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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第五章

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知恵を絞り体液を絞り3

「ミュシュタル、どうだ?」


 入るのはミュシュタルなのでミュシュタルにチェックいただく。

 チャポンと尻尾をお湯に入れるミュシュタル。


「もっと熱い方がいい?」


 目をつぶってお湯に集中する。


「いや、どっちよ」


 目を開いてジを見上げるミュシュタルだけど人の魔獣の考えを読める能力なんてない。

 ミュシュタルがそれをよしとしているのか分からなくてヒスの方を見るとミュシュタルもヒスを見る。


「え、ええともうちょっと熱い方がいいかもしれません」


「オッケオッケ。


 もうちょい熱くね」


 もう1つ石を入れてさらにお湯の温度を上げる。


「どうよ?」


「あっ、ひっくり返しちゃいますよ!」


 また尻尾をつけたミュシュタル。

 お気に召したようでお湯の中に入ろうとする。


 手をかけて入ろうとするとそのまま箱をひっくり返してしまいそうなのでヒスがミュシュタルを支えて入れてあげる。

 お湯の量はミュシュタルが顔を上げれば大丈夫なぐらいなのでそんなに多くもない。


 舌をチロチロと出して目を細めてお湯につかる様子は気持ちよさそうである。


「なんだか羨ましいですね……」


 ミュシュタルが気持ち良くなっている気持ちが伝わってくるヒスが羨ましそうにミュシュタルを見る。


「おおっ!」


 のんびりとお湯につかるミュシュタルを見ていると変化が始まった。

 じんわりと赤っぽいものがミュシュタルのお腹から滲み出てきてお湯に溶けていく。


 最終的には効果絶大。

 やや赤っぽくなったお湯は体液が多く混ぜ込まれていた。


 同じくらいの色の濃さの液体にしようと思ったら通常採取量の3倍ほど必要だったので大体3倍の量が滲み出たことになった。


 と言うことで、ミュシュタルは朝運動してヒスにマッサージしてもらってお風呂に入ることになった。

 至れり尽くせりだなと思わなくないけどそれが1番体液が取れるのだからしょうがない。


「ちょ……ちょっと思ってたのと違いますけどー」


 ミュシュタルのお付きの人みたいになったヒス。

 もうちょい数増えれば楽になるから我慢してくれと思ったジである。


 そしてそこからは適切な濃度なんかを探るのにも苦労した。

 あまり濃く厚くなると赤っぽさが出てしまう。


 乾燥すると赤茶っぽくなるので見た目が非常に悪い。

 その分効果は高いので気にならないならいいけれど見た目の両立も最終的には必要な要素になる。


 商品化にあたって意外と大変だったことは特性上失敗作も燃えにくくなってしまうことだった。

 まずは馬車を加工するということのために木材で試していくのだけど失敗だった木材を処分するのがちょっと大変だった。


 本当ならパッと燃やしてしまうのが早いのだけどなんせ燃えにくいのだ。

 燃えないわけじゃないので細かく砕いて燃やしたりフィオスに処理していただいたりした。


 燃えにくいということはわかっているのでそこはいいのだけどやはり断熱性の調査が難しかった。

 そこら辺はヒスが細かく記録をつけながら色々と試してくれた。


 こうした細かい作業はヒスは得意であった。

 クモノイタの時は野郎ばっかで細かさや繊細さのかけらもなかった。


 色々な厚みとかでは作ってくれたけど記録なんて取ってないので全く同じものを作るのにも苦労した。

 その点ヒスは同一条件で試せるようにちゃんと考えて、体液の濃さとかとも出来る限り同じにして塗りなどを試したりしてくれていた。


 研究者気質なところがあるのかもしれない。


 そうしてヒスが調べてくれた条件の中で良さそうなものはさらに大きなものを作って試す。

 馬車サイズで上手くいけばそれより大きくても大差はない。


 馬車というよりもデカい木の箱だった。

 家の前に並べて実験したのでまた変なことやってると注目を浴びてしまった。


 家の前に突き立てられた失敗作をフィオスが食べる横で箱の中に入ってジも性能を調査した。


 さらにはノーヴィスなどの職人にも見てもらい、効果や見た目の影響などをチェックしてもらった。

 最後に商品にどう活かしていくかを多少議論する。


「ヒス!」

 

「は、はい!」


「よくやってくれた!」


「じゃ、じゃあ……」


「ああ。


 ヒスとミュシュタルの努力の結晶はついに商品となる事が決まった!


 君たちの努力のおかげだ!」


 こうして細かく頑張ってくれたヒスと至れり尽くせりでのんびり腹から体液を出してくれたミュシュタルのおかげで新商品は出来上がった。


「商品名はパロモリ液だ!」


「パロモリ……ってあのパロモリですか?」


「そう。


 暖かく、みんなを守ってくれる精霊さ!」


 パロモリとは大人が子供に聞かせるお話に出てくる精霊の名前である。

 暖炉の火の精霊で部屋を暖かくしてくれて幸運を招き入れてくれる精霊だとされている。


 暖炉の火はパロモリのお家だから近づいちゃダメよ、なんて言うのだけど子供が火に近づかないようにするためのお話だ。

 過去では赤色防炎液希釈用なんて可愛くない名前だったので多少可愛くした。


 クモノイタよりは正体が分からなくていいだろう。


 この体液を生み出した目的はもっと別にあるけれど今は暖炉の火の精霊のようにみんなを温かくしてくれるのがいいと思ったのだ。

 まあ、温かいだけじゃなく冷やす方でも活躍してるんだけど温かい方がイメージがいい。


 当面は液そのものではなく液を利用した加工や加工した商品がメインだろうけど商品名は大事だ。


「さて……まずはちゃんとした試作品作りだな」

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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