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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第七章

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海に落ち4

 ニノサンとユディットがそれぞれジを挟み込んでいた魔物を切りつける。


「2人共!」


 まさか船から飛び降りてまで助けにきてくれるとは思わなかった。


「申し訳ありません、主人。


 私はここまでのようです」


「えっ?」


「私は泳げません」


 着水したニノサンは悲しい目をして抵抗することもなくスーッと沈んでいく。


「か、会長!


 私も泳げません!」


 対して足をバタつかせているユディットだったけど沈んでいっていることに変わりはない。


「お前ら何しにきたんだー!」


 流石のジも3人もの人を同時に沈まないように支えることはできない。


「クソッ……どうにかしてこっちにこい!


 なんとかしてやる!」


「わ、わかりま、した!」


「さすぶぁ、我がある……じ」


 波に流されそうになりながらユディットとニノサンはなんとかジの方に向かう。


「フィオス!」


 ジは盾の形となっているフィオスを投げ上げた。

 フィオスは空中でスライムの形に戻り、そして破裂するように体を広げた。


 魔物が迫ってくる。

 間に合えと心の中で思いながらフィオスを待つ。


 海の水ごとフィオスがジたちを包み込む。


「金属化だ!


 魔物が迫る下からだ!」


 フィオスの体が金属に変容していく。

 魔物がフィオスにぶつかってガキンと音がする。


 なんとか間に合った。

 ジたちは金属化したフィオスに包まれて魔物から身を守ることに成功したのであった。


「フィオス、横を少しだけスライムに戻して……そうそう。


 そしてそこから水を抜く……いいぞ」


 ただこれでは中に水があって落ち着かない。

 金属化した体の一部をスライムに戻してもらってそこから水を抜く。


 上手いことフィオスもジの言葉に従ってくれて溺れることはなくなった。


「はぁー!


 危ない……」


 よくとっさに思いついたものだと自画自賛したい。

 危機的状況なことに変わりはないが一旦迫り来る危機は乗り越えてジはフィオスの中でへたり込む。


「た、助かりました……」


「このような形でお命お助けいただけるとは」


「会長すいません……」


 柔らかさのない球体のためみんなが真ん中に寄るような感じになって近い。

 ユディットにしてもニノサンにしても今後騎士を続けるつもりなら泳ぎの練習は必須だなとジは思った。


 まあ助けに来てくれたのだから貸し借りなしだと文句は言わないでおこう。


「あのカエルヤロウめぇ……」


 ウィリアにしてもジにしてもあの変なカエルっぽい魔物にやられた。

 きっと遠くから機会を伺っていたに違いない。


 雑多な戦いの最中に細くて素早い舌を感知してかわすのは難しい。

 まだまだ修行不足だ。


「みんなケガは?」


「大丈夫です」


「多少海水を飲んだ他にケガはありません」


「私もです、会長」


 それぞれ体の調子をチェックする。

 下は海だったし落ちてもケガはなかった。


 濡れて服が少し重たい以外に不都合なこともない。

 外から音がする。


 それは波がぶつかる音だけではない。

 魔物が攻撃を加えてフィオスを突き破ろうとしているのだ。


 しかし魔物たちの攻撃を考えるとフィオスは突き破れまい。

 パワーは高いが所詮人よりも強いぐらいの物理的な打撃攻撃に過ぎない。


 アダマンタイトにまでなれるフィオスを突き破れるはずがないのである。

 守られているのはいいのだけど外の状況が分からない。


 空気の関係もあるのでこのまま閉じこもってもいられない。

 それに下手に長時間こもっていると流されてしまって漂流する可能性がある。


「ニノサン、船に張っていたようなバリア張れるか?」


「もちろんです!」


「じゃあ頼む」


 少なくとも周りの状況は確認しなきゃならない。

 ニノサンにバリアを張ってもらってフィオスに金属化を解いてもらう。


「うわぁ……」


「マズイなこれ」


 フィオスは海の中に沈んでいた。

 波が激しいせいで沈み切らずに海中を漂っているが周りには魔物が泳いでいた。


 船上に出てくるものが全てではなく海中にもまだ魔物が多くいたのである。

 さらに船は近くに見えるがもう少し離されてしまっている。


 何体かの魔物がジたちの様子を伺っている。

 フィオスを突き破れないことを察して持久戦に持ち込もうというのだ。


 こうなると分が悪いのはジたちの方である。


「せめて海上に上がれないと空気が長い時間持たない……」


「……それはお任せください」


「ウィリアさん?」


「ズラン、おいで」


 ウィリアが自分の魔獣を呼び出した。

 ウィリアの手のひらの上にちょこんと座るのは女の子のような魔獣。


 アルラウネという植物系の魔物であった。

 植物を操る力を有しており、自身も人に似た姿をしているが植物の特性を備えている。


 髪も美しい緑色に見えるがこれも髪ではなく細いツタであるらしい。

 アルラウネのズランはウィリアの手のひらの上に立ち上がるとどこへともなく頭を下げた。


 みんなは訳がわからなそうにしているがジだけは例のやつ、フィオスに頭を下げたのだなと気づいていた。

 そしてズランは興味ありげに自分を覗き込む男どもに穏やかに手を振って挨拶した。


 アルラウネも植物の種類や個体差によって大きさが異なる。

 ズランもウィリアが小さくしているのではなくて元からこのサイズであった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 泳げない且つ代案があるわけでもなのに 飛び込んで足手まといになるのが二人もいるのは酷いなあと
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