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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第七章

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海に落ち3

「ユディット、ニノサン!」


 誰よりも早く走り出したジ。


「私にお任せを!」


 加速したニノサンはジを追い越してウィリアを追う。


「邪魔だ!」


 しかし魔物はそんなニノサンの前に立ちはだかるように割り込んできた。


「ユディット、道を開けろ!」


「分かりました!」


 ジが少し速度を落としてユディットが前に出る。

 ニノサンが相手しているのとは逆の方に向かい、魔物と戦う。


 その隙間を縫ってジが駆け抜ける。

 ジには見えている。


 魔力を感知して魔物の動きを先読みして攻撃を避ける。


「ウィリアさんに手出すな」


 一気に走り抜けたジは引き寄せたウィリアに手を伸ばしていた魔物の首を一太刀で跳ね飛ばした。


「ジ君、後ろです!」


「しまっ……!」


 ウィリアを助けることに焦ってその後の動きを考えることをおろそかにしてしまった。

 ジの後ろに迫った魔物が拳を振り上げていた。


 回避はできない。


「安全なところで大人しくしていろと言ったつもりだったんだがな」


 かわせないのなら直撃は防ぐ。

 盾を構えて衝撃に備えたがいつまで経っても衝撃はこない。


 拳を振り上げた体勢のまま魔物は縦に2つに切り裂かれて床に倒れた。

 魔物のさらに後ろにはグルゼイの姿があった。


「師匠!」


「いうことを聞かない弟子だな」


「師匠が来てくれるって信じてましたから」


「またそうして都合のいいことを。


 相手の勢いは衰えてきている。

 このまま油断せずに戦うんだ」


「はいっ!」


 船に上がってくる魔物の数は減った。

 しかし状況は未だ苦しい。


 グルゼイやバルダーは強者である。

 一般的な冒険者や異端審問官は実力の程度に差はあれどすば抜けた実力を持ってはいない。


 魔物は総合的な強さで見るとだいぶ強めな魔物で、全体的には苦戦している。

 相手は再生力も高くて突っ込んでくる一方でこちらはケガ人が増え、ウィリアにしたように冒険者などを海に引きずり込んだりして人が減っていく。


「うっ!」


「ジ君!」


「ジ!」


 油断していたわけでもなかった。

 しかし残った魔物たちの動きが明らかに変わった。


 ただ殴りかかって噛み付くだけのような魔物だったのに戦い方にも少しの理性が見られ、連携の片鱗すら見えてきた。

 要するに戦うのが面倒になったのだ。


 互いをフォローするような動きを見せたりするので倒しにくくなってしまった。

 攻撃も同時に攻撃してきたりと油断ならない。


 左右から挟み込むように攻撃してきた魔物の攻撃をかわしたジの首に魔物の舌が巻き付いた。

 攻撃をかわした直後、細長くて相手の隙間から飛んできた舌にジは気づけなかった。


 船の手すりに乗った魔物がニヤリと笑ったように見えた。

 そのまま魔物は手すりから海に落ちていき、ジは急速に引っ張られる。


 ウィリアがジの服を咄嗟に掴むが一緒に引きずられて止められない。


「邪魔だ!」


 グルゼイが一気に魔物を切り裂いて走る。


「ヤバい!」


 苦しさに顔を歪ませたジは引きずられて迫ってくる手すりに気づいて盾を構えた。

 手すりにぶつかって止まれば良かったのだけど勢いが良すぎて手すりが壊れてしまった。


 荒れて黒くすら見えている海が眼下に広がる。


「と、止まらない!」


「ウィリア、そのまま放すなよ!」


 ウィリアの力でも止まらず2人共々海に落ちそうになる。


 追いついたグルゼイが手を伸ばしてウィリアの鎧を掴み、手すりに足をかけて何とか海への落下を回避させようとする。

 しかしジは思った。


 放してくれ、と。

 ジの首には魔物の舌が巻き付いている。


 引き上げてくれようとするのはいいけれど海に落ちて引っ張る魔物と引き上げようとするグルゼイに挟まれたジがどうなっているのか言うまでもない。

 首が締まっている。


 飛びかける意識の中で何とかジは腕を動かした。

 魔物の舌を剣で切り裂く。


「グルゼイ、横だ!」


「グゥッ!」


 ようやく呼吸ができるようになって息を大きく吸い込んだジだったがガクンと変に揺れたと思ったら海が迫ってきた。

 ウィリアの鎧を掴んでいたグルゼイを魔物が横から殴りつけた。


 雨なのも悪かった。

 ウィリアの鎧が濡れていて手が滑って手から離れてしまった。


「ジ!」


「会長!」


「主人!」


「おいっ……馬鹿ども!」


 ジが海に落下した。

 それを見てユディットとニノサンがジを助けようとして後を追いかけるように海に飛び込んでいく。


「ブハッ!


 ……ウィリアさん!」


「くっ……た、助けて!」


 泳げないでもないウィリアだが武装している状態で泳いだことはない。

 波も高く鎧が重くて泳げるウィリアであっても溺れかけていた。


「こっちに!」


 ジが何とか泳いでウィリアに近づいて体を支えようとする。


「魔物です!」


 ジの支えで何とか溺れなさそうになったが水の中を近づいてくる魔物の姿が見えた。

 船に上がったのが全てはなかったのだ。


 逆の方から挟み込んで2体が近づいてくる。

 1体でも対処が難しいのに水の中でウィリアを支えながら2体同時ではとても戦えない。


 こんなところで、という思いが一瞬ジの頭をよぎった。

 海に沈めばきっと遺体も見つからない。


「会長に近づくな!」


「主人、今私が参ります!」


 せめて船の上ならと思ったところユディットとニノサンの声が聞こえた。

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