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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第九章

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タダ飯は美味い1

 詳細な鑑定は後にしようと思ったのだけどイスコが興奮してしまった。

 ならば好きなだけ見てくれればいいとジはイスコを置いて倉庫を出た。


「お久しぶりです」


「あれ、えーと……」


「シードンです」


 倉庫を出るとオニケッタの他にもう男性が待ち受けていた。

 品の良い貴族男性でどこか顔に見覚えがあった。


 この国の宰相も務めているシードンであった。

 よく見るとジを誘拐してくれた抜けた騎士たちもシードンの護衛として一緒にいた。


「お久しぶりです。

 どうなされたんですか?」


 まさかこのタイミングでシードンに会ったことを偶然だと片付けることもジに挨拶に来ただなんて考えることもしない。

 目的があるのだと誰でもわかる。


「もう昼時です。

 お昼でも一緒にいかがですか?」


「お昼ですか?」


「この近くに行きつけのレストランがあります」


 ジは自分の護衛として付いてきているユディットと顔を見合わせた。

 どうやら落ち着いて話をしたいということなのだろうと理解した。


 宰相なら良いものを食べているし、それに人のお金で食べるものは美味いのでお誘いに乗ることにしてジはうなずいた。

 断って誘拐されるのもこりごりである。


 シードンに連れられてやってきたのは貴族街にあるレストラン。

 普段のジなら絶対に来ないところだ。


 それどころか今の格好なら追い出されてもおかしくない。

 安っぽい格好はしていないが貴族のような整った綺麗な格好でもない。


 けれどさすがは行きつけなだけあってシードンがいれば何も言われることはなかった。

 普通に他のお客もいるホールに通されるのではなく、さらに奥にある個室に通された。


「ここのおすすめ肉料理です。

 苦手なものなどはございますか?」


「いえ特に」


「なら私の方でおすすめを注文しましょう」


「あの……わ、私も座って良いんですか?」


 席に着いているのはジとシードン、それに加えてユディットもだった。

 シードンの後ろには騎士のミラーがいて、残りの2人は部屋の外で待機している。


「もちろんです」


「向こうがいいって言ってるんだ。

 たまには良いもの一緒に食べよう」


 困り顔のユディットにジはウインクしてみせる。

 是非にとユディットも席につかされたのだけど本当にいいものかと困惑し通しである。


「それで、何のご用ですかね?」


「そうですね。

 料理が来るまで時間もあるので話しましょうか。


 今回私が来たのは他でもありません……」


 シードンの真面目な顔にジもグッと背筋を伸ばして真剣な態度を取る。


「ジさん……また新しいことをしようとしていますね?」


「新しいこと……ですか?」


 まあしようとはしている。

 ただいくつか試みてることはあるのでそれが何なのか分からない。


 それに宰相に目をつけられるようなことがあっただろうかと頭の中で考える。


「なんでも断熱効果のある加工を部屋にも施工することができるとか」


「あっ……」


 一瞬で理解した。


「是非ともその加工をお願いしたく」


 宰相に呼び出されたからなんだと思ったけれど今ジの目にはシードンの後ろにはうっすらと王様の顔が見えるような気がしていた。

 ジはヘギウスやゼレンティガムには案内を出した。


 寒い季節もあったかく過ごしませんかと銘打って馬車にもやって体験してもらったパロモリ液の効果を部屋にも適応できると宣伝した。

 返事はすぐさま来た。


 競い合うぐらいの早さだった。

 ただジは王様には特に宣伝はしなかった。


 一介の商人が王族に宣伝のお手紙など出せはしないからである。

 しかも最近多少の余裕が出てきたとはいってもパロモリ液の生産には限界がある。


 そのためにパロモリ液の加工の件について馬車に施す以外のことはまだほとんど表に出していない。

 どこでこのことを知ったのかは知らないが王様はフィオス商会の動きをかなり注視していることは確かであった。


「これは何も私欲のためだけではありません」


「どういうことですか?」


「そうした技術で温かく過ごしたいという思いがあることは否定しませんが対外的なポーズにもなるのです」


 何の話か分からないとジは肩をすくめる。


「……今回の寒さは厳しそうです。

 国の事情を写したかのように気温は下がり、これを乗り越えられない人がどれほど出てしまうか分かりません。


 ですが全てを救うことは不可能です。

 無理をすれば国ごと危機にも陥ってしまう。


 できる限りはしますが手の届かないところというものは出てきてしまいます」


「……そうですね」


 ジもそれは理解している。

 無限の財産でもない限り全ての臣民を救うことなどできない。


 いかに国と言っても出来ることには限界もあるのだ。

 それでも今の王様が出来る限りのことをしようとしてくれていることは理解している。


 過去では隣にいた人が寒さの中で死んでいったがそれは自分の力不足であっただけなのだ。


「特に今回は以前にあったモンスターパニックの影響で火を焚く燃料についても厳しい状況にあります。

 王城は広い。


 どうしても必要な燃料は多くなります。

 そこでジさんが新しく行っている断熱加工が必要なのです。


 全てを加工しろとは言いません。

 いくつかの重要なところに加工をしてもらい、燃料の消費を抑えたいと思っています。


 少しでも我々が使う分を抑え、国民に対して同じく努力をしていることもしっかり見せねばならないのです」


「なるほど」


 国として国民に手を差し伸べていながら自分たちはガンガン火を焚いている。

 そんなことでは国民の不満も高まってしまう。

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