この遺跡は!11
「うーん……なんでしょうか、これ?」
リンデランは壁画を見つめて首を傾げる。
不思議な壁画は何を描いてあるのかいまいち汲み取ることができない。
何かがひれ伏しているように見える。
まるで崇拝するかのように膝をついて、両手を上げたり頭を下げたりしている。
ただその対象がなんなのか謎なのだ。
丸い何か。
壁画の真ん中にいるのは、なんなのかよく分からない丸いものであった。
「もしかして……スライムだったりして」
軽い冗談ぐらいのつもりで、エニはフィオスのことを見る。
丸くて不思議なものといえばフィオスだ。
それに丸いものは、フィオス商会の絵にも似ていると思ったのだ。
「確かに、そう見えるな」
「えっ?」
ジケに肯定されて、エニは冗談だったのにと驚く。
「他の壁画も見てみよう」
壁画は一枚だけではない。
違う様子が描かれたものが何枚かある。
「これは……何かと戦っているんでしょうか?」
ユディットも険しい顔をして壁画を眺める。
武器か何かを持った人のようなものが二種類。
一つはなんだか怖い顔をしていて、怖い顔をした方と対峙している側にスライムのような丸いものがいる。
「どの壁画にもスライムっぽいのがいるな」
何を描いているのか。
なかなか難しいが、どれにも丸いものがいる。
「スライムを崇拝していた何か……」
そんなことあるのか?
他の人がいたなら、こんなことを言うかもしれない。
だがジケたちはフィオスという存在を知っている。
そしてフィオスがバカにできるようなスライムでないことも知っている。
もっとすごいスライムがいたとしてもおかしくはない。
崇拝されるような偉大なスライムが遥か昔にはいたのかもしれない。
「現にゴーレムもフィオスに膝をついていますしね」
立ち止まるといちいちゴーレムが膝をつく。
やはりその先にいるのはフィオスだった。
いくつかの壁画やゴーレムの行動からするに、この遺跡はスライムを信仰していた集団のものだったのかもしれないとジケたちは思い始めていた。
「スライムのための遺跡……?」
仮にスライム信仰で、遺跡がスライムのための場所だとしても謎は多い。
なんでスライム信仰していたのかとか、台座や鳥カゴのようなものはなんのためにあったのかとか、壁画に描かれたものの意味とか。
「あれ? トカゲからゴーレムが……」
トカゲの口の中からゴーレムが出てきた。
体液でぬちょっとしたゴーレムはゆっくりとジケの方に歩いてくる。
「……これは何?」
ヌメヌメゴーレムは、ジケの目の前で膝をついて手を差し出した。
手のひらの上には黒い石のようなものがある。
半球状で、丸いものが割れたような形をしていた。
「あっ、フィオス!」
ジケに抱えられていたフィオスがピョンとゴーレムの手の上に飛び乗った。
「……フィオスのコアみたいだね」
フィオスは黒い石を自らの中に取り込む。
黒い石がフィオスの大切なコアの周りをクルクルと回る。
エニは黒い石がフィオスのコアに似ているなと感じた。
「半分に割ったらこんな感じかもな」
黒い石が溶けていく。
プルプルと震えるフィオスの感情は、ジケにも分からない。
でも不思議と胸が熱くなる。
「そんなもの食べて大丈夫なの、フィオス?」
黒い石は結局フィオスに溶かされて食べられてしまった。
「うっ……」
「ジケ?」
胸の熱さが急に強くなった。
燃えてしまいそうな熱さが体全体に広がっていって、ジケは胸を押さえて膝をつく。
苦しそうな顔をするジケにエニは慌てて治療を施すも、ジケの感じる熱さは少しも楽にはならない。
「ジケ君!」
「ジケ……ジケ!」
そのままジケの意識は遠のいていく。
リンデランやエニの声がこだまするように遠くに聞こえて、そして、ジケの意識は黒く塗りつぶされてしまったのだった。




