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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第八章

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いや、お前とも再会するんかい3

 その後は目ぼしい人もいなかった。

 過去の中で活かせそうな魔獣の知識はまだあるのでもしかしたらいけるかもって人はいたので覚えてはおこうと思う。


 けれど全体としてライナスやエのようなすごい魔獣はいなかった。

 ある意味ですごい魔獣はいたけど。


 そして魔獣契約が終わりお役人が何人かの子供に声をかける。

 あの中の何人かはライナスとエの後輩、同僚になることだろう。


「おっ、帰ってきたな」


 中には魔獣が弱くて落ち込んでいる子もいる。

 どう活かすか次第で可能性はあるのだけどまだまだ強いか弱いかの価値観に囚われている人が多い。


 この先に魔獣がもっと活かされる時代になっても強さは依然として変わらぬ価値観であった。

 ともかく少しでも悩みを軽くしてやるためには飯を食うのは手っ取り早い方法である。


 馬車にみんなを乗せて貧民街に帰ってきた。

 そこではリアーネを始めとする教会の人やタとケなどが炊き出しをしていた。


「みんなもお疲れ様。


 是非食べていって」


 一人一人助けていくことなどできない。

 結局は自分でどうにかしなきゃいけないところは大きい。


 カエルやファイヤーリザードの子はメリッサにザックリとした説明を頼んでジはデカキックコッコの子を家に連れて帰った。

 歩きながら名前を聞くと女の子の名前はヒでデカキックコッコはパムパムと名付けたらしい。


 まあ随分と可愛らしいお名前付けてもらったことである。


「ええと……」


「別に取って食ったりしないから落ち着いて」


 ジとデカキックコッコの関係を知らないヒはデカキックコッコが粗相をしたので呼ばれたのだと怯えている。

 もちろん粗相なんてしてないしそんなことでわざわざ家に人を呼び出したりしない。


「あのキックコッコ呼び出してくれる?」


「あの……あ、あの子も悪気はなかったんです!」


「ん?


 うん、多分悪気はないだろうね」


 あのちょっとスカした感じは前からそうだ。

 それがデカキックコッコのパムパムの性格だしそれに相応しい気概も持っているのでむしろ好ましいぐらいだ。


 ヒはジがパムパムに何かをするのだと思って庇おうとしている。

 重大な勘違いが起きていることにジは気づいたけれどそれをどう説明したものか。


 とりあえず魔獣を守ろうとする姿勢は好感が持てる。


「手は出さないからとりあえず呼んでくれないかな?」


「ほ、本当ですか?」


「うん、約束するよ」


 悩んだような素振りのヒであったがジを信じてみることにした。


「パ、パムパム」


 ヒはパムパムを呼び出した。


「コケェ……」


「なんでだよ」


 呼び出されたパムパムはなぜなのか花を翼に持っていた。


「あ、ありがとう……」


 花をヒに渡すとヒも困惑しながら受け取る。

 なんで花を持っているのだ。


 呼び出されることを想定して花をつんで待っていたのかと疑問に思う。

 そしてパムパムはその花の中から一輪だけ取るとジにも差し出した。


「コケ?」


「いや、いらないけど……」


 何が悲しくてキックコッコから花をもらわにゃならないのだ。

 普通に花を拒否されたパムパムはずっと花をヒが持つ花の中に戻した。


 相変わらず不思議な魔物である。


「それで何か話したそうだったけどさ……」


「コ、コケ!」


 そうだと言わんばかりにパムパムがうなずいた。


「コケ!


 ココココ、コケッコ!」


 パムパムはジに何かを説明し出した。

 多分説明しようとしているのである。


 翼を動かした話しているようにコケコケ鳴いて何かを伝えようとしている。

 ヒは己の勘違いに気がついた。


 ジは別にパムパムをどうにかしようとしているのではなかった。

 むしろパムパムの方がジに何かをしてほしかったのだ。


 真剣な眼差しでパムパムを見つめている。

 もしかして何を言っているのかジには分かっているのではないかとヒは期待した。


「コケェェ!」


 そしてパムパムが話し終えた。


「…………」


「ジ……さん?」


「……何言ってるか分からん!」


「ええええっ!」


 話し始めちゃったから最後まで待ってみた。

 しかしジに魔物の言葉など分かるはずがない。


 伝えたいことがあるのは分かるけどそれ以上は理解ができない。

 頑張ってジェスチャーしてくれているのでそこから汲み取れないかと考えてみたけど何のヒントもないので解読の糸口すら掴めなかった。


 流石のパムパムも驚愕した顔をしている。

 なんでコケで伝わると思ったんだ。


「何かをしてほしそうなんだけどね……」


 困っているように見える。

 ジに助けてほしいのか協力してほしいのかパムパムの意図を必死に考える。


「わ、分かんないんですか?」


「むしろ君の魔獣だろう?」


「うっ!」


 そう言われると弱い。

 ヒにもパムパムの意図は汲み取れていない。


 まだ契約したばかりで絆も弱くて感情も伝わらない。


「うーん」


「うーん」


 2人して悩むけどパムパムのジェスチャーを思い出すほどに頭の中でパムパムが踊っている感じにも見えてきてしまう。


「戻ったぞ……」


「コケェ」


「お、お前は!


 なんでこんなところに!」


「ああ!


 師匠違うんです!」


 家に帰ってきたグルゼイの目に飛び込んできたパムパム。

 一瞬にしてそれがかつて戦ったデカキックコッコだと理解したグルゼイはサッと剣を抜いた。


「きゃー!


 だ、ダメです!」


「コケコケ……」


「今のは分かったぞ、お前」


 翼を額に当てて首を振っている。

 今のは明らかにやれやれと言っている。


 その後なんとかグルゼイを落ち着かせてその日は解散することとなった。

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[良い点] 相変わらずのイケ鶏っぷり
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