表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第七章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

450/1259

船の墓場で安らかに4

 いくつかの部屋を回ってみるが違和感もあった。

 船の大きさからすると見られる遺体の数が少ないのだ。


 そんなにそこらへんに骨が転がっていても嫌だけど転がっていてもおかしくない。

 なのにこの大きな船を運用するのにはどう見ても足りないぐらいしか骨がない。


「うわっ、アブね!」


 船の先の方から入って船尾の方まで来た。

 一際大きなドアに手をかけた瞬間倒れてきて潰されかけた。


「ここは……船長室ってかな?」


 船の構造なんて知らないけど奥の方にある良い部屋ならきっと船長の部屋だ。

 カーペットが敷いてあったり大きなデスクが置いてあるのがパッと見えた。


 デスクのところにある大きなイスに腰掛けたままのガイコツが1体。

 やや埃っぽい部屋に入る。


 他の部屋よりも密閉されていたのか物の保存状態はいい。

 いくつか貴金属はあるけどジには価値もわからない。


 それに今はあんまり荷物が多くても良くないので手をつけない。


「これは日誌かな?」


 ガイコツの前、デスクの上に閉じられた一冊の本が置いてあった。

 タイトルなんかは見えないので航海日誌なのではないかとジは思った。


 興味本位で日誌を開いてみた。

 大丈夫か心配だったけど慎重に開いてみると破れたりすることもなかった。


 適当に開いたページの中身を読んでみるとやっぱり航海の内容を書き記した日誌であった。

 パラパラとめくって軽く内容を読んでいく。


 どうやら商人ではなく旅をしている人たちのようだ。

 いくつかの国を巡って必要なものを探しているみたいな内容であった。


「警告を受けていたのに風向きが悪く飛竜種の巣の領域に入ってしまった……」


 ここまで順調な旅だったのが一回の失敗で大きく流れが変わってしまった。

 天候が悪くて現在地を見失い、風に任せて進んでみたら近づいてはいけないと言われていた魔物の巣の周辺に入ってしまったのだ。


 領域を守ろうとした魔物に襲われてどうにか乗り切ったが代わりにマストがへし折られてしまった。

 そこからこの船の漂流が始まった。


 段々と食料が無くなり、みんなが精神的に追い込まれていく様子が日誌に書かれていた。

 もはや限界を迎えた時、ここに座礁してしまったらしい。


 まだ比較的元気のある船員を洞窟の探索に出したけれど結局出口も見つけられず、そのまま全滅してしまった。


「もしこれを見つけたものがいるのならお願いしたいことがある。


 返すことのできなかった王家の証をイェルガルに返してほしい……王家!?」


 この船は王太子が王位を引き継ぐのにふさわしい能力があると見せるためにいくつかの国をめぐる旅をしていた船であった。

 安全なルートで進んでいるはずが偶然その中でも危険なところで天候が荒れて失敗してしまった。


 荷物が空なのは全て食べ尽くしてしまったから。

 人が少ないのは洞窟の中を探索していて帰ってこられなかったからだ。


「机の引き出しの奥……」


 デスクの大きな引き出しを開けて奥に手を入れる。

 すると引き出しの奥が外れてさらに向こうの空間に何かがあった。

 

 掴んでこのまま取り出す。


「指輪?


 大きいな」


 かなり大きめの指輪が王家の証らしい。

 大きな青い宝石がはめられていて、ジでは親指につけても余るほどのサイズであった。


 ただ王家の証というだけではない。

 ほんのりと魔力を感じるのでおそらくこれは魔道具でもある。


「ゾーディッグ・イェルガル……まあ俺もここから出られるかは分からないけど出られたらこれお返ししてあげるよ。


 約束はできないけどね」


 この船の船長であり、イェルガルという国の王太子だったゾーディッグの願いはジが受け取った。

 気にしないで指輪を持っていくような人もいるだろうけど不安に押しつぶされそうになりながら最後まで仲間を鼓舞して帰ることに希望を持っていた日誌を読んではやらないわけにはいかない。


 証拠として日誌も持っていくことにしてジは船を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] この伏線がいつ回収されるのか楽しみだ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ