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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第二章

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騎士の誓い6

 であるならば治療はどうするのか。

 契約者本人に対する治療は無意味。いくら契約者を治療しても魔獣に魔力を持っていかれてしまえば同じことの繰り返しになる。


「治療薬はこれだ」


「これは……」


 ジが取り出したのは神殿印の高級ポーション。

 体が痛むだの理由をつけてパージヴェルにツケて買ったものである。


 ユディットもバカではないのでそれが何なのか分かっている。


「それでどうやって治療するんだ?」


 診療所で回復魔法をかけてもらっても一時的に回復しただけですぐに状態は元に戻ってしまった。

 ポーションを飲んでも回復魔法をかけるのと大して変わらない。


 悪いけどポーションでどうにか出来ると思えなかった。


「飲ませるんだ」


「それじゃあ……」


 治らない。ユディットが渋い顔をする。


「まあ聞け。ポーションは2本ある。


 1本はそのままシハラに飲んでもらうがもう1本はシハラの魔獣に飲んでもらう」


「魔獣に?」


 魔獣にポーションなどあまり聞いたことがない。

 怪訝そうな顔になるユディット。


「そんな顔するなよ。

 このまま何もせず弟が弱ってくのを見ているつもりか?」


「うっ……それはそうだが」


「別にポーションならこれ以上悪くなるものでもない。

 他に方法がないなら試してみないか?」


「……ふぅ、分かった。


 治らなかったら覚えていろよ」


 まずはシハラからである。

 魔獣がいないことにはポーションを飲ませることもできない。


 シハラが魔獣を呼び出せるように回復させる。

 ユディットにポーションを渡してシハラに飲ませるように指示する。


「シハラ、起きれるか?


 これを飲むんだ」


 ユディットがシハラの上半身を抱き起こしてポーションを飲ませる。

 神殿印のポーションは色々なところが出しているポーションの中でも特に高価で効果がある。


 神官が丹念に作るポーションは神聖力も込められていて苦味が少ないのに素早く効く。


 それでも子供には苦いのかシハラが一瞬顔をしかめる。

 しかし効果はちゃんとあって、すぐにポーションが効き始めてシハラの顔色が良くなっていく。


 呼吸が落ち着いてきてシハラの目の焦点があってくる。


「兄ちゃん?」


 シハラが潤んだ瞳でユディットを見上げる。


「どうだ?

 体は大丈夫か?」


「うーん、あんまり良くないかな」


 心配するようなユディットに対して弱々しくシハラが笑ってみせる。

 あんまりどころでなく体調は悪いのだがシハラなりに兄に気を使っての返事である。


「はじめまして、シハラ君」


「はじめまして……お兄ちゃんは誰?」


「俺はジって言うんだけど、君の魔獣を見せてほしいんだ。いいかな?」


「うん、いいよ。


 おいで、カムリ」


 部屋の中に風が吹く。


「おおっ、これは」


 シハラに呼び出されたのは大きな鳥。

 流れるような冠羽と長い尾羽が特徴的で全身が真っ白で翼にやや灰色のカラー混じっている。


 人よりも大きいサイズの鳥は心配するような視線をシハラに向けた。


 タイハクエナガ。

 ジも全ての魔物を知っているわけでもないし地域や属性で名前が変わるものもあるので到底把握はできないのでどんな鳥なのか知りもしないが、見てわかるほど鳥類種の中でも体が大きいこの鳥は間違いなく使える方だ。


「……おっと、シハラ君、これを飲むように君の魔獣に伝えてくれないか?」


「えっと、うん」


 シハラにポーションのビンを渡す。

 カムリが久々に顔色のいいシハラの顔を覗き込む。


「これ、飲んでほしいって」


 シハラがポーションの蓋を開けてカムリに差し出すと一瞬ためらったがポーションのビンを咥えて上を向く。

 中のポーションがカムリの喉に流れ込んでいき、慣れない苦さにカムリの冠羽がしょんぼりする。


 怪我に対してポーションがもたらす効果は治療魔法とほとんど同じである。

 ポーションの良い点は持ち運びができることや技術に関係なく一定の回復効果を得られるところにある。


 怪我などの治癒の早さは一般的に治癒魔法の方が早い。


 どちらにしろだ、怪我を治すものだとみんな思っているし、それで間違ってもない。


 しかしポーションが治癒魔法と異なる点の1つに魔力回復効果というものがある。


 治癒魔法は人が発動させるものなので治癒に魔力が使われて他に効果を持たないし怪我がない人には使えないがポーションは怪我がなくても使える。

 魔力回復効果は特に怪我がない場合に効果を発揮して魔力を回復させてくれる。


 ジはカムリの魔力を回復させようと言うのだ。

 マジックポーションという魔力回復専門薬もあるのだが通常のポーションよりも高価だし、購入する理由が作れなくて諦めた。


 神殿印の上級ポーションなら魔力回復効果もそれなりなので期待できる。


 不安はあるけれどカムリの魔力がシハラから逆流しない程度に回復することを願うしかないのである。

 仮に足りなくても病状の回復には期待できるので大きなクモに襲われる心配はないと思いたい。


「後はしばらく魔獣を出しっぱなしにして様子を見ていくしかない」


 魔力を持っていかれるかどうか数日見てみないと分からない。

 魔石状態にしないで魔獣の回復を促しシハラの変化を見るしか状態を把握する方法がない。


 ダメだったらもう2本自腹を切ってポーションを買ってくれば良い。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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