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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第七章

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旧友5

「そうだろ?


 なんでも新鮮が1番美味いからな。

 マーマンも見た目は悪いがこうして食ってみると美味いもんだ。


 それにこの調味料だよ。

 これはあんまり入ってくるもんじゃないからあれだけどな」


「ほんと美味しいです!」


「気に入ってもらえてよかった」


「……これどこに売ってます?」


 切り分けてもらった分をあっという間に食べ切ってしまった。

 気になったのは船員が持っている調味料。


 黒い液状の調味料でそれだけ舐めてみるとちょっとしょっぱい。


「これか?


 ここからだとかなり離れた国で作ってるもんで遠方と貿易する大規模な商会なら時々置いてることもある」


「へぇ……」


 タとケが喜びそう。

 探してみようかと思った。


「それは食べないんですか?」


「ここらは筋が多くてな。

 食べると感触が悪い。


 食べることもあるが今はこんだけマーマンがあるんだ、選り好みしてもバチは当たらないさ」


 切った身の一部をよけている。

 他のところと変わらないのにどうしてだろうと理由を聞いて納得した。


 よくみるとその部分には白い筋が多い。

 これが歯触りを悪くするのだと言う。


「これもらっても良いですか?」


「もちろん好きなだけ持っていくといいが……どうするんだ?」


「へへっ、フィオス」


 ジはフィオスを呼び出す。

 そして山と積まれる筋ばった身の横に置く。


 フィオスはマーマンの身に乗っかると体の中に取り込んで食べ始める。


「おっ、スライム……


 こりゃ何してんだ?」


「食べてるんです」


 フィオスの体の中でじわじわとマーマンの身が溶けていく。

 たとえ筋張っていて食べにくくてもフィオスには関係ない。


「ふぅん、不思議なもんだな」


 あっという間に筋張ったマーマンの身が無くなった。


「ほら、こっちも食べるか?


 たくさんあるから」


 全員が大きな切り身をフィオスに投げる。

 ぺちょりとフィオスの上に落ちてそのまま切り身が取り込まれる。


 美味しかったのかフィオスはぴょんぴょんと跳ねる。


「スライムが魔獣か……」


 そしてそんなジとフィオスの様子を離れたところでグルゼイとバルダーが見ていた。


「魔力が少ないことは惜しいが他のことは素晴らしいな。


 人柄も良く、お前さんにはもったいないぐらいだ」


 バルダーは朗らかに笑う。

 勝負はうやむやになってしまったけれど諦めずに戦う姿勢も高く評価している。


「そうだな。


 俺自身もそう思う時がある」


 むしろスライムだからかもしれないとグルゼイは思う。

 魔力が少ないからその中で出来ることをやろうと必死に努力している。


 才能もあるが努力することができるからジは強くなれる。

 魔力が少なくても出来る剣術だからグルゼイの弟子としてはふさわしいが人間性でいえば自分なんかよりも優れていると認めざるを得ない。


「それよりも腕はどうしたんだ?


 いい腕の神官だっていただろう?」


「お前さんと別れた後それらしい情報を掴んでな」


「なんだと?」


「結果的に……それは罠だった。


 魔神崇拝者ども、子供を生贄にして悪魔を呼び出しおってな。


 その時に腕を失ったんだ」


 バルダーは遠く水平線に目を向ける。

 今でもあの時の凄惨な光景が目に浮かぶ。


「戦いは激しくてとてもじゃないが腕の再生にまで手が回らなかったんだ。


 時間が経ってしまうと欠損は治せんからな。

 ……私の腕を後回しにしても救えた命は多くなかったが」


 治療魔法も万能ではない。

 単純なケガは時間が経っても治すことができるのだが体が欠損してしまうと事情が変わる。


 失ってからすぐに治し始めれば欠損部位を再生することもできる。

 しかし時間が経ってしまうと再生ではなく傷が塞がる方向で治り始めてしまい、欠損の再生ができなくなる。


 方法がないわけではないが起きた出来事を忘れないためにバルダーは腕をそのままにした。


「その時の唯一の生き残りがウィリアという子でな。


 会ったか?」


「ああ、あの子か。


 ずいぶんと良い子だったな」


「……今では私の娘みたいなものだ」


「人に対して色々言っていたがあんたも変わったもんだな」


「奪われたことに恨みを抱いて戦い続けていたが久しぶりに触れた小さな命に気づかされるものがあった。


 それに育てたのは私というよりも世話好きなオババどもだ」


 そう言いながら甲板で風になびく髪を押さえるウィリアを見るバルダーの目は優しいとグルゼイは思った。

 ウィリアはバルダーの視線に気づくと優しく笑って手を振っている。


「今更恥ずかしがることもないだろ。


 俺も弟子を持って子を持つことがどういうことなのか少し理解をした。


 そして悪くないと思う自分がいることも否定はしない」


「……変わったな、お互い。


 魔神崇拝者、そして悪魔に対してただ黒い恨みを燃やしていたのにこんな会話をすることになるとは」


「恨みは変わらないさ。


 ただ優しさも思い出し、恨みと優しさ両方のために戦えるようになったんだ」


「いつから詩人の真似事も始めたんだ」


「口から漏れてくる言葉が詩になるのなら俺は生来の詩人ということだ」


「お前さんが詩人なら私は歌でも歌おうか」


「やめろ。


 耳が腐る」


「子守唄だけはウィリアにも不評なんだよな……」


「だとしたら教育は成功しているな」

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