のんびり休日5
その後も何着か着させてもらってジはグッタリ、リンデランとタとケはなんだか満足そうにしていた。
色々服を着てみて思うのはやっぱりファッションって難しいってことだ。
楽しいっちゃ楽しいけど自分に何が似合うとか考えるのは簡単じゃない。
「手直しが必要ね」
「いや、でも」
「いいのよ。
持っていきなさい」
リンディアはこれらの服をジにあげるつもりだった。
ただジに向けて作られたものではないので袖の長さが合っていなかったりとそのまま着るには問題がある服も多かった。
「全部は持っていけませんよ」
それに保管だってジの家では難しく、普段から着れないような服は管理も楽じゃない。
「普段から着られそうで気に入ったものいくつか貰ってもいいですか?」
「ならそうしなさい」
見た目もオシャレで丈夫な服と緩く着れるような服など何着か貰い受けることにした。
タとケはなぜか白い礼服もらっていこうとしたけど流石にそれは止めた。
「すっごく良かったです!」
リンデランも興奮冷めやらぬ感じである。
人の服装にはあまり興味がなかった。
男は外側じゃない!
とパージヴェルがよく言っていたこともあるからだ。
パージヴェルもそんなに外面重視の男ではない。
顔が悪いわけではないがもっと整った人などいくらでもいた。
だから熱い心とまっすぐな思いこそ真のカッコよさだとリンデランに説いてきた。
リンデランも見た目だけ良いような貴族の子たちがいることを知っているので全てでなくても中身が大事だと思っていた。
ただやっぱり見た目も良ければそれに越したことはない。
惜しむべきは一緒にいるフィオスにも何か1つ2つアイテムなり衣装なりあればもっと良かったのにと思っていた。
「少し直して家まで届けさせましょう」
「何もかもありがとうございます」
「良いのよ、他の服も機会があれば着てちょうだい」
「はい」
他の服はフォーマルな感じなので何かにお呼ばれしたら身につけようかな。
何にお呼ばれするんだと言われたら困るけど。
結局ヘレンゼールに教えてもらったお店は次回にすることにした。
ファッションショーで時間も取られたし目的は達成できたから。
「じゃあ帰りにお買い物でもしていこうか」
食事にも誘われたけどそこはお断りして帰ることにした。
タとケとのんびりお店でも回って食料品でも買うことにした。
本当の最初の目的はこうすることだった。
みんなの分の食材となるので昔よりも荷物は多くなる。
でもジもタもケもちょっとだけ大きくなったので荷物を持つことは出来る。
「あれ買っていこうか」
もうそろそろ帰らなきゃなという時間になった。
荷物も結構いっぱいだ。
最後に寄ったのは串に刺した果物を焼いて出してくれるお店だった。
「いいの?」
「うん、今日は付き合ってもらったからね」
前もこうした買い食いはした。
貧民街の子供たちにバレないようにその場で買って食べられるものをこっそり買って食べて帰っていたことがあったのだ。
だから今日もお礼がてらに食べられるものをと思った。
「はいよ、3人分ね!」
「ありがとうございます」
「荷物たくさんだね。
最近泥棒が出るって噂だ。
盗まれないように気をつけなよ」
「泥棒ですか?」
「まあ貴族のお屋敷に忍び込んで高そうなもの盗んでくって話だから大丈夫だと思うけどね」
「へぇ……」
3人はそれぞれ違うものを選んでシェアして食べる。
「はい、あーん」
「あむ……うん、美味いな」
「ジ兄、あーん」
「はいはい、どうぞ」
「えへへ」
タがジに食べさせて、ジがケに食べさせる。
ニコニコしたまま果物を食べているとなぜかそのお店のお客がいつの間にか増えていることにはジも気づいていなかった。
不思議な休日だった。
特別な何かでもない1日だったけど愉快な1日。
こうした何気ない1日を過ごすために頑張っているのだなぁと改めてジは思ったのであった。
 




