パムパムの問題2
「疑問は分かるけど考えるだけ無駄だぞ」
ジといると不思議なことがたくさんある。
一々全てのことを聞いていたらその間にまた不思議なことが起きてしまう。
リアーネのアドバイスを受け入れるのにも時間はかかるだろうが何で魔物が話しているんだなんで説明もしていられない。
「ヒ、パムパムを出してくれるか?」
「わ、分かりました!」
ヒがパムパムを呼び出す。
今度は花束を持っていなくてジは少し安心する。
「な、何でしょうか?」
「コケェ」
呼び出されたパムパムはリンデランに近づいて手を取ると甲にくちばしを当てた。
そのキザな礼儀はどこで身につけたんだこのキックコッコは。
「あ、ありがとうございます……」
「もう、パムパム!」
「それでこの子か何か?」
「コイツが何言ってるか分かるか?」
「コケコケコケェ」
「うん、分かるよ。
困っていることがあるんだって」
「おっ!
本当か!
どうにも伝えたいことがあるみたいなんだけど魔物の言葉は分からなくて困ってたんだ。
通訳をお願いしたいんだ」
「なるほどね〜まっかせなさい!」
ポンと胸を叩くエスタル。
ちょっとモフッとしていて触ってみたいなとジは思った。
ということで始まるパムパムの謎のご相談。
エスタルはうんうんと話を聞いている。
「はじめまして」
「あ、はい、はじめまして!
き、綺麗でさね!
ですね!」
「ありがとうございます」
パムパムが説明している間に暇なのでリンデランにヒを紹介する。
ヒはあまり見たことがない貴族の令嬢の華やかな雰囲気に目をキラキラさせていた。
嫌味ではなく本当にリンデランのことを綺麗と思って褒めている。
とりあえず紹介したもののジもあまりヒのことは知らない。
グループはジとは違っているところに所属していて、ジからはグループ的な結構遠い。
大婆とかが直接面倒を見ているグループで割と真面目な子供たちが多い印象ではある。
ヒは魔獣契約の時に体調を崩していて行けなかったようである。
「こ、こんなところ初めてですごく緊張していて……周りのみんなも綺麗な人たちばっかりで」
「ヒさんも可愛らしいですよ」
「お世辞でも嬉しいです、フヘヘ」
ヒはやや暗めの茶色の髪をしていて容姿としては可愛い感じであるがリンデランと比べてしまうと平凡な域は出ない。
でもほっこりとして落ち着く可愛らしさがヒにはあるとジは思っている。
礼儀もちゃんとしているし愛されキャラな子ではある。
というか改めて見るとリンデランとか周りの人のレベルが高すぎるのだ。
「なんだよ?」
「リアーネも美人だなって思ってさ」
「ば……な、何だよいきなり!」
男勝りな感じで誤魔化されがちであるがリアーネも綺麗な顔立ちをしている。
最近はジの騎士として雇われて冒険者としてはあまり活動していなくて小綺麗になったので綺麗さに気づく人も出てきた。
自分で自分の環境を恵まれてるなと思う。
過去では何であんなに女っ気がなかったのか不思議なぐらいである。
「なるほどね!」
「コケっ!」
「おっ、話し終わった?」
「うん。
どうやら困ったことがあって、ジに頼みたいことがあるみたいなんだ」
互いに顔を合わせてうなずき合ったエスタルとパムパム。
ようやく話が通じるとパムパムも嬉しそうな顔をしている。
「えーと、ジに言われてこの近くを離れた……んだね?」
「ま、まあそうだな」
一斉に全員の視線がジに向く。
ジがパムパムと何があったのか知らないみんなからすればどういうことだと疑問に思うのも当然の話である。
リアーネじゃなくてユディットを連れてくれば話が分かる人もいたのにとちょっと思う。
「それでちゃんと愛の巣を見つけたらしいんだけど。
そこの近くに何とダンジョンが出来ちゃったみたいなんだ」
ジとフィオスに助けられたパムパムはジたちの言う通りにその場を離れた。
メスのキックコッコたちを連れて安住の地を探した。
他の魔物とナワバリ争いをしてたまたま良い場所を勝ち取ることができたのであった。
その後虫のモンスターパニックも連鎖的に起こるのだけど虫を食らうキックコッコに近づこうとする虫はいなくてキックコッコ周辺は無事だったりもした。
そうして平和に暮らしていたのだけの何と皮肉なことかキックコッコの巣の近くにダンジョンが出現してしまったのである。
魔物といえどダンジョンの存在は異質なものであるらしい。
落ち着かない生活をしていたのだけど他所はモンスターパニックの影響で一面植物の枯れ果てた荒野になっていたので移り住むこともできない。
ダンジョンと距離を置いて暮らしていたのだけどダンジョンブレイクの不安はつきまとう。
そしたら今度は魔獣としてパムパムは呼び出されたのである。
呼び出されてヒと契約を結んだのだけど偶然その場にいたジが目に入った。
トリ頭だけどバカじゃない。
ジのことはもちろん覚えていた。
魔物である自分を逃してくれた変な人間。
人間がダンジョンを攻略することは知っていたのでもしかしたらダンジョンをどうにかしてくれるのではないかと思った。
「というわけさぁ!」
「ぬー……」
なかなかとんでもない話である。




