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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第八章

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ダンジョン調査4

 ニードルウッドの枝もしまってさらに進んでいく。


「ニノサン、奥を頼む!


 リアーネは真ん中を!」


「お任せください!」


「おうよ!」


 3つ目の部屋にたどり着き、中に複数の魔物が見えた。

 強い魔物じゃないけどどんな相手でも油断をするのはよくないのでまず魔物を倒すことを優先する。


 速度のあるニノサンが奥にいる敵を狙い、リアーネが中間、ジが手前の敵を狙う。

 ダンジョンの魔物を相手にする時楽なところは何も気にせず戦ってもいいところである。


 ただ倒すだけなら別に何も気にしないのだけど魔物は倒した後解体して素材として持ち帰って売ることもある。

 そうした時に出来るだけ毛皮を傷つけないようにとか気にして攻撃する必要もある。


 だけどダンジョンの魔物なら倒した後に勝手に綺麗な素材なりがドロップする。

 リアーネが突き出された枝ごと相手を真っ二つにしても何の問題もないのである。


「行き止まりですね」


 倒した魔物がドロップしたものを拾ったニノサンが素材をしまいながら部屋を見回す。

 入ってきた通路の他に進めそうな道はない。


 右へ右へと来たけど3つ目の部屋で行き止まりとなってしまった。


「ちょうどいいしここで一度撤退しようか」


 あまり深入りしすぎても危険だ。

 少し探索するぐらいのつもりであったからむしろここで行き止まりであるのは好都合だったとジは思った。


 来た道をそのまま戻っていくけれど魔物はいない。

 移動や短時間での復活もなさそうである。


「げっ、雨だ」


「テントに避難だ!」


 外に出ると雨が降ってきていた。

 慌ててジたちはあらかじめ張っておいたテントに駆け込む。


「すごいですね、これ」


 ニノサンは感心したようにテントを見上げた。

 パラパラと雨粒が当たる音がしているけれど水が染みてくることはない。


 このテントは試作品の防水布で作ったものである。

 かなり激しめに雨が降っていたけれど湿ってすらいなくてニノサンは感心していた。


 実はジが商品開発をして商会をやっていることに不安な気持ちもあった。

 それでも付いていくつもりであったけれど商人としてやっていくことは楽じゃない。


 クモノイタやパロモリ液も実際に使用した商品を使ってもなかったので当然の不安でもあった。

 けれど今こうしてジが考案した防水布を使ったテントの力を目の当たりにしてみるとすごいものだと思う。


 商才もある。

 これは認めざるを得ない事実である。


 自分が兵士をしている時にもこういうのがあったらなとニノサンは思った。

 直接体が濡れないというのは大きい。


 体が冷えることもなければ濡れる不快感もない。

 さらにテントの内側にはパロモリ液が塗ってある。


 そのために外が雨に濡れても断熱効果が保たれていて中が冷えてこない。

 濡れた地面の感触は防げないが濡れた冷たさは感じない。


 雨に当たらない大きな木の下を奪い合って結局雨ざらしの元で休むこともできない夜を過ごしたことに比べれば天国のようだ。


「うーん……これじゃあここで一泊かな?」


 テントから外を覗く。

 時間が経っても雨足は弱まるどころかさらに強くなる。


 防水布を頭からかぶって無理に帰ってもいいけれど町までは直線で進んでも意外と距離がある。

 非常に雨が強くて雨を防ぎ切るのは不可能だろうし、ここでそんな無理をすることはない。


 せっかく防水布で作ったテントがあるのだし一泊する方がいいかもしれない。

 これで防水布のテントがなかったら危険を冒してダンジョンの入り口に留まるか走って帰るしかなかった。


「ほら、そんなに広くないからもっとこっち来いよ」


「いや、でも……」


「私はいいから、ほら」


 残念ながらテントは1つしかないのでリアーネも一緒になる。

 3人寝られるぐらいのスペースはあるけれど荷物や武器を置くとギリギリぐらいになってしまう。


 なぜか真ん中に据えられたジをリアーネが少し引き寄せる。

 肌が触れ合うぐらいの距離に引き寄せられてジが困惑する。


 別に男と肌を触れ合わせたくはないけど女性であるリアーネに触れるのも良くないだろうと思ってニノサン寄りに位置取っていたのに。


「なんなら抱きついたっていいんだぞ?」


「俺のことなんだと思ってるんだ?」


 ジはフィオスを枕にして仰向けに寝転がる。

 リアーネは手で頭を支えて横になり、ジの顔を見ている。


「リアーネ?」


「ほんとこう見てるとまだガキなのにな」


 ぷにっとリアーネがジの頬をつついた。

 こうすると子供の顔が取れて年寄りの顔でも出てくるんじゃないかとちょっとだけ思った。


 それぐらい落ち着いていて色々考えている。

 でもやっていることを考えると若さで突っ走っている感じもある。


「……あんまり無茶しすぎんなよ?


 私はお前の騎士だからもっと頼ってくれたっていいし、お前はもっと休んだっていいんだぞ」


「……ありがとう。


 でも今のうちに頑張って後で楽したいんだ。


 今ここで頑張っておけばこれから先に何がきてもきっと乗り越えられるから。


 その時にはリアーネにもたくさん働いてもらうかもしれないよ」


「ふん、任せとけ」


 ニノサンは思う。

 人の上に立つことになってもジは変わらない。


 リアーネはジに信頼を寄せているし、ジもリアーネに信頼を寄せている。

 自分もこうした主従関係を築いていきたいものである。


 そうするつもりはないけど頬をつつけるような関係性も羨ましく思うであった。

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