この遺跡は!10
「魔物!?」
上から降ってきたのは魔物だった。
「フィオス!」
巨大なトカゲのような魔物は大きく口を開けて降ってきて、台座ごとフィオスのことを飲み込んでしまった。
フィオスが感じていた脅威は、天井に潜んでいたトカゲだったのである。
トカゲは床に落ちてジタバタと起き上がると鳴き声を上げる。
「なっ……」
トカゲにフィオスが食べられたという衝撃。
ただそれでフィオスがやられたわけじゃない。
フィオスと繋がっているジケには、フィオスがまだ無事であることが感じ取れていた。
逆召喚しよう。
そんなふうに思っていたらゴーレムたちが動き出した。
「ゴーレムが魔物を攻撃してる……!?」
まるでフィオスを助けようとしているようだとジケは思った。
台座に向かって膝をついていたゴーレムたちは、一気にトカゲに襲いかかっていく。
動きは鈍いが、パワーそのものは非常に強いゴーレムは大物相手の方が実力を発揮できる。
ゴーレムたちのど真ん中に降り立ったトカゲは、あっという間にゴーレムに取り囲まれて攻撃を受ける。
「……フィ、フィオス!」
思わず呆然としてしまった。
トカゲも暴れて抵抗を見せるものの、ゴーレムは怯まずトカゲに掴み掛かる。
ジケはフィオスを召喚して手元に呼び寄せる。
「……お前は余裕だな」
怖かった。
というよりも面白かったという感じでフィオスはぷよぷよと細かく揺れる。
「全く……なんなんだよ」
トカゲボッコボコ。
ゴーレムも半分ぐらいやられてしまったものの、殴られ続けているトカゲは目に見えて弱っていく。
ダメージを受けるほどに動きが鈍くなるトカゲと違って、ゴーレムは倒されない限り体力なんてものも無尽蔵である。
だんだんとトカゲの抵抗が弱くなり、ゴーレムに一方的に殴られるようになっていく。
ゴーレムがトカゲを殴る鈍い音が部屋に響き、トカゲはか細く鳴き声を漏らす。
「こわぁ……」
ただただゴーレムは殴りつける。
あまりにも暴力的な戦いで、トカゲはあっという間に力尽きて地面に倒れる。
最終的に残ったゴーレムは三割ほど。
「あっ、こっち来る」
トカゲを倒した残りのゴーレムたちがジケの方に向かってくる。
戦っている間に逃げればよかったのだけど、壮絶な戦いに逃げることを忘れてしまっていたのだ。
「ジケ!」
エニが階段の方からジケを呼ぶ。
今ならまだ走れば逃げられるだろう。
「何しているんですか!」
だけどジケは逃げない。
リンデランが心配そうな顔をして叫ぶ。
「俺の予想が正しいければ……」
ある種の自信のようなものがジケにあった。
「多分、攻撃はされない。ゴーレムたちはきっと……」
ズンズンと歩いてきたゴーレムはジケの目の前で立ち止まる。
そして、ゆっくりと膝をついた。
「やっぱりな」
ゴーレムはジケに頭を下げる。
「俺に……いや、フィオスにか」
頭を下げている対象は自分ではなくフィオスなのだ、とジケは目を細めてゴーレムを見ながら思った。
「会長!」
「大丈夫ですか!」
ユディットとニノサンがジケの元に駆けつける。
二人が来てもゴーレムは動かない。
「どうやら、ゴーレムは攻撃してこないみたいだ」
ジケはニヤリと笑って、ゴーレムの胸をコンコンと叩く。
ユディットはヒヤリとしたけれど、ゴーレムはされるがままである。
「……少しここを見て回ろうか」
サンモーウを含めた冒険者たちを助けることが優先される。
しかしジケたちは今サンモーウを助けるために遺跡の中に入っているのであって、何か気になるからとまた中に入れてもらえるとは限らない。
どうしてゴーレムがフィオスに敵対しないのか。
その理由が気になって仕方ない。
「せめて壁の絵を見てみよう」
答えが得られるかは分からない。
けれども壁には絵が刻んであり、もしかしたらそこから何かのヒントが得られるかもしれないとジケは考えた。
「ニノサン、明るくしてくれ」
「分かりました」
イレニアは明るく光を放つ。
フィオスを抱えたジケが移動するとユディットとニノサンがついていく。
そしてさらにその後ろをゴーレムがついてくる。
なんだかジケがゴーレムを引き連れているかのようだ。
「ジケ!」
「ジケ君!」
エニとリンデランもジケのところにやってくる。
「何してるの?」
「んー、エニもこの状態、気にならないか?」
ジケが後ろを向くとゴーレムがいる。
トカゲとはあんなに戦ったゴーレムが、どうしてジケたちには攻撃せず、フィオスに頭を下げるのか謎である。
「確かに不思議ですけど……」
「壁に何か絵が描いてあるんだ。もしかしたら答えが分かるかもしれない」
ゴーレムが攻撃してこないなら脅威はない。
むしろ魔物を倒してくれるなら安全なぐらいである。
「むむ……」
こんなところさっさと抜け出してしまいたいけれども、ゴーレムの不思議な行動の理由は気になる。
不満そうな顔をしながらエニもジケについていく。
「確かに壁に絵がありますね」
ジケは魔力感知でうっすら見ていたけれど、離れていたリンデランは壁に近づいてみてようやく本当に壁画があることに驚いた。




