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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第七章

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異端審問官と師匠と泥棒2

「輸送については確保してあるのですか?」


「もちろんそちらについても抜かりはありません。


 通常の輸送も大幅に数を増やしていますし今回はフィオス商会協力の元で高速輸送の手段も確保しています」


「フィオス商会と言いますと……」


「こちらのジ君の商会です。


 ただここにいるだけじゃなく立派な関係者であるのです」


 高速輸送の手段とはジの馬車を使うことである。

 さらにそれに加えて馬車を引くのに馬ではなく大型の魔獣を登用していた。


 馬も魔物の一部で魔力が少なく大人しいものを何世代にも渡って繁殖させて攻撃性がなくなったものである。

 馬は人よりもはるかに早くて体力もあるが魔力は少なく、今では大型の魔物の方が早くて持続力もある。


 引くのに向き不向きはあるが例えばライナスのサンダーライトタイガーのセントスは馬よりも体力も力もある。

 重たい荷物を載せた馬車を引かせれば同じ時間でも馬より長距離を移動できる。


 馬車が壊れないか心配はするけど商会保有の物以外は結局買い取りになったので壊れてもジにはもう関わることでもないのだけど。


「あなたすごいのね」


 役立つ商品がある。

 物の売り買いだけでなく自分で商品を生み出して、それが役に立っているなど敬意を払うに値する。


「ありがとうございます」


 褒められると素直に嬉しい。


「海の状況も悪くないので早ければ数日以内には荷物が到着すると思います」


「そうですか。


 品物を置いておく倉庫も借りてありますので置き場所も大丈夫です」


 細かいところの合意がなされればあとは早い。

 先回りしてすでに準備をすましているフェッツの手際の良さにジも舌を巻く。


 交渉役が決まるまで間に必要なものを考えてリストアップし、交渉役に決まったらすぐに鳥の魔獣を使った高速郵便でボージェナルにある支部に指示を出していた。

 話に聞く限り輸送されてくる量が多そうだったけれどそれも想定の範囲内ではある。


 大体の交渉が終わり、荷下ろしした荷物を運ぶ先である倉庫を確認しにいくことになった。


「大人の会話なんて暇で疲れたでしょ?


 これあげる」


 リアイは懐から飴を取り出してジの手に置いた。


「ありがとうございます」


「私も経験だって商談の場に連れて行かれたことあるけど退屈で、真面目に話聞いてると疲れて、真剣な大人の声ってなんだか眠くなってくるんだよね。


 ジ君……会長は偉いね」


「君でいいですよ」


 一応今は商談の交渉相手とも言えるジに対してどういった立場を取ればいいのかリアイは迷った。

 堅苦しいのは好きじゃない。


 砕けた態度のリアイで失礼だと思ったことも一度もないのでそのままでいい。

 口の中に飴玉を放り込んで転がす。


 流れの早い会話に頭は疲れたことは確かなので甘さが染みる。


「ジ君はお魚大丈夫?」


「……うーん、あまり食べたことがないので分かりません。


 今のところ好き嫌いはないのですけど」


 普通に好きですと答えそうになって踏み留まる。

 今の段階ではまだ魚は一般的ではない。


 貧民であったジが魚を食べる機会があってはおかしい。

 お魚が好きと答える理由が付けられないのである。


「そっかー、それもそうだよね……」


 リアイが心配していることはわかる。

 魚の干物が受け入れられるかどうかが心配なのだ。


 ジは飴玉を口の中で転がしながら記憶を掘り起こす。

 食料不足になってその対策として輸入した魚が広く出回り始めた。


 最初は確かにあまり受け入れられなかったような記憶がある。

 食べ方も浸透しておらず他国の支援だからという理由で敬遠する人もいた。


 それも空腹が頂点に達すると人々は魚を食べ始めて受け入れられていった。

 その後は魔物の研究が進んで冷蔵冷凍技術が発達すると保存のきく魚の干物がだけでなく生の魚も食べられるようにもなっていく。


「やっぱりあれですよね」


「あれ?」


「食べ方も広めなきゃいけないですよね。


 調理法とかの美味しい食べ方とか保存の仕方なんかも分かっていると受け入れやすい……なんですか?」


 ポッと出た意見。

 食べ方や良い調理方法がまだ分からなかったから受け入れがたかった側面はあると思う。


 ただ広く輸送して、さあ食べてくださいと言ってもこれまで食べてこなかった物で食べ方も分からない。

 軽く炙って食うだけでも美味いのでそうした食べ方を伝えるだけでも受け入れやすさは変わるはずと何となく口にした。


 雑談のつもりで口にした言葉だった。

 気づくとリアイだけでなくフェッツやギャルダヌもジのことを見ていてジは困惑した。


「なるほど……ただ輸送するだけはなくそうした啓発も必要かもしれませんね」


「普通に食べる我々からするとそうしたことは考えつきませんでした。


 フェッツ殿、食料の輸送だけでなく今ジ殿が言ったようなことを広めることもお願いできますか?」


「そうですね、正しい食べ方を広める方法も考えねばなりませんね。


 よければ調理方法などまとめていただけると助かります」


「貴族用や平民用など調理方法も調べておかねばなりませんね」


 フェッツとギャルダヌの眼光が商談の時のように鋭くなる。

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