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遠征4

「表立って護衛を連れて歩くことが出来なくなった。


 冒険者に護衛を依頼することは王の本意ではなく私個人が勝手にやることだがそれで少しでも安全が高まるならと思う」


 目的は理解できないことじゃない。


 なのにどうしてこっちに繋がってきた。


 貴族のお偉いさんが国王を秘密裏に護衛するのに貧民街にいる冒険者に繋がるなんてどう考えてもおかしいだろ。


「子供には難しい話だったかな?」


 顔色の悪いジにルシウスが気づく。

 別に話が難しいから顔色が悪いわけではない。


 関わってしまったから最後まで関われということなのだろうか。

 運命のいたずらに顔色が悪くなっているのだ。


「小難しい話はこれぐらいにして、娘を紹介しましょう。」


 使用人を呼んでウルシュナを呼びに行かせる。


「我が娘ながらおてんばで……変に腕が立って正義感が強いものですから友達も少なくて。


 誰に似たんでしょうか」


 見た目の大きな特徴だけを取り上げればウルシュナはルシウスとあまり似てなく見える。

 ルシウスは金髪碧眼の昔ながらの貴族の容姿をしているのに対しウルシュナは黒髪黒目とそれだけではかなり容姿が違っているように思える。


 しかしウルシュナの目の縁は僅かに緑かがっていて、黒が強いだけでルシウスの特徴も若干受け継いでいる。

 それに顔を見るとパーツはルシウスに似ている。


 両親の良いところを受け継いだのだろう、ウルシュナの顔は美形のルシウスよりも上の顔ではある。


「お父様、お呼びでしょうか」


 並ぶと違うのに似ているという不思議な親子であった。


「ああ、ウルシュナ、こちらが私のお客様のグルゼイさんとジ君だ。


 私の娘のウルシュナだ。

 どうかよろしく頼むよ」


「はじめまして、お嬢様」


 知り合いだと説明するのも面倒になったジは初対面を装うことにした。


 うやうやしく礼をするジにウルシュナが怪訝そうな顔をする。


「は、はじめまして……」


「ウルシュナ、私はもうちょっと話があるからジ君と少し遊んできなさい」


「分かりました。行くよ」


「はい」


 ウルシュナについて応接室を出る。


 とりあえずウルシュナの部屋に通された。

 ゴテゴテと物が置いていない部屋はウルシュナっぽいが何体かぬいぐるみが置いてあるのは少し意外だった。


「何かお菓子でも持って来てもらえる?」


「分かりました」


「……で?」


「で、とは? ウルシュナお嬢様」


「やめなさいよ、そのぞわぞわする話し方」


 使用人を追い出してウルシュナがジに詰め寄る。


「なんでここにあんたがいるのよ」


「俺も知りたいよ……」


 盛大にため息をつく。

 家でのんびりしてる方がよっぽど良かった。


「お父さんと知り合いってあんた何者なのよ?」


「俺が知り合いなんじゃなく、俺の師匠が知り合いみたいだ」


「ふーん、じゃあ師匠が何者なの?」


「さあな。


 どこであんな人と出会ったのか想像もつかないよ」


 知り合ったのは最近ではなさそうなのでジが関わったことによって知り合ったのではない。


 ルシウスの方から敬意を払っている感じがした。

 会話で仲良くなったことは考えにくいので何かで手合わせしたことがあるのだとジは予想している。


 最初から弟子入りをお願いしに行った時も怪しい浮浪者風だったから何かの勘違いで戦うことになった。

 そして仲良くなったなら納得もいく。


 ルシウスは尊大な態度も取らないし実力は相当なので貴族なことを除けばグルゼイが気にいる要素はある。


「失礼します」


「ありがとう、メリー」


 黒髪のメイドさん。顔は違うけどまとっている雰囲気が似ている。

 髪色や瞳がいきなり色が変わるわけもないので母親の方の血だと思っていた。


 このメイドさんはおそらく母親の関係のメイド。


「ん? ああ、この国じゃ珍しいよね、黒髪と黒い瞳。


 これはニジャっていう国では一般的で私のお母さんの国なんだ」


「ニジャか、初めて聞くな」


「ここからだと遠いからね、知らなくても無理はないよ」


 やっぱりウルシュナのお母さんは他国の出身の人だった。

 ニジャという遠方にある国から来た女性がウルシュナの母親である。


 今は祖国でお祭りがあるので単身帰郷しているらしく付いて行きたかったとウルシュナは文句を垂れていた。


 ずいぶんとフットワークの軽い母親だ。

 性格もルシウスの話し振りからも分かるように母親似なのだろう。


「そういえばルシウス様が手合わせでもしてみればどうかとおっしゃっておりましたよ。


 お体でも動かされてはいかがですか?」


 先日の事件のせいで外出禁止になったと父親の文句を言うウルシュナの話を聞いていると会話の切れ目を狙ってメリーが提案する。


「良い提案ね。


 そうしましょう」


「えっ、俺の意思は?」


「ないわ」


 確かにお茶とお菓子にも飽きてきた。

 共通の話題もリンデランぐらいで他にはないので会話することもない。


 強引にウルシュナに連れて行かれて修練場に行く。

 そこでは家が抱えている兵士たちが鍛錬をしていた。


「ウルシュナお嬢様だ」


「おっ、また来たのかい。


 ……横の子は誰だい、ですか?」


 いつもはもっと砕けた関係なのだろう兵士たちがウルシュナを出迎える。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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