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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第八章

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一生のアニキ4

 光る模様がソコの体全身に広がる。

 ソコの周りに盛った粉も淡く発光し始める。


 アルファサスが念のためにと見守るソコの両親の周りに神聖力の壁を作り出す。

 手に持ったナイフが燃えるように熱くて投げ出してしまいそうになる。


 けれどジは歯を食いしばって耐える。

 ソコも辛そうな顔をしている。


 頑張っているのはジだけではないのだ。


「帰ってこい……!」


 別にソコはそんなに親しい友達でもない。

 短い間だけを過ごした少し不思議な関係である。


 それでも友達は友達。

 父親がいなくても強く生きようとした尊敬できるところのある少年でまた父親と再会することもできたのだ。


 助けたい。

 全身に広がった模様が青から赤へと色を変える。


「遊ぼうぜ……

 今度は貧民街での遊びを俺が教えてやるからさ」


 何かが割れるような音がした。

 同時に模様の光が強くなってジは目をつぶった。


「ソコ……ソコ!」


 目を覆わずにはいられないほどの光が収まって、部屋の真ん中ではジとソコが倒れていた。

 ソコの両親が駆け出し、アルファサスもジやソコの容体を確認するために2人のところに向かう。


 ジは気を失っているだけ。

 アルファサスには魔力を使いすぎてのことのように見えた。


「……頼みますよ」


 黒いとんがり帽子を被ったフィオスがジの胸の上にぽよんと乗っかる。

 主を心配しているのか、守ろうとしているのか。


 どっちにしろジの側にいてくれそうなのでフィオスにジを任せた。

 次にソコの方に向かう。


 感じていた奇妙な気配、おそらくは呪いによるものが感じられなくなっているとアルファサスは思った。

 呼吸はしている。


 ゆっくりと穏やか。

 最低でも死んでいないことは間違いない。


 精神的な影響があるかは起きてみなければ分からないけれど解呪は成功したようであった。

 特別アルファサスの力で治療が必要な状態ではなかった。


 ーーーーー


「ん……」


 ジが目を覚ますと病室に寝かされていた。

 頭の後ろがやたらと柔らかい。


 なんだろうと思っているとそれがよく知った感触であることに気がついた。


「フィオス……?」


 呼んでやると頭の後ろが微振動する。


「おや、起きられましたね」


 別に寝かされているのはいいけれどなんでフィオスがまくらになっているのだ。

 ジがフィオスをまくらにすることはあるけど誰かがジを寝かせるのにフィオスをまくらにはしないはず。


 ぼんやりと考えているとアルファサスがやってきた。


「調子はいかがですか?」


「多少体が重たい感じがありますけど元気です」


「多分魔力を使いすぎたのでしょう。

 魔力が回復すれば重たい感じも無くなるはずです」


「そうですか……ええとその」


「そのスライムさんは自分でそうしたんですよ。

 ベッドまで運んだ際に一足先に降りて頭のポジションに鎮座したのでまくらにするように私が指示しました」


 そっちじゃないけどそれも気になっていた。

 フィオスがまくらになってる理由。


 男性神官がジのことを運んでくれた。

 その時に胸にはフィオスが乗っていたのだけどベッドまで来た時フィオスはピョンとベッドのまくらの上に降り立った。


 どうしたらいいのか困惑する男性神官にアルファサスは本来のまくらをどかしてフィオスの上に頭を乗せなさないと指示を出した。

 以前入院した時に時折フィオスをまくらにしていることは知っていた。


 さらにはフィオスが単なるスライムにとらわれないスライムであるような気は前々からしていた。

 だからさっと指示を出した。


 そのようにできる柔軟性は流石であるなとジは感心した。


「それにしてもそうするのは中々気持ちよさそうです」


 アルファサスが手を伸ばしてフィオスに触れる。

 他のものに例えようもない不思議な柔らかくて弾力のある感覚。


「……褒められてフィオスも嬉しそうです」


「そうですか。

 それなら良かったです」


「あの……それよりもソコは」


 ジが気になるのはもちろんソコの呪いがどうなったか。

 何かが割れるような音がした瞬間にカッと体が熱くなって気を失ってしまった。


「ソコさんは先に目を覚まされていますよ」


「本当ですか!

 ……うっ」


「おやおや……そのようにいきなり動いてはいけませんよ」


 上半身を起き上がらせたジはめまいがしてアルファサスがそっと支えてくれた。


「呪いは?」


「ご自分の目で確かめられるのがよろしいでしょう」


 ジはソコがいる病室に向かう。

 半ば結果は分かっているけれどやっぱり不安はある。


 ギュッとフィオスを抱きかかえて病室の前で一呼吸。


「……ソコ!」


「…………ジ!」


 病室に入ると泣いているソコの両親、そして抱きつかれて困惑するソコがいた。

 ソコは病室に入ってきたジを見るとパッと花が咲いたような笑顔を見せた。


 呪いのせいで虚で無表情だった時は全く異なっていた。


「ちょ、ちょっとはなしてよ!」


 照れ臭そうに母親の手からすり抜けるとジの前までソコが来る。

 何も映さなかったソコの瞳は光が入り、口元は笑顔で上がっている。


「ありがとう!」


 ソコはジを抱きしめた。

 ジが抱きかかえているフィオスが間に挟まれてむにゅんと潰れるけどソコとしてフィオスごと抱きしめているつもりだった。

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