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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第九章

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お宝鑑定2

「やりたいこと見つかったらいつでも辞めてもいいしね」


 広い心の持ち主だとイスコは感動すら覚える。

 頼み込んで雇ってもらった。


 離れることは許さず死ぬ気で働けと言われるのが普通な世の中で楽しく働き、目標が出来たらそのためには辞めてもいいと言う。


「ソコの恩を返すまでは辞めるつもりはありません」


 ただ情けない。

 今はまだ何者でもなくて、堂々とフィオス商会のためにとは口にできなくてソコのためと言ってしまった。


 違うのに。

 自分が、イスコとしてフィオス商会のために何かをしたいと言いたいのに。


「ありがとう」


 ほんの少しだけ時間をください。

 長いこと沈み込んで固まったくだらないプライドを捨て去るにはまだイスコは自分を確立できていない。


 温かい人たちがいて迎え入れてくれる環境がある。

 ソコにも胸を張っていられるような人でありたい。


 他の誰でもなく必要とされるイスコになる。

 まだ遅すぎることはないのだと密かにイスコは決意した。


「こちらになります」


 オニケッタが視線を送ると番をしている兵士が倉庫の鍵を開ける。

 倉庫の中はいくつかの部屋になっていてそのうちの一つに盗掘団から押収したものが置いてあった。


 思っていたよりも色々ある。

 実際見てみると小さいものがほとんどであまり場所は取らなそうである。


 宝石などの宝飾品が多い。

 やはり価値も分かりやすくソコが手に取りやすかったこともあるのだろう。


 銀食器や小さい絵画なんてものもある。

 お皿とか訳の分からない置物というものもあるがジには一切価値がわからない。


 やたらと派手なキャンドルスタンドは高そうなのかなと思うぐらいである。


「あ、あれは……」


「どうかした?」


 部屋の美術品を見ていたイスコが驚いた顔をしている。

 その視線の先には小さい不思議な石の工芸品のようなものがあった。


 奇妙な形をしていて表面には模様が彫ってある。

 なかなかに綺麗だけど驚くほど高い品なのだろうかとジは首を傾げた。


「これがどうかしたの?」


「これは鍵です」


「かぎ?

 あ……そういえば」


 イスコやソコが誘拐されて盗みを働かされる原因は古代遺跡から見つかった鍵であった。

 盗掘団が最初は価値が分からなくて売り払ったものだったがのちに必要だと分かって取り戻そうとしたことがそもそもの事件の原因であった。


「ちょ……ちょっと待ってください。

 1……2……3…………6」


 よくみると似たような石の工芸品がいくつかあった。

 その数は6つ。


「そんなまさか」


 以前イスコは鍵となる石を5つ集め、そのためには盗掘団に目をつけられた。

 5つの石には見覚えがある。


 しかし6つのうちの1つにはイスコにも見覚えがなかった。


「全部盗み出していたのですね」


 5つはイスコが集めたものだった。

 1つはイスコの手元にあったものを引き渡していた。


 他に4つは売られて色々な人の手に渡っていたはずなのだけど盗掘団はソコにそれを盗み出させていたのである。

 てっきり全部ではないと思ったが必要な盗みは終えていたのであった。


 だからこそソコを縛り付けるために呪いをかけたという側面もあった。


「だとしたらもう1つは?」


「おそらく盗掘団が元々持っていたものかもしれませんね」


「それにしても全部あるだなんて」


「……まあ多少薄ら暗いような方もいましたから」


 石の中のいくつかは結局名乗り出なかったものである。

 売った先は分かっているのでオニケッタも承知の上で待っていたのだけど向こうが手を上げなかった。


 ただ全てがそうした事情によるものではなかった。

 調子に乗る前、最初の泥棒は本当に石だけを探して盗み出していた。


 なので被害に気がついていないものもあったのだけどジたちがそれを知る由もない。


「うーん……まあとりあえずこれらは取っておくか」


 鍵とは聞いたけれどなんの鍵かまでは分からない。

 けれど問題の原因にもなったものであるので売り払ったりしないでまとめて保管しておくつもりである。


「置いといて、他のものはどう?」


 今のところ鍵を使って何かする用事もない。

 他の美術品についてが目下の問題であるのでそれについてイスコの鑑定眼にお願いする。


「思いの外良い品物もありますよ。

 特別な管理が必要なものはなさそうですね」


「それならよかった」


「こちらの絵なんて」


 グラスを使って拡大して絵を細かにチェックし出す。


「本物ですね」


「本物?」


「ニッチュ・マキュベルの書いた油絵だと思います。

 サインも本物に見えますしこの繊細なタッチは……」


 誰だ、ニッチュなんとかは。

 繊細なタッチなんか知らないし。


 みたいなことを思いながらジさ遠い目をしていたが興奮し出したイスコの美術品の説明は止まらなかった。

 イスコには悪いがジはとことん美術品ってやつに興味が持てないようであった。

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