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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第九章

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悪夢が近づく

 村の人たちには大いに感謝された。

 けれど多少長居もしたので変にもてはやされる前に村を出発した。


 その後は特に問題もなかった。

 魔物が出てきたりしたけれど全く問題なく倒していけた。


 護衛の騎士の人たちも強いしニノサンやリアーネも魔物を簡単に倒してくれた。

 山賊討伐の時にも思ったけれどかなり優秀な人たちを護衛として付けてくれていたのだなと思った。


 地図の上で線があっても実際の土地に線があるわけじゃない。

 気づけば国境を越えていた。


 ジも実は初めて国を出る。

 国境を越えたという事実にちょっとだけ感動していながらさらに南下する。


 南の国で活動していたイスコの案内で名物などを食べながら移動していく。


「美味しい!」


「また食べたい!」


「次は帰りにだな」


 あまり首都では見ないような果物をカットして串に刺したものを食べてタとケが目を輝かせている。

 甘くてみずみずしくて美味しい。


 タの口の端についた果物を拭いてやりながらジは笑う。


「ん!」


 それを見てケもピタッと頬に果物のカケラをつけてジの服を引っ張る。


「こら、そんなとこにつくわけないだろ?」


「えへへ」


 流石にわざとらしすぎる。

 でもそんなところも可愛らしい。


 ジが取ってやるとケも嬉しそうにヘラッと笑う。


「……大丈夫か、ソコ?」


 和気あいあいとした雰囲気の中ソコの表情はやや暗い。

 ジがそれに気づいてソコに声をかけた。


「ん、ああ……ごめん」


 ぼんやりとしていたソコがハッとしたように顔を上げた。


「いいさ、また悪夢見たんだもんな」


「うん……」


 つい昨夜、またソコは悪夢にうなされた。

 最近は安定していたのに久々であった。


「少し酷かったのか?」


 とりわけ昨夜の悪夢は酷かったように見えた。

 顔をしかめて苦しみ、最後には助けてと叫んでいた。


 決して暖かくはない夜なのにソコは汗でびしゃびしゃになっていてタとケも心配そうにしていたぐらいである。


「内容は思い出せないのになんだかいつもより鮮明だった気がするんだ」


 串に刺さった果物を眺めながらどんな夢だったかを思い出そうとする。

 いつもより鮮明だったような記憶はあるけれどどんな内容だったのか全く思い出せないのだ。


「だけど……女の子の声が聞こえた気がするんだ」


 光景は思い出せないけどうめき声をあげて助けを求める女の子の声がしていたような気がしている。

 胸が苦しくて、全身が自分のものではないような感覚があった。


「ソコ!」

 

「あっ、うん……」


「あんまり悪夢に囚われすぎるな」


 ジがソコの肩を掴んだ。

 段々と目がうつろになって少し怖かった。


「絶対その悪夢からも解放してやるから。

 気を強く持て」


「分かった。

 ……食べる?」


「いいの?」


「うん、食欲無くなっちゃったから」


 ソコは少し笑うとタとケに持っていた串を差し出した。

 美味しいのだけど気分的に美味しさを楽しめる状況じゃない。


「でも鮮明になってるってことは近づいてるってことかもしれないな」


「そうだね……ほんと、アニキには迷惑ばかりかけて……」


「いいって。

 いつか返してくれよ。


 気負わなくていいさ。

 それぐらいでいいんだよ」


「アニキィ……」


 ソコは悪くない。

 悪いのは盗掘団である。


 本当に厄介な問題を残していったものである。


「トクナ……か」


 ジはつぶやいた。

 ソコには自覚がないようであるがソコがうなされている時に口にするのは謝罪や助けを求めるような言葉であったのだがここに来て初めて人の名前のようなものも口にした。


 トクナ。

 本人が気づいていないので伝えるか悩んだ。


 けれど今は久々に悪夢を見て多少不安定になっている。

 だから黙っておくことにした。


「その子が関係あるのかな……」

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