6フィオス、百人力2
こう寒くなってきたら火が使えるといいなと思うけどどの属性でもちょっとしか使えないしどの属性でも使いようだ。
魔力が増えたところで少量なので魔法を使って何かすることはそうないけどやっぱり体に魔力がある感じというのは頼もしいものである。
「ん?
なんだ?」
「くぅ……その、分かるでしょ?
こんな流れなんだから……」
行け、そうサーシャに目で指示されたウルシュナ。
別に行きたくないわけでもないし、ジには助けられて感謝している。
ドールハウスダンジョンでは結局何もできなかったようなものだし流れ上いかなきゃいけないのは分かっている。
でも自分から魔力もらってくれなんていうのは何か恥ずかしい!
サーシャの笑顔が怖くなってきたのでジの服をそっと引っ張った。
あとはちょっとだけ不安だった。
リンデランのように積極的でもないし性格はガサツだし、もしウルシュナはいいやなんて言われたら、そんな不安がチクリと胸を刺す。
「ウルシュナもいいのか?
なら、お願いでもいいか?」
そんな不安を察したようにジの方からお願いだと口にする。
女の子に先に言わせるのはスマートではない。
ここは紳士的にジからお願いしたことにするのが良い。
そんなさりげない気づかいにウルシュナも笑顔になる。
サーシャに背中を押された形ではあるけどウルシュナだってジのことは友達だと思っているし何か力になれることがあるなら力になりたい。
「こ、これ恥ずかしいな……」
アカデミーは淑女で通しているウルシュナ。
身分的にも高いことがあって男友達はほとんどいない。
当然に男の子と触れ合う機会などあるはずもなく、こんなことならダンスレッスンの授業でも受けておけばよかったと思った。
男女でペアになって踊る練習をする。
貴族なら家で踊りを教わることもあるけど他人と踊るのは勝手が違うのでいつかはやっておかなきゃいけない授業ではある。
ダンスレッスンの授業を受ければ嫌でも男の子と踊ることになる。
少し慣れておけば違ったかもしれない。
ジに手を握られて顔を真っ赤にするウルシュナ。
例によってイフリートのヴェラインを呼び出してフィオスに一礼。
赤い糸がジとウルシュナを繋いでアーティファクトが絆を作り出す。
「これで終わりだ。
あんがと」
「う、うん……」
これの問題は終わったんだけど終わったって感じが薄いところだと思う。
フィオスの魔力が少ないから互いにそうした実感がないのかもしれないけど終わった感じがないからちょっと照れた感じで終わるのだ。
「ええと……この流れは私も……」
「うーん、ヒスはまだダメかな?」
「えええっ!?
か、覚悟してたのに!」
なんか感じるのだ、ヒスはまだ信頼が深まりきっていない。
ユダリカも知り合った歴はさほど変わらないけど死線を一緒に潜り抜けたためかユダリカはなんかいけそうな気がした。
誰でもいいのではなく、互いに心から信頼し合っていないと出来ないのだ。
ヒスが信頼出来ないわけじゃないけど共に戦ったことがあるのとは少し訳が違う。
いつかもうちょっと仲良くなれば力を借りられるかもしれない。
「……エとは?」
どうして最初にエじゃないのか。
リンデランが疑わしそうにジを見る。
「エか?
エは前に……」
「むぅ……?」
「ま、たまたま……ちょっとな」
リンデランの目が突き刺さる。
「じゃあ最後は私ですね」
むくれたようにしながらも待ってましたとばかりにリンデランがジの手を取った。
両手で包み込むようにして頬に寄せる。
「リン……うぅっ!」
「無粋なマネはおやめなさい」
最悪ジに力を貸すのはいいけど接触は最低限にしなさいと前に出ようとしたパージヴェルの足をサーシャが踏んで止める。
乙女の勇気を邪魔してはいけない。
娘のライバルだけどもしかしたら同じ夫に嫁ぐことになるかもしれない。
となるとリンデランも半分娘みたいなものだ。
幼い頃から知ってるしどれほどの悲しみを背負って強く生きようとしているかも知っている。
どこか控えめで心配になるような儚さが見えることがあったような子がジにはすごく積極的に行っている。
パージヴェルの気持ちも親として分からなくはないけどジもリンデランも子供にしては分別がある。
あまり過保護にしすぎないで見守ってあげてほしい。
「メデリーズ」
「ちょっと!
近くない?」
ちょっとずーつジと距離を詰めていくリンデラン。
「みなさんこれぐらいの距離でしたよ」
「ウソつけ!」
「ふふふっ、近いっていうのはこれぐらいです」
「なっ……それじゃくっついてるでしょー!」
本当に分別あったかしら。
一瞬心配になる。
早くやってあげないとゼスタリオンが死んでしまう。
なぜならフィオスとさらにその上にメデリーズを乗せて飛んでいるからだ。
流石に生まれたばっかりで背中に2匹乗せて飛ぶのは辛いようでフラフラしている。
やめたげて。
「ほ、ほらやろうか」
「はい、もちろんです」
ギューっと手を握ったままリンデランはニッコリと笑う。
「指を……絡ませて」
「こうですか?」
「まあ……」
どうしても両手で握るらしい。
条件はクリアしてるのでいいだろうと始める。
「古の契約。
汝、心に繋がる盟約によりて友に力を与うえるものとなるを良しとするか?」
この文言も一々恥ずかしい。
まあ仕方ないのでやるけどさ。
「はい。
私の力を、ジ君に。
少しでも助けになれば嬉しいです」
過去だったらこんなに自分に力をくれる人がいただろうかと考える。
長かった過去全てを通して、ここまで心から信用して魔力を託してくれる相手はこんなにいなかったかもしれない。
「少しじゃないさ。
俺にとっては一人一人の力はすごい大きな助けになるんだ」
これで6フィオス。
今過去最盛期の自分とケンカしても勝てる気がするジであった。
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