またまたダンジョン1
棒は意外と高く売れた。
なぜなら先日のモンスターパニックの影響で植物などが食い尽くされて木も甚大な被害を受けた。
枯れてしまったものもあればいまだに再生しきっていない木も多い。
木材やなんかは保存が効くために食料品などに比べて問題になりにくく、今でも食料品のように無くなったという事態にはなっていない。
それでも時間が経つにつれて在庫の減少は目に見えてきた。
そのために魔物の素材である木の買取価格も上がっていた。
余裕があれば加工に回されることも多いのだけど今の棒は燃料としての需要があった。
魔力を多く含んだ魔物の木の枝は長く燃える。
宝箱から手に入れた松明棒ほどではないにしてもそこそこ優秀な薪となる。
油の絞れるタネも使える。
食用油としてはもちろんこちらも火をつけられるので通常よりも高めに買い取ってくれる。
ダンジョンに潜れば棒もタネも意外と手に入るので先を見据えて必要な分は自分達で確保しておいて余りを売ることにした。
「吹き飛んじゃえ!」
巨大な氷塊がドライウッドを押しつぶす。
「おりゃああああ!」
氷の槍がネタナタネを切り裂く。
油の採れるタネを出す魔物の名前がネタナタネというらしい。
「荒ぶってるわね」
「まあ、しょうがないよねぇ……」
魔法を放った主はリンデランである。
本当ならもうちょっと後で参加してもらうつもりだったのだけど泥棒事件が起きてしまった。
落ち込んだリンデランを連れ出してストレスを発散させる場として選ばれたのがダンジョンだった。
魔法をぶっ放しても問題はないし元々行くつもりだった。
少し予定が早まったに過ぎない。
ただ安全確保も十分ではないのでヘレンゼールが同行することになった。
来られない予定だったのだけどパージヴェルが頑張ってどうにかするのでリンデランの安全のために護衛役として来られることになった。
基本的にはヘレンゼールは手を出さない。
リンデランがピンチになったら登場する。
「ほいっ!」
「ウルシュナも強くなったな」
「へへん!
そうでしょ?」
華麗なステップで近づいてドライウッドをウルシュナが槍で切り裂いた。
ウルシュナが来ることは予定になかったのであるがリンデランがダンジョンに同行することがウルシュナにもバレてしまった。
落ち込んだ友人がダンジョンに行くなんてとても心配、ということで連れてけとダンジョンまでついてきて言うのだもの。
ルシウスはジが率いていることとヘレンゼールが同行していることを考えて渋々許可を出したみたいである。
リンデランが加わってもう少し前衛をはれる人が欲しいと思っていたのでちょうど良かった。
それにウルシュナも強くなっている。
最初にあった時にはジの方が強かったけど今じゃジも見ていて油断出来ないと思った。
魔力も全開で来られたら勝てないかもしれない。
ジは戦いが楽になったなと思いながらひょいひょいと棒を拾う。
「リンデランの魔法もすごいな」
好き勝手ぶっ放しているがリンデランの魔法は無駄が少ない。
ちゃんと相手にも当てているし、多少のオーバーキル感はあるがそれはご愛嬌である。
エスタルはちゃんと先生をやっているようだ。
「えへへ、頑張ってますから!」
ジに褒められてリンデランは嬉しそうに笑う。
結構魔物を倒してスッキリしたようである。
「再出現まで3日ってところか。
宝箱んところのは10日……」
リアーネがメモをとっている。
ダンジョンの攻略は確実に進める。
ちょっとずつダンジョンの地図を埋めていっているがこのダンジョン意外と複雑である。
あっちに行っては行き止まり、こっちに行っては行き止まりと細かく分岐と部屋がたくさんある。
魔物自体は変わり映えしなく強くもないので苦労は少ないのだけど初見からボスまで攻略しようとしていたら大変だった。
そしてリアーネがメモを取っている内容は魔物の再出現の時間を記録しているのである。
ダンジョンの魔物は比較的短期間で再び再出現する。
このダンジョンに出てくる魔物では大体3日、宝箱のところにいたアイヴィーウィップは10日ほどでまた出てくるようになった。
宝箱は開きっぱなしで復活していなかった。
復活しないのかもっと長い期間で復活するのかは要注意だ。
こうした魔物の再出現情報も大切だ。
もしここが消えないダンジョンなら魔物を狩るための資源となる。
無駄なく狩りを行うために再出現の時間も把握しておけば後々のためになる。
さらに攻略の時にも魔物の再出現を把握しておかないと撤退した時に復活した魔物とこんにちはなんてこともある。
「比較的危険性の低そうなダンジョンですね」
ヘレンゼールも万が一があった場合に備えて警戒しているがみんなの実力も高くてあまり心配しなくてもよさそうだと思っていた。
ジやリアーネも周りに気を張ってくれているので出番はない。
苦労しているだろうパージヴェルを思うと申し訳なくないぐらいに暇である。
「まだ浅いところっぽいけどね」
これだけの広さがあって魔物の種類もこれだけとは思えない。
まだもうちょっと変化がありそうな気がしている。




