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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第九章

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ニオイも取ってお綺麗に

 反省した。

 軽い気持ちでポイズンフィオスを井戸に混入させた。


 効果はあった。

 相手は戦闘不能状態になってみんなケガなく山賊討伐を終えることができた。


 けれど効果がありすぎたのは問題だ。

 地獄のような光景が山砦には広がっていた。


 酒盛りということが重なったことによって大きな効果が出たのもあるのだがまさかあそこまでのことになるとは想像できるはずがない。

 有用な方法ではある。


 しかし時と場合、もたらされる結果をもうちょっと考えてからでないと危険な手段であると思い知った。

 フィオスが強いのが悪いのかもしれない。


 山賊たちを制圧したジたちはニオイに耐えながらなんとか山賊たちを適当に縄で縛って拘束した。

 人質になっていた村の人々は一度ジたちと一緒に泊まっていた村まで来てもらった。


 魔物などの危険性があるので勝手に帰れとはさせられず個別に送ることも面倒なので出来なかった。

 だからまとめて一緒に来てもらったのである。


 倒した山賊たちは村の方で対処してもらうことにした。

 村の若い人で構成された警備などを行う自警団があるのでそちらにお任せする。


 そして帰ってきたジたちであるが大きな問題があった。

 ニオイ問題だ。


 時間にしてみればそんなに長いこと山砦にはいなかった。

 けれど激臭が体に付いてしまった。


 そこはかとなく臭い。

 ニオイが取れない。


 山賊を倒した英雄なのにみんなが避ける。

 タとケの双子ちゃんですら少し距離を置いていた。


 だから井戸を貸し切ってみんなで体を流す。

 風邪を引きそうになりながらも何回も体を流す。


「フィオスクリーニングゥ!」


 ある程度体を流した後に最後の必殺技を使う。

 ジがフィオスを上に投げるとフィオスがニュルルンと広がりながら落ちてきてジの体を包み込む。


 今日のフィオスはちょっと温かい。

 柔らかで心地よいフィオスに包まれ、数秒するとフィオスがジから離れてポヨンと丸くなる。


「なんですか、それ?」


「ニオイどう?」


「……あれ?

 ニオイませんね」


「えっへん!」


 人を糞まみれにするのも綺麗にするのもフィオスには自由自在。

 過去においてジは万年貧乏の貧民であったのに体調を崩したりする事は少なかった。


 それはフィオスのこんな能力のためである。

 ゴミを食べることもできるフィオスは体の汚れなど簡単には洗えないようなものでも綺麗に食べてくれる。


 それでいながら人体には影響もなく体を拭くことすら困難な貧民街の暮らしでもジはフィオスのおかげで体を綺麗に保って過ごすことができていた。

 スッキリするからなんて理由でやっていたけれどこれが健康につながっていたと知ったのはだいぶ年を取ってからのことだった。


 ゴミ処理というニオイもキツい仕事でも周りに疎まれるようなニオイが染み付かなかったのもフィオスのおかげであった。

 今更ながらフィオスの能力のありがたさに気がつく。


「ずずず、ずるいぞ!」


 男子と一緒に水浴びするわけにはいかない。

 先に体を洗い流したリアーネが寒さに震えながら羨ましそうにフィオスを見ている。


 そんな最終手段があるならこんな体の芯が冷えるまで水を浴びなかったのにと思う。

 あんなに水をかぶったのにまだ臭う気までするのだから恨み言も言いたくなる。


「しょうがないなぁ。

 フィオス、いいか?」


 別に意地悪したいわけじゃない。

 フィオスはジの魔獣であるしフィオスの意思だってある。


 無理にリアーネを綺麗にさせようとは考えていなかった。

 ジがフィオスに聞いてみるとフィオスはぴょんぴょんと跳ねてリアーネの足元に行った。


 どうやらやってもいいという意思表示のようだ。


「いいみたい」


「今すぐやってくれ!」


「ほいほい」


 ジはフィオスを拾って投げ上げる。


「息は止めててよ」


 フィオスは広がってリアーネを包み込む。

 慣れないのかちょっとパタパタとリアーネが動くが包まれたらもう逃れられない。


 すぐにフィオスがリアーネを解放して元に戻る。


「び、ビビったぁ……」


「大丈夫か?」


「なんてこともなさそうだったのに意外と慌てちゃうな」


 ヘロヘロとへたり込んだリアーネをジが心配する。

 慣れているジにとってフィオスに包まれることなどなんともないことであるがリアーネにとっては今まで経験したこともない新しい感覚であった。


 フィオスが害することはないと分かっているのに抗いようのないものに飲み込まれた恐怖というものが頭の中に浮かんで一瞬パニックになりかけた。


「ただ……すごいな」


 けれどその分効果はあった。

 体がスッキリとして綺麗になった感覚がある。


 またしっとりとして濡れていた髪の水分までしっかりと吸い取って乾いていて残っていたニオイもなくなった。


「フィオス、ありがとな」


 リアーネがお礼を言うとフィオスは跳ねて返事をする。


「……弟子よ、師匠は敬うべきだと思わないか?」


「あ、はい……そうですね」


 ガッとグルゼイに肩を掴まれる。

 あんなもの見せられてそうですかと終わらせるはずがない。


 なんだかんだでジのわがままに付き合ってもらった。

 フィオスも特に拒否することもなくみんなのことをピカピカにしてくれたのであった。

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