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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第五章

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ケーキ、お持ち帰りで1

「う、噂に違わぬ冷え込み具合ですね……」


 箱を抱えた不思議な少年が店に来た。

 追い返すべきか一瞬迷ったけれどもし貴族の子息だった場合後が怖い。


 もちろんその箱を抱えた少年とはジである。

 メリッサを連れ立ってきているのはレディーフレマンである。


 店名がレディーフレマンであり、予約の取れない人気店だ。


「はじめまして。


 フィオス商会のジと申します」


「同じくメリッサと申します」


「ええと……ご予約のお客様ですか?」


 そんなお客の予約入ってないなと思うけど一応聞いておく。


「いいえ、店長のレディーフレマンはいらっしゃいますか?」


「店長ですか?


 えっと……」


「どうかしましたか?」


 怪しい子供。

 商会の名前を名乗っているが本当かどうかも信じられない。


 そもそも商会が何の用で来るのだ。

 店長のフレマンを呼ぶべきか店員が困惑した表情を浮かべる。


 そうしているとフレマンが店の奥から出てきた。

 この時間に新しく来る予約客はいなかったはずなのに誰かが来たので気になった。


「はじめまして、レディーフレマン。


 私はフィオス商会の商会長をやらせてもらっています、ジと申します」


 箱を持ったままペコリと頭を下げる。

 商会の名前を聞いてフレマンがピクリと反応する。


「これは丁寧に……


 私はハシリアス・フレマン。

 フレマンとお呼びください。


 フィオス商会と言いますと……あの?」


 フレマンも貴族。

 客商売をしていくためにはトレンドを押さえておく必要がある。


 ということでフィオス商会のことは当然知っていた。

 彗星の如く現れて貴族の話題をかっさらっていった商会でフレマンも遅れながら馬車購入の予約をしていた。


 商会長が子供であることは聞き及んでいた。

 中々可愛い顔した子供でとても商会長をやっているとは思えないと噂になっている。


 さらに子供なためか本人には滅多に会えず、貴族でもないので約束も取り付けられない。

 馬車の予約が遅れたからと権力でなんとか予約を前倒しにしたい人もヤキモキしているなんて話もあった。


 フィオス商会はちゃんと登録された商会だしギルド長の後援まである。

 詐称すれば逮捕までされるのでいくら子供といえどこんな場面でウソをつくはずがない。


「あの、がどのかはわかりませんがレディーフレマンの馬車はもう少しお待ちいただく必要があるかもしれないことは確かです」


「……馬車が出来上がること、心待ちにしております」


 貴族はかなりの人数が馬車を買っているとはいえ、フレマンが馬車を予約しているかどうかは関係者以外には分からないはず。

 買ったか買ってないかは2択になるけど待たなきゃいけないことまで言われると疑いようもない。


「馬車について……ではなさそうですね」


 何か馬車について噂が回っていればフレマンの耳にも届く。

 ジ本人が動いていればなおさらだ。


 しかし馬車についての話はほめそやすか待ち時間を愚痴る声しか聞こえない。

 ならばなぜフィオス商会を名乗ってフレマンに会いに来たのか。


「そうですね……ここではなんですから落ち着いて話せる場所はありませんか?」


「そうですね、奥の席はいかがですか?」


「ええ、いいですね」


 奥まっていて見えにくい席。

 先ほどお客が帰ったばかりだし次の予約は他に空いている席で事足りる。


 まずジと友好的に話すことが大事だとフレマンは思った。


「それでジさん、本日はどのようなご用件でご来店いただいたのでしょうか?」


 子供ではなく一商会長として向かい合う。

 目の奥にドキリとするような知性が見え隠れしているような気がしたからだ。


「簡単な話です。


 ケーキをお持ち帰りしたくて」


「…………ご存知ではないようですが当店ではお持ち帰りはやっておりません」


 間違いだったかとガッカリする。

 過去様々な人が持ち帰りを望んだけれどフレマンはただの一度たりとて許可したことはない。


 国王が娘のためにと使者を送ってきたことがあったけれどそれも全て断った。

 店を貸し切りにしてもいいから直接おいでくださいと。


「もちろんそれは知っています」


「なら……」


「ただ物事には理由があります」


「といいますと?」


「レディーフレマンは意識も一流でらっしゃる。


 自分の作り出すケーキのために一切の妥協を許さないその姿勢は尊敬に値します」


「褒めたところで何も出ませんよ」


 真っ直ぐに目を見てそう言われるとくすぐったい気持ちはあるけれどそれで情にほだされるフレマンではない。


「問題はやはりケーキ、ですよね?


 少しでも温度が上がるとクリームが溶け始めて本来の味があっという間に損なわれてしまう」


「その通りです。


 お客様にはご不便をおかけしていますがこうして店を冷やしているのもそのためです」


「もし、それを解決できるとしたらどうでしょうか?」


「……何をおっしゃりたいのかよく分かりません」


「俺が訳も分からない箱を持ってきていることには当然お気づきでしょう。


 多少レディーフレマンのご協力は必要ですがこの箱がレディーフレマンの問題を解決してくれます」


 自信たっぷりに箱をポンポンと叩くジ。

 ケーキを持ち帰りたくてヘコヘコとする他の商人たちとは違った雰囲気をフレマンはジに感じていた。


 ーーーーー

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