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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第八章

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さてさて佳境2

「うーん、まっ、危なくなったらすぐに助けに入るし大丈夫でしょ。

 うちは騎士の自主性を重んじているからね」


「物はいいようというものですね」


「はははっ、それに……俺はユディットを信じてるから」


「……良い主従関係で」


 ジも努力を重ねているがユディットも努力を重ねている。

 魔剣という利点はあるがそれはユディットそのものの力ではない。


 ジには思考の柔軟性もあってどんな状況でも諦めることがない。

 生きるということを手繰り寄せる力がある。


 そんなジを守り、恩を返すためにはもっと強くならねばならない。

 リアーネやニノサンが増えて常に守るということはできなくなったがその分鍛錬する時間ができた。


 そのような時間に密かに冒険者として魔物と戦って鍛錬を積んでいることもジは知っていた。


「パージヴェルさんがヘレンゼールさんを信頼しているようなものですよ」

 

「そう言われると……少し弱いですね」


 パージヴェルはヘレンゼールを深く信頼している。

 今こうしてリンデランのためにダンジョンに同行させることもそうである。


 命よりも大切なリンデランを守るために付ける人がヘレンゼールなのだ。

 ジに褒められてヘレンゼール軽く笑う。


 パージヴェルにとってのヘレンゼールがジにとってのユディット。

 そう言われてしまってはこれ以上何もいえなかった。


「ここには実力者もいますし」


 ヘレンゼールがユディットのために動いてくれるとは思わないがリアーネやジだって弱くない。

 何かあるかもしれないと気を引き締めて警戒していれば動き出しはかなり早い。


 仮に何かがあってもユディットが即死でない限り治療ができるエもいる。

 ユディットに任せるがユディットの後ろには万全の準備がしてあるのだ。


「植物の騎士よ、その扉を通してはくれないか?」


 前に出ながらユディットはツリーナイトに声をかけてみた。

 しかしツリーナイトから返事はない。


 ツリーナイトが手を前に出した。

 メキメキと音を立てながら根が伸びていって大きな剣のような形を成していく。


「やはりただでは通してくれないか。

 来いっ!」


 ツリーナイトが駆け出した。

 剣となった大きな腕を振り回す。


 風を切る音が離れていても聞こえてくるほどの力強い斬撃をユディットは紙一重でかわしていく。


「これなら……リアーネさんの方が速い!」


 抜きながら剣をツリーナイトの胴体に向かって振るう。

 魔力を帯びた剣をツリーナイトはギリギリ後ろに飛んでかわすが胴体が切り裂かれた。


「ほぅ……なかなかやりますね」


 根はすぐに伸びて傷は塞がりほとんどダメージはないように見えたがこれが他の魔物であったならそこそこ深い傷だったに違いない。

 今度はユディットから攻めていく。


 固い動きの多かったユディットであるが実戦的な経験も積んで柔らかさが出てきた。

 ユディットの剣をツリーナイトがなんとか防ぐ。


 密度が高くて固いのかツリーナイトの剣の腕にユディットの剣は刃先がめり込むぐらいまでしか切れない。

 しかしユディットの攻めが激しくツリーナイトは反撃の隙を見つけられない。


「ユディット!」


 そこでツリーナイトは攻撃方法を変えた。

 逆の手の根が伸びる。


 ユディットの剣を防ぎながら逆の手の太い根を横に薙ぎ払う。

 

「これぐらい!」


 ユディットは後ろに回転しながら跳び上がり根の腕をかわす。

 ツリーナイトが少し距離を空けたユディットにすぐさま襲いかかる。


 右の剣の腕と左の根の腕を同時に操りユディットを倒そうとする。

 普通の魔物なら1つの攻撃方法でいっぱいいっぱいなのだけどツリーナイトは植物であり通常の思考を持つ魔物とは少し違う。


 左右同時に違う攻撃を繰り出すことも可能なのである。

 リンデランとウルシュナとエは一瞬危ないと身を乗り出そうとした。


 対してジとリアーネは動かない。

 ユディットの目はまだ冷静だった。


「はああああっ!」


 剣の腕を回避しながらもユディットは剣に魔力を込めて根の腕を切り裂く。


「こんな……ものじゃないぞ!」


 最後に剣の腕とユディットの剣がぶつかった。

 しっかりと力と魔力を込めた一撃。


 振り切られたユディットの剣。

 ツリーナイトの剣の腕が切られて飛んでいく。


「トドメだ!」


 ツリーナイトは根を伸ばしてまだ腕を再生しようとしていた。

 再生速度は速いが瞬間に再生するまでの速度はない。


 ユディットの攻撃に反応は見せたが振り上げた腕の先は再生しておらずにユディットの剣を防ぐことはできなった。


「あれほどの腕があるならうちでも欲しいぐらいですね」


 ユディットが剣を振り切ってから一瞬遅れてツリーナイトの上半身がズレて落ちた。

 さほど危なげもなくユディットは勝ってしまった。


「やりました!」


「おつかれ、ユディット」


 ジたちは知らなかった。

 この部屋の仕組みを。


 なんだか簡単ではないかと思ったのだけどユディット1人が前に出て戦ったのはこの部屋の攻略における最適解であったのだ。

 後にまた攻略する時に気づくことになるのだけど戦いに出てきた人数に応じて出現するツリーナイトの数も変化するという仕組みなのであった。


 実力のあるものが1人出て倒すというのが最もシンプルで楽な形なのである。

 本当に騎士道精神よろしく一対一で戦うのが良かった。


 ひとまずユディットのおかげでこの場は比較的楽に通り抜けることができたのであった。

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