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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第八章

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さてさて佳境3

「俺が開けます」


 扉が罠ということもある。

 ここまでダンジョンに関して罠はなくきているがだからといって油断はできない。


 扉を開ける係にユディットが立候補する。


「じゃあ任せるよ」


 戦いで良いところを見せられた。

 さらにここで危険を引き受けることで忠誠心も示すことができる。


 とことんジ中心な考えだけどやってくれるというのなら誰も文句はない。


「いきますよ……」


「ばーか!」


「グェッ!

 何するんですか!」


「ったく何すんのかと思えば馬鹿正直に開けようとしやがって……」


「なんでですか!」


 扉の前に立って手を伸ばしたユディットをリアーネが引っ張り戻す。

 深いため息をついたリアーネはやれやれと首を振る。


 ユディットはどうしてそんなことをされたのか分からないでいる。


「見てみろ」


「……何をですか?」


「扉だよ」


「………………扉の何を見るんですか?」


 なんの変哲もない扉。

 ユディットのみならずジやリンデランたちも分からずに扉を見つめるがなんでリアーネが止めたのか理由が分かっていない。


「見てみろ、この扉には取っ手がない」


「そうですね」


「そうすると押して開けるのが当然だ」


「だからそうしようとしていました」


 もちろんユディットもそうして押し開けようとしていた。


「はぁ……だからダメなんだ」


「だからなんでなんですかぁ?」


「ひとまず押し開けるしかないのならわざわざ手を伸ばす必要もないってことだよ」


 そう言ってリアーネは剣を抜いた。

 そして扉から少し離れて剣の先で扉を押し開けた。


「危険を減らす。

 ダンジョンではこうしたことも大事だ」


「な……なるほど」


 ハッとさせられた。

 なんとも単純なことである。


 扉の構造上取っ手がないので押して開けるしかない。

 押して開けるという時に人は誰しも手で押して開けることを想像する。


 けれど押してみるだけなら何も手で行う必要はないのである。

 リスクを減らすなら手で押すより離れて棒なり剣なりで押した方が安全なのである。


 シンプルが故に忘れがちな対策だった。


「さすがリアーネだな」


「へん、これぐらいあったりまえよー!」


 経験が浅いと簡単なことでもなかなか気づけないものである。

 ジに褒められて今度はリアーネが胸を張る。


「まあなんとも平和ですねぇ……」


 ヘレンゼールもそうして直接手で触れずに開けることは思いついていた。

 ダンジョン経験はないが危険な罠がある可能性は考えていたので蹴り開けるなどサッと移動できたり、棒を使って距離を取るなどの手段がある。


 とりあえず扉はなんの罠もなくリアーネの剣によって押し開けることができた。


「じゃ、じゃあ入るのは俺がやります!」


 扉そのものには罠はなさそうだが扉を通った先に罠がないとも限らない。

 リアーネに良いところを持っていかれてしまったユディットが先頭に立って扉の中に入る。


「まあ予想はしていたけれど何もないな」


 ここまで一貫して罠もなかったので無いだろうとは思っていた。

 扉の先は大きな部屋になっていた。


「そして敵も予想どおりだな」


 部屋の真ん中には魔物がいた。

 大きな木のようなトレントと呼ばれる魔物である。


 一つ前の部屋でツリーナイトを相手にした。

 このツリーナイトは魔物によって生み出される魔物なのであるが生み出す魔物というのがこの部屋の真ん中に鎮座するトレントなのであった。


 機動力の低いトレントが自分を守る存在として生み出すのがツリーナイトである。

 そのためにツリーナイトが出た時点で次にトレントが出るのではないかと予想していた。


 トレントにも根っこを足のように操って動くものもいれば完全に根を張って動かないものもいる。

 どちらが厄介ともいえないがここにいるトレントは根を張っているタイプのものであった。


「むむむ……」


 リンデランがトレントを見て渋い顔をする。

 ジも少し眉をひそめている。


 思い出される苦い記憶。

 本来ならリンデランがそこで亡くなっていた誘拐事件のことが思い出された。


 元より植物系魔物が多かったのだけどトレントを見て完全にその事件の時の痛い思い出がよみがえる。

 リンデランは直接見てはいないがあの時の犯人の魔獣がモルファというトレントだったことは聞いていた。


 根っこで大きく殴り飛ばされた痛みは忘れない。

 ジも今ならあの奇妙な男に立って負けないと思うが当時はまだ回帰したてで弱かった。


 散々痛めつけられて死ぬ寸前で、エにもひどく怒られたとても苦い思い出だった。

 だけどあの時はもう違う。


「どうやらあれがボスみたいだな」


 トレントの後ろを覗き込んでも扉などはない。

 大きな木のダンジョンの大きな木のボス。


「みんな、準備はいいな?」


 ここまで来ればあとは総力戦。

 ジの言葉にみんながうなずく。


「行くぞ!

 ユディットとリアーネで左右に広がれ。


 ウルシュナはエとリンデランを守ってくれ!」


「むぅ……分かった」


 少し不満そうだけどここで反論もしていられない。

 ユディットが右に、リアーネが左に展開し、ジは正面からトレントに向かっていく。


 トレントはほとんど木のような見た目をしている。

 そのために分かりにくいが戦闘状態に入ると表面に顔が浮かび上がってくる。


 非常に年老いた老人のような顔が正面のジの方に現れた。

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