母の愛9
もしかしたら頼りにする以上の思いもあるかもしれないと思った。
「これを受け取ってちょうだい」
ファフナはジに小さい袋を渡した。
手にかかる重み、ジャラリとした音、中身が何なのか確かめる前に気づいた。
「これは……受け取れません」
「いいのよ。
年寄ると使うこともなくなるわ。
いつか元気だったら……少しでもと思っていたの」
ファフナが渡したのはお金。
このような場所にあって、しかも足の悪い女性がお金を貯めるのは容易いことではない。
手にかかる重みよりも重たいお金であるはずだ。
「私に出来るのはこれぐらいだから……」
「そんなことはないですよ」
「ありがとう、あなたは優しいのね」
「いえいえ。
ファフナさんにも出来ることがありますよ」
「……どうやら本気のようね?」
「本当はこっちが最初の目的だったんですよ」
「何かしら?」
「ファフナさん、ファイヤーリザードがあなたの魔獣ですね?」
そう、これが目的だった。
クトゥワが整理してくれた名簿によるとこの貧民街のファフナという女性がだいぶ昔にファイヤーリザードを登録していた。
そのためにファイヤーリザードの契約者をスカウトに来た。
だからこの貧民街に来たのであってメインの用事は実はこっちだった。
「そうですよ。
それがどうかしましたか?」
「実は俺、商会をやっていまして。
魔物の能力を生かした商品を開発して販売しています。
今はファイヤーリザードの能力を活かした商品を開発してましてファイヤーリザードの力が欲しいんです」
「ファイヤーリザードの?
便利な子だけどそんなに特別なことが出来るものでもないわよ?」
「それが出来るんですよ。
ご説明したいところですが中々説明できる範囲にも限りがありまして……
ですがちゃんと契約書も交わしてお給料もお支払いしますのでうちで働きませんか?」
「ええと……」
悩むファフナ。
子供がいきなり来て商会をやっていて魔獣を使った商品のために雇いたいと言われてもにわかには信じがたい。
タとケが信頼しているのでジが騙すような人ではないがファフナももうそんな話に飛びつく年でもない。
ジはできる限りの説明をする。
ちゃんとギルドに認められた商会があってそこで雇うこと。
ジたちの住む貧民街の方に住居を用意することなどはもちろんである。
「おばあちゃん……」
「一緒に住めるの?」
しかしどんなジの言葉よりもどんな魅力的な条件よりも、一緒に来てほしいと見上げるタとケの潤んだ瞳にファフナはどうしても勝つことはできなかった。
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