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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第六章

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踊り踊って、巡り巡って3

 まあ暴れたりする客や泥棒が出たなんて言われるよりはいいけれども面倒な客といえば面倒な客である。


「アユインも久しぶり……アユイン?」


 久々に会ったアユイン。

 リンデランなんかとは会うようだけどジとはアカデミーでもタイミングが合わなくてなかなか会う機会がなかった。


 なんだかむくれたような顔をしたアユインはジのことを睨みつけるような目をしている。

 何か怒らせるようなことをした覚えもないジはなんでそんな視線を向けられるのかわからなくて困惑する。


「な、なんでそんな目しているんだよ?」


「分かりませんか?」


 やっぱり怒っている。

 怒り方がちょっと可愛いと思うけど怒っている原因が全く分からない。


「……ごめん、教えてくれ」


 下手な予想を口にするより素直に教えを乞うた方が傷は小さくて済むだろう。


「私たち友達ですよね?」


「う、うん」


「じゃあどうして呼んでくださらなかったのですか?」


「な、何に?」


「ジ君のお誕生日や双子さんのお誕生日のパーティーにです!」


 アユインが怒っている原因は明確。

 お呼ばれしなかったから。


 ジの誕生日(正確には誕生日じゃないけど)にもタとケの誕生日にもアユインはいなかった。

 リンデランやウルシュナと仲がいいアユインはポロッとその話を聞いてしまった。


 そんなこと聞いてないとアユインはなった。

 友達なら呼んでくれてもいいじゃないか、どうして自分のことは無視したのかと怒っていた。


「それは……」


 別にアユインのことを意地悪したくて意図して省いたのでもない。

 なんというかアユインはそうしたことの境界線上に存在している関係性なのである。


 リンデランとウルシュナは朝のゴミ掃除の時に会うしアカデミーでも時々会う。

 それ以前からの関係もあってジの中では親しい女の子である。


 その点アユインはどうか。

 同じ死線をくぐり抜けて友達であるとは思うけど関係性はちょっと微妙なところがある。


 アカデミーでもそんなに会わないし仲を深める機会も多くない。

 それにアユインは何を隠そう国王の娘、曲がりなしにもお姫様である。


 気軽に呼んでいいものかジにも判断ができないのだ。

 直接会うことも多いと話しながら判断ができるけれどわざわざ会いに行って貧民街にアユインを呼ぶのはできなかった。


 子供らしくない変な配慮や微妙な関係性のためにアユインを呼ばなかったのである。


「私が王女だからですか?」


「まあ……そうしたこともあるし、なかなか会わなかったこともぉ……あるし」


「リンデランとウルシュナとは毎朝会ってるそうですね」


「毎朝ではないけど……」


 プリプリと怒るアユインはジに詰め寄る。

 普段大人しい娘の珍しい姿を見たものだと王様は目を細めて口を出さない。


「私だけのけ者ですか?」


「いやそんなつもりじゃ」


「ムー……ムーッ!」


「い、いふぁいよ」


 こうした時どうしたらいいのか分からない。

 ジもそうだけどアユインもどんな風に怒っていいのか分からないのだ。


 普段から怒ることの少ないアユイン。

 同年代の男の子に怒ったことなんてまずなく、でも抑えきれなくてジのほっぺたをつねって引っ張った。


 大人しく受け入れるジ。

 確かにこれはジが悪かった。


「これアユイン、許して差し上げなさい」


「痛い……」


 意外と容赦なく引っ張る。

 赤くなった頬をさする。


「ムゥー!」


 それでもアユインの怒りは収まらない。


「どうしたら許してくれる?」


「……次は絶対に呼んでください!


 あとは私の誕生日も先にあるのですが私とも踊ってください」


「え?」


 実はリンデランの誕生日パーティーの時にアユインも来ていた。

 目立たないようにタイミングをずらしてひっそりとジのダンスが終わった後に着いたので入れ違いになっていた。


 ジが変に目立ってしまっていたので挨拶もできなかった。

 だけどリンデランがジとダンスを踊ったことは聞いていた。


「やっぱり嫌ですか?」


 シュンとするアユイン。


「い、いや、いいぞ!


 アユインがそう望むなら俺と踊ってくれ。


 次そういったことをする時は呼ぶしさ」


 アユインが悲しそうな顔をすると王様の顔が怖くなる。

 1回踊ったのなら2回も3回も変わらない。


「本当ですか?


 なら許してあげます」


「そ、そう……」


 すぐに笑顔になるアユイン。

 女の子って難しい。


「なんなら近いうちにうちに来なよ」


「おい、親の前でナンパか?」


「いやいや、そんなんじゃないですよ。


 リンデランやウルシュナと一緒にくるといい。


 紹介したい人がいるんだ」


「む……まあ友達と一緒ならいいだろう」


 リンデランとウルシュナのことは知っている。

 その2人と一緒なら周りにも護衛がいるだろうし安心である。


「ふぅ……それで何の用ですか?」


 わざわざアユインの不満をぶつけにきたのではないだろう。


「私の用事としては2つある」


「2つもですか?」


「1つは先日のモンスターパニックにおける変異体の魔物の件だ」


「ああ、そういえばそんなことありましたね」


「そんなこととはな。


 功績は聞いている。

 君がいなければもっと被害が出るところだったそうだな。


 報告書に君の名前を見た時にどれほど驚いたことか……


 あまり人を褒めることも少ない赤牙騎士団のリダヘーラが報告書で君のことを褒めていたよ」


 モンスターパニックによって生まれた特殊個体の討伐は冒険者なら冒険者ギルドから褒賞が出ていてもおかしくない。

 今回は騎士が担当し、表向きは騎士が倒したことになっているがジの活躍は大きなものである。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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