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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第八章

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金で買えない笑顔のために1

「あんたがフィオス商会の会長かい?」


「はい、そうです」


 いつもいる貧民街から見て街の反対側、普段はあまり行くこともないところにジは来ていた。

 ユディットを伴い、フィオスを抱えたジが訪れたのはとあるお店だった。


「例のものはありますか?」


「ああ、もちろん」


 寂れているように見える店の中、男の店主は一度奥に消えて袋を持って戻ってきた。

 袋の中から物を取り出して机に並べていく。


 ネックレス、イヤリングなどの装飾品が並べられていく。

 いくつも並べられていく中で最後に取り出された真っ白なバングルを見てジはピクリと反応した。


「どれも魔道具だ。

 だが鑑定はしていない」


「どこでこれらを手に入れたか聞いても?」


「それは御法度だ。

 教えられない」


「……そうですか」


「贈り物を探していると聞いた。

 相手は女性かな?


 それなら……これはどうだい?

 どうせ魔道具の価値なんか分からないような貴族に贈るのなら見た目が綺麗な方がいい」


 店主はネックレスを手に取った。

 大きめの赤い宝石を中心にして作られたやや華美なデザインのネックレス。


 ここに並べられたものは全て魔道具。

 なのでネックレスからもわずかに魔力を感じる。


「もう少し落ち着いたものがいいな」


「そうかい?

 まあこうした物を好むのは本人も派手と決まっているからな」


「これは?」


 ジは白いバングルを手に取った。

 白い絡み合う龍が青い宝石を咥えたようなデザインをしている。


「綺麗だろ?

 たまたま先日入荷した物でな。


 多少値は張るがどんな人でも喜んでくれるだろうな」


「じゃあこれをもらおう。

 それとこれも良さそうだ」


 次にジが手に取ったのは手袋。

 贈り物にする装飾品としてはかなり見た目地味であるが触ってみるとしっかりとした品質のものだった。


 指の部分がなく手の甲全体を覆う手袋で軽くて丈夫そうだった。


「そちらは指のところがなくて細かい作業にも適しているんですが指も魔法によって保護してくれるんです」


「なるほど」


 どんな魔道具かと思ったらなかなか面白い性能をしている。


「これも買おう」


「お目が高い。

 どうですか、もう1個ぐらい。


 お値引きしますよ」


「じゃあ……これは?」


 ジが指差したのは赤いネックレス。

 先ほどの派手なものと違っていて落ち着いたデザインをしている。


 石の色も鮮やかな赤なのだけど少し暗めで夕暮れのようなオレンジがかった色をしている。


「それは……聞いたな。

 そうだ、火炎耐性をあげてくれるものですよ」


 一部の超高級な魔道具でもない限り魔道具の効果は過度に期待できるものではない。

 指先の保護や火炎耐性も完全に全てを防いでくれるものだと思うのは危険である。


 それでも少しでも効果があれば危機的な状況において命運を分ける可能性はある。


「じゃあこれも」


「ありがとうございます!」


 サラリとお金を払って商品を受け取り、ジはお店を出る。


「あんなに買われてよかったのですか?」


「いいんだよ。

 カモフラージュにもなるしもしかしたらお宝な可能性もあるからね。


 たまたまお金もあるし。

 ユディットもなんか欲しかったか?


 普段世話になってるし何か一つくらい……」


「い、いえ!

 何か欲しいとかそう言ったことはないですよ!」


「そうか?

 ユディットも騎士としてよくやってくれてるから何かあったら言ってくれよ?


 俺のできる範囲のことならなんでもするからさ」


「会長……!」


 感動したような面持ちのユディット。

 最近はニノサンが加わったことでどう思われているのか心配であったがジがユディットを大切に思ってくれていることが伝わってくる。


「一生お仕えします!」


「うん、頼むよ」


 ーーーーー


「なーあー、出てこいよー」


「ウーちゃんに合わせる顔がありません!」


「別にリーデのせいじゃなーでしょー?」


 ヘギウス家。

 リンデランの私室。


 小さく盛り上がった布団とその横に座るウルシュナがいた。

 ポンポンと優しく布団のふくらみを叩くウルシュナは困り顔だった。


 閉じこもっているのはリンデラン。

 その理由はリンデランのアーティファクトであるセッカランマンが帰ってこなかったことにあった。


 逮捕された時点でリンデランのセッカランマンは売られてしまっていた。

 さらにタチの悪いことに売った相手が分からないのである。


 売ったのに、売った相手が分からないとは。

 盗掘団はこの辺りで活動している人たちではない。


 それどころからこの国の人ですらない。

 普段は盗掘したものをこっそり売る相手や販売ルートがあるのだけれどここにおいてはそのようなものはないのである。


 当然知っている商人などもいないが盗品はただ抱えているだけじゃお金になってくれない。

 国に持って帰るのも楽ではないのでどこかに売らなきゃいけない。


 そこで盗掘団は盗み出したものを適当に売り払ったのである。

 闇商人をしている相手に素性や名前も聞かずに一度切りの取引をした。


 商人の方も品物のしっかりとした鑑定をしないでざっくりとした金額を払って品物を受け取る。

 どちらにも損をする可能性はあるがどちらかが捕まっても足はつくことがない取引をしたのだ。


 そんな盗品の売っ払いを数回盗掘団は行っていた。

 盗掘団も品物を適当に袋にバラバラに入れて引き渡していた。


 つまりセッカランマンがどこに売られてしまったのか分からなくなった。

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