表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

207/1245

バカヤロウ3

「オーク、スケルトンときて、次は……ゴーストか?」


 魔物の人形を作って売るのも面白いな。

 そんなことを考え始めていた。


 出現する魔物の種類は多彩さを増し、ジも舌を巻いた。

 デフォルメのやり方もうまく、ある程度魔物としての威圧感を残しなんの魔物か分かるようにしながらも過度な恐怖感を与えないようにしてある。


 ウルフのぬいぐるみがジは欲しかった。


 第二セーフルームを出発してさらに進んでいくと魔物は1段階上のものになった。

 豚にも似た容姿をしたオーク、の人形とか人の怨念が肉のなくなった骨を動かすアンデッドの魔物のスケルトン、の人形とかまた新しい魔物が出てくるようになった。


 そして今度はゴーストの人形である。

 後ろ姿は白い塊でやや滑稽。


 本来は半透明なはずのゴーストだが人形ではそこまで再現しきれない。

 浮いているのは不思議だがある意味これまでで最も弱そうに見えた。


「おっしゃ、いくぜ!」


「ライナス!」


 1人飛び出していくライナス。


「もらったぁ!」


 ふよふよと浮いて移動するゴーストの背中を切り付けた。


「へっ?」


 確かに剣はゴーストに当たったはずだった。

 なのにゴーストは切れずに何の感触もなくまるで空振ったような感覚。


「エ、魔法だ!」


「う、うん!」


 グルリと振り返り、ライナスに襲い掛かろうとするゴースト。

 常に準備をしていたエは素早く魔法を放ち、火の球がゴーストに飛んでいった。


「うわっ、アッチ!」


 ライナスに攻撃する寸前のゴーストに火の球が当たってゴーストが大きく炎上する。

 火の球の勢いに押されて飛んでいったゴーストはそのまま燃えて消えてしまった。


「大丈夫か、ライナス」


「大丈夫……だけどよ。


 一体何だったんだよ?


 確かに俺切ったぜ」


「それはあいつがゴーストだからだよ」


「ん?


 どういうことだよ?」


「ゴーストに対しては物理攻撃は効かないからな」


 魔物のゴーストには剣で切るなどの物理的な攻撃は通用しない。

 神聖力の込められた武器を使うか、魔法を使わなきゃゴーストにダメージを与えられない。


 どこまで再現しているか不明だったけれどゴーストの物理攻撃の効かなさも再現されているようであった。

 いくら見た目が人形でもダンジョンに常識を当てはめて考えてはいけないのだ。


「今回はエがちゃんと構えていてくれたからよかったけどもっと慎重にならないと」


「……別に大丈夫だったし」


「ライナス?」


「俺も魔法使えるし、あれぐらい別に平気だった。


 慎重になれって何だよ……結局やってみなきゃ分かんなかっただろ!」


 明らかにイラついているライナス。


「確かにそうだが分からないなりにフォローする体制ってものがあるだろ」


「だからんなもんイラネェって言ってんだろ!」


「……いるよ」


「ちょ、2人とも!


 こんなところで言い争いしてどうするのよ!」


「ライナス、お前は後ろを警戒しろ」


「なんだと?」


「集団として動けないなら下がってろ」


「なっ……」


「今このパーティーのリーダーは俺だ。


 今のお前を前に出して戦わせることはできない」


「こんなかで1番弱いくせに……」


「ライナス!」


「お前のいう通りかもしれないけど少し頭を冷やせ……」


 完全に雰囲気が悪くなってしまった。

 ムードメーカーでもあったライナスの機嫌が悪くなってしまったらみんなの雰囲気を持ち直すのが難しい。


 こういう時大人だったらもっと上手く出来るのかもしれないがみんな子供だし、ジは過去に年寄りになるまで人付き合いが少なかったので場の雰囲気を取り持つのが上手くない。


 ピリついてはいるがゴーストはエやフの魔法、あるいはユディットの魔法剣が通じることが分かったので進むこと自体は問題がなかった。


「……なんだ?」


 ジが抱いた感想は異様。

 分岐もなく真っ直ぐに伸びた通路。


 ずっと続く通路のど真ん中に3匹のゴブリンがジたちに背を向けて座っている。


「……なんか怪しいな」


 ここにきてゴブリン。

 しかもジッとただ座っているだけというのも何だか違和感を感じた。


「なんだよ、ただのゴブリンじゃないかよ」


「いや、ただのゴブリンだから慎重にならなきゃいけないんだ」


「チッ、なんだよそれ。


 俺が行ってやるからフォローの体制でも整えてろよ!」


「おい、ライナス!」


 何か嫌な予感がして違和感の正体を突き止めようとするジに業を煮やしたライナスがジの静止を振り切って飛び出した。

 慌てて後を追いかけるがライナスの足が速く、あっという間にゴブリンに近づいていく。


「たかだかゴブリン……が…………」


 振り返ったゴブリンはニヤニヤと笑っていた。


「ライナスッ!」


 ガコンと音がして床が開いて抜けた。


 罠。落とし穴。


 落とし穴のど真ん中にいたライナスは何もできずに落下を始める。


「フィオス!」


「会長!」


 ジがフィオスを呼び出して細長い棒状にする。

 穴に飛び込まんばかりの勢いで棒をライナスに向かって差し伸ばす。


 そのまま落ちていかないようにとユディットがジの服を掴んで床に剣を突き立てた。


 落ちながら振り返り、ジの差し出した棒に手を伸ばすライナス。


「ライナスーーーー!」


 後わずか、指先だけを掠めてその手はフィオスに届かなかった。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 険悪になった状況でジが一度戻るという判断をせずに進んでいること
[気になる点] 軍人っぽい訓練を受けている人間がリーダーの指示を無視するってあり得るのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ