王城に呼び出され3
重たい荷物を積んで高速で走っても他の馬車よりも平気であり、揺れないので御者をする人や引く馬にとっても衝撃も少ない。
荷馬車ではないが荷物が積みこめれば別にいい。
「さらに……長期間の冷蔵保存について特許を申請しましたね?」
「……はい」
ファフナが来てくれてパロモリ液の生産も増えた。
クトゥワやキーケックが色々試してくれているおかげでパロモリ液の実験についてもデータが揃ってきた。
商品として表に出してもいいぐらいにもなってきた。
かねてからレディーフレマンからケーキのための保冷容器を熱望されていた。
融通を利かせてくれていたレディーフレマンには感謝もしているのでパロモリ液を使った保冷容器を作って売ることにした。
ただ今回の保冷容器は正式な商品ではない。
パロモリボックスと名付けたこの商品をレディーフレマンが悪用するとも思えないけれど一応権利を保護するために特許として申請しておいた。
特に公開しないでほしいとは伝えていないので調べようと思えば調べられる。
「その技術もすぐに使えるようでしたら利用させていただきたいのです」
パロモリ液の技術そのものはだいぶ前にオランゼにお金を出してもらって登録した技術になる。
そちらの方は未だに非公開なので調べられなかった。
「馬車をお貸しするのはいいですが……」
商会で持っている馬車の数はそんなにない。
自分たちで使う分と工房の分はあるけれどムダに確保なんかしてもいない。
あとは引き渡し待ちのものや作っている途中のものがいくつかはある。
モンスターパニックの影響で引き渡しができなくて保管しているものがいくつか保管してある。
あとは細かい装飾などが必要で完成ではないものとかがあるがどれもお客様のものだ。
「今ある分全てお貸し……いや、こちらで買い取らせていただければと思います。
費用はお払い致しますしフィオス商会にご不利がないように購入予定の顧客にはこちらから説明をします。
……それにお望みでしたら運んできた食料を優先的にフィオス商会にもお渡しいたします」
「なるほど、お話は分かりました」
現在国の一大事である。
協力してほしいというならそれもやぶさかではない。
費用は払ってくれるし顧客に説明もしてくれるならジとしては文句もない。
「馬車、お貸ししましょう」
「本当ですか。
ありがとうございます」
「ただ食料はこちらに回さずとも困っている人に分けてあげください」
余計な欲を出すと身を滅ぼす。
食料の目処が立って輸送も出来るなら食料不足も大きく軽減される。
今のところ食料は足りているのだからさらに確保しようとするのは身勝手とも言える。
「なんと……ジさんは人ができていらっしゃる」
しかしシードンはジの深い配慮に感動している。
自分だって苦しいはずなのに困っている人に回してくれなど大人だってなかなか言えるものではない。
ジの食料事情を知らないがゆえにそう考えている。
たくさん食べ物抱えているんですとわざわざ説明する気もないのでニコリと微笑んでおく。
「細かい話も今のうちに詰めておきましょう。
もうすぐお昼ですのでお昼もご用意しておりますので」
シードンはすでに金額などの概算も出して分かりやすくまとめておいてくれていた。
こういう数字仕事はメリッサの役割だからメリッサを連れて来ればよかったなと思った。
提示額はこちらに対する諸経費や迷惑料なども含めて単純な馬車購入金額よりも高かったのでこれならメリッサから怒られることもないだろうととりあえず話は進めてしまった。
商会所有の馬車は貸し出して、それ以外引き渡し待ちの馬車や今作っているものも急ピッチで作って国で買い取ってくれることになった。
ついでに内側を加工してパロモリ液を塗って少しでも食料を長持ちさせるような工夫をすることも特許利用契約として行うことになった。
早く食料事情が何とかなってくれたらいいなと思いながら一国の宰相と食事を共にしたジであったのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
最近人の目に触れる機会も多くて様々なご意見を感想コメントにていただきます。
決してそうしたコメント無視しているわけではなく、ちゃんと向き合って作品の修正なりしていきたいのですが更新を優先していて、あまり時間も取れないのでしっかりと向き合う時間があまり取れないでいます。
少しずつでもコメントいただいたものを読んでより良い作品にしていきたいとは思っていますのでアイツ無視してんなとか思わないでくださると幸いです。
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本当にありがとうございます!
犬型大




