嬉しそうに笑ってタが降りてくる。


 ドレスに身を包んで髪もちゃんとセットしてある。

 タがちゃんと降りたのを確認してまたジが手を差し出すと今度はケの番。


 タのものとは少しデザインの違うドレスに身を包んだケもお姫様扱いをされて笑顔で馬車を降りる。

 ドレスは事前にリンデランに相談の上、リンデランのお古をタとケ用に特別にリメイクしたものであった。


 着飾ったタとケは可愛さと美しさが共存しているようなドキリとしてしまう雰囲気をまとっている。

 そしてもう一台の馬車も止まる。


 一台じゃみんな乗りきれないのでこちらも二台体制だ。


「こ、こんな格好……似合わねぇよ……」


「そんなことないよ。

 似合ってるよ」


 リアーネも護衛としてジに同行するのだけどその格好はドレスだった。

 ふんわりとしたものよりも動きやすいスタイルのドレスにはなるけれど慣れない格好にリアーネは顔を赤くしている。


 パーティーだしドレスでしょ!

 って押し切ったのだけどリアーネも顔は美人な人である。


 親しみやすい性格や男くさく笑ったりするために分かりにくいところはあるけれどドレスが似合わないなんてことは決してないとジは思う。


「ジ様御一行でございますね。

 プーシュット・エルダーフィンと申します。


 本日ジ様の担当を務めさせていただきます。

 何かご用命ありましたら私の方に何なりとお申し付けください」


 みんな馬車から降りたところで褐色肌の壮年の執事がやってきてうやうやしく頭を下げた。


「パーティー会場の方にご案内させていただきます」


 プーシュットについて王城に入る。

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