幸せな夢2
日頃の感謝と愛を伝える。
エは愛おしさに任せてそっと肩に頭を乗せた。
「別にえっちなことなんてありませんー!」
夢の過程的にはえっちなことはもうだいぶ前に通り過ぎている。
その後の穏やかな世界。
隣で座っていたのが誰かなんて考えるまでもない。
「ジ!
あんたはどうなのよ!」
もうここに来て夢の中身を話してないのはユディットかジである。
エに白羽の矢を立てられてジは少し困惑する。
「俺のは……みんなと違って悪夢だったんだ」
「えっ?」
「夢を見せたのはダンジョンのボスだ。
なんでか知らんけど俺にだけ悪夢見せていきやがったんだよ」
そんな幸せな夢見れるなら見たかった。
「ふーん、でもお前に怖いもんなんてないだろ?
ドラゴンだってとって食っちまいそうなのによ」
「食えるんならドラゴン食ってみたいな」
「なんの悪夢だったんだ?
聞いても、いいか?」
何を見て悪夢だと思うのか。
話したくないならいいけど聞いてもいいなら聞いてからかってやるとライナスは思った。
「みんなだよ」
「みんな?」
「そう、みんなから俺は……酷いことを言われるんだ。
何もできない、変わらない奴だと言われて、俺はその言葉を聞くことしかできないんだ」
みんなと言うけどあの時にいたのは3人。
不思議な少年が過去を見たがったのでより過去から人を引っ張り出してきたのだろうけど放っておいて何もしなかったらもっと多くの人が出てきて色々言われたかもしれない。
「俺は怖いんだ。
みんなのことが。
みんなを失うこと、見捨てられること、助けられないこと。
大切な友達だから……」
「私は絶対にジのこと見捨てないよ!」
暗い顔をしたジの手をエが握る。
年を取っても一緒にいたいなんて夢を見たんだ、見捨てるはずがない。
「俺だって!」
「私もです!」
「忠誠を誓った騎士が裏切ることなどありません」
「私も……かな。
私が自分の力で勝つ時まで元気でいてもらわなきゃいけないからね」
「みんな……」
「なんか最近お前、泣き虫だよな」
「な、泣いてねーし!」
確かに泣いてばかりいるかもしれない。
こんな涙腺ばかり年老いていてどうするのだ。
ただ今はウルウルときているだけで泣いてはいない。
「ありがとな、みんな」
「みんな、ジに命救われてる、だからここにいる。
裏切りなんてしないわよ。
……ユディットさんは分からないけど」
「わ、私も命を救われたようなものです!」
同年代のみんなの中でユディットだけ年上でちょっと浮いた存在。
家に来たこともあるので一応ユディットなる人がいてジに忠誠を誓っていることは知っているけど何があったのかまでは知らなかった。
まあ魔法による誓いを立てたのでユディットが裏切ることはまずない。
「ほんとお前は恵まれてるよ。
特に俺みたいな友達がいてさ!」
ドーンと胸を張るライナス。
「……そうだな、愛してるぜ、大親友!」
「むぅ、そ、そんな風に言われるとこっちが照れんじゃん!」
「みんなも……みんなも大好きだ!」
いいんだ。
過去がどうであれ、みんながどう思っていたにしろ、もう過去には戻れないし過去は記憶の中にしかない。
今寄り添ってくれる人たちを大切にしよう。
ここにいるのはライノじゃない、エリンスじゃない。
過去にはいなかったリンデランやウルシュナもいる。
自分が変わってるかは過去を知る人がいないので知らないけど周りは確実に変わっている。
これでいいのである。
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