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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第七章

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驚きの再会5

 謎の魔物は戦った本人たちですら分からない。

 ビグマ商会の船は規模としては中程度。


 決して大きくはないが小さいとも言えない。

 しかし船を守るための戦力はしっかりと揃えている方であった。


 なのにこの有様。


「最近起きている船の行方不明事件ももしかしたら謎の魔物のせいかもしれないな」


 漁業ギルドの人たちは今回のことを受けて渋い顔をしていた。

 以前にソコの父親の話に聞いたような船の失踪に関して繋がりがあるのではないかと疑っていた。


 中規模商船が耐えられないレベルの襲撃にあったなら多くの漁船は耐えられない。

 マストすらへし折られてしまう力があるなら船も残らなかったことも納得はできる。


 話し合いは続いてビグマ商会の船は諦めることになった。

 マストは海に沈んでしまい修復は不可能でケガ人も重傷者を中心に治療を行なって未だに病床に伏せている人も多くてそちらの船に気を回している余裕はないからである。


 ケガ人や運び込める商品などを救助船の方に運んで船はその場に停留させておく。

 もっと陸地から遠かったら魔物の棲家になる前に沈めてしまうのこともあるが陸地から近いのでのちに回収するつもりなのである。


「遠くに見える空の調子も悪い。


 早めにケガ人を移動させて早めに出発した方がいいな」


 救助船の船長が穏やかな空に見えるが遠くに黒い雲が見えると言う。

 このような時は大体海が荒れる。


 せめてケガ人は海が荒れる前に運ばなきゃ面倒なことになる。

 相手の正体も分からない以上は話し合ってもしょうがないので早速ケガ人を移すことになった。


 動ける人でも船に渡した板を渡るのはちょっと大変。

 慎重に動ける人を補助しながら船を移動してもらい、動けない人は担架を作って力のある人が運び込む。


 そうしている間に本当にいつしか空は雲が覆い始めて、波が高くなってきた。

 海の人の空を読む力は予言にも似ている。


 揺れがひどくなってきたがその前にケガ人はどうにか運び込めた。

 次に荷物だけど流石に全部を運び込めはしない。


 さらに雨が降り出して遠くで動物が唸るような雷の音がし始めた。

 予定よりも少なく、半分ほどの荷物は諦めることにした。


 波が高くて荷物を移動させるのにも危険が大きくなったからだ。

 そうして救助には成功して出発することになった。


「うぅ……」


「大丈夫か?」


「大丈夫じゃないです……」


 揺れがひどくなったので酔いやすいユディットはあっという間にやられてしまった。

 しかし今甲板に出ると危険なので船室の隅で耐えるしかない。


 ケガ人たちと同じくらいに青い顔をしているユディットは結構辛そうである。


「情けないですね」


 そんな様子を見てニノサンが首を振る。

 ユディットに比べてニノサンは平気そうだ。


「クソッ……」


「何言ってやがる。


 お前さんだって船に乗り始めた時はずっと吐いてたじゃねえか」


「それは!


 秘密にしてくださいよ!」


 ユディットとニノサンの会話を聞いて近くにいた船員が笑う。

 ニノサンだって最初から船が平気なわけではなかった。


 船に乗り始めた時はユディットのようにすぐに船酔いしてしまい、そのためにも早く船を降りたかったのである。

 何度も吐いて船での生活を続けるうちにようやく船酔いもしなくなったのだ。


「……ともかく今は船酔いしていないことは確かですしね」


 意外とユディットとニノサンも似たようなところがあるのかもしれない。

 経緯は違うがジのことを尊敬していて仕えることを誓っている。


 真っ直ぐな性格をしているところも似ているし、似たようなところがあるからこそ今は馬が合わないのかもしれないと思った。

 だが互いを認め合えれば案外意気投合することもある。


 ひとまずのところジには新たなる騎士(仮)が増えたのであった。

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