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大人の事情とお願いと2

「どうやらこのダンジョンは条件付きダンジョンみたいなのです」


 ため息混じりにオロネアが言った。

 ダンジョンは研究されても何も分かっていないも同然のものだがこれまでの経験から様々なダンジョンがあることは分かっている。


 似たようなダンジョンはあれど1つとして同じダンジョンはない。

 色んなダンジョンがあってその中でも類型化したり、分類分けしたり出来るものもあるけれど特殊なダンジョンも存在している。


 特殊なダンジョンの中でもさらに特殊なダンジョンが条件付きダンジョンである。

 男性限定、女性限定、魔法使い限定、身長制限など特定の条件を満たしていなければ入ることが出来ないダンジョンが一部にはあった。


 ジが過去に聞いたものでは豊かなヒゲがなければ入ることができないダンジョンがあって、女性を外してみんなヒゲを伸ばしてダンジョンを攻略したなんてことがあった。


「子供限定ダンジョン……どうやらあのダンジョンには子供しか入れないのです」


「そんなものが……?」


「アカデミーという場所に出来たからでしょうか、大人は一切ダンジョンに入ることができないのです」


 聞いたことが全くない話。

 アカデミーの下にそんな変な条件付きダンジョンがあったことなんて。


 驚きを隠しきれないジ。

 ただオロネアも長く生きてきて知識も豊富であるが子供しか入れないダンジョンなんて聞いたことがなかった。


 シードンからはダンジョンがあるので助けてほしい、細かくはアカデミーで聞いてくれと言われていたのでずっと謎だった。


「つまり俺を呼んだ理由っていうのは……」


「ええ、ダンジョンの攻略にお力を貸していただきたいのです」


「……なんで俺?」


 子供の力が必要なことは理解できる。

 しかしジの力が必要なことには直結しない。


 アカデミーには子供が通っている。

 ジなんかよりも才能があって、まともな教養や訓練を受けた優秀な子供たちがたくさんいる。


 わざわざ貧民の子を連れてきて宰相や学長が頭を下げることなどする必要がない。


「……なるほどね」


 そこまで考えてジも理解した。


「世知辛い大人の事情、ですか」


 痛いところを突かれてオロネアとペズヘンが一瞬気まずそうな顔をした。

 すぐに取り繕ったけれどまさかジの方がこんなに早く事情を飲み込むとは思っておらず、油断してしまっていた。


「ど、どういうことですか?」


 1人事情がわかっていないユディット。

 言葉を挟んではいけないのだがジがやや不機嫌になったのを感じて思わず口を出してしまった。


「考えてみろ、子供限定のダンジョンがある。


 しかしここはアカデミーだ、優秀な子はたくさんいる。


 困っていて問題であるのに、なのになぜそんな優秀な子供たちにお願いしない?」


「えっ?


 ええと……」


「貴族の子供だからさ。


 もしダンジョンが危険なところだったら、ケガでもしたら、帰ってこなかったら……

 責任は誰が取る?


 アカデミーの大人たちだろうな」


「は、はぁ……」


 まだ理解してなさそうなユディット。


「だから俺を呼んだんだよ。


 どこで知ったのかは分からないけど貧民の子供なら死んだって文句を言う奴はいない。

 いても、金でも握らせれば黙るからな」


「なっ……!


 そんなことって……」


「耀きアカデミーのお偉いさんにお願いされれば喜んで俺がダンジョンに入るとでも思ったか?


 攻略すれば最上、帰って情報を持ち帰れば上、仮に帰って来なくても危険な場所として封鎖できるから良しってところかな?」


「そ、そんなことは……」


「やめなさい、ペズヘン」


 ジの態度が大きく硬くなってしまった。

 頭が良い子であるとオロネアは感心した。


 同時に失敗したとも思った。

 どう伝えるべきか悩んで言葉を選ぶうちに誤魔化すような形になって、騙しているみたいな雰囲気が出てしまっていた。


 年上に見えるユディットでさえ理解できていなかったことをジは自分で理解してみせた。

 一を聞いて十を知る。


 ペズヘンが言い訳をすればするほどジの不信感は募るばかりなので、オロネアは止めた。


「もちろんそのような事情があることは事実です。


 貴族の子や才覚溢れる子を危険なダンジョンに送り込むことは出来ないということになりました」


 この判断はオロネアの本意ではない。

 子供に攻略を任せるのは不安、なのでアカデミーを封鎖してしまうのが1番安全でどの年齢の子供からなら入れるかを調査して戦えそうな年齢なら希望者を集めて攻略を試みるのが良いと思っていた。


 しかしアカデミーや王国の関係者を集めて会議を行った結果アカデミーの封鎖は行わずダンジョンのことも公表をしないとなったのだ。

 ただでさえ戦争の影響があってこの国のアカデミーに通わせることに不安を感じている者が多くいる。


 町中でダンジョンが発見されたとなれば大騒ぎにもなる。

 まともな考えを持っていたものもいるが先にそうした考えの声の大きな者が主張を始めてしまったのである。

 

 混乱を避けるためにダンジョンのことには箝口令が敷かれた。


 さらに早急な調査を行うことまで焦った貴族たちに押し切られてしまった。

 戦後処理で王様が王城にいなかった時に決まってしまった。


 正直どうするのか難しい案件であってみんなが納得する代案も無しに王様もひっくり返すことができなかった。

 そんなんでありながらなんとかしなきゃいけないのためアカデミーの人間に押し付けられた。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
誰かは知らんけど 指揮能力をって理由で選ばれたんじゃないかな? 多分潜る子も近しい人選になるのではないかな?
[気になる点] 王や上位貴族の子女と交流があり、行列が出来ている商会の長でもある「才覚ある」主人公なんぞ下手に突っ込ませたらそれこそ「お前らの誰が詰め腹を切るんだ?」ってアカデミーの政治的地獄が花咲く…
[一言] 僻みの被害妄想が感じれてしまう話。 主人公は賢いのだから、金でも握らせれば文句はないのくだりは不要だったかなと。 王様にも友と言われ、宰相に頭を下げさせたばかりで。 死んでも金を握らせれば誰…
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