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意外と会う機会あるよね4

 リンディアのことは知っている。

 知り合いということでもないし会ったこともなかったけどリンディアは有名だった。


 ヘギウス商会の一事業に服飾事業がある。

 その中でも時代の先を行く新たなドレスを作っているデザイナーがリンディアだった。


 女性の憧れ。

 女の子に生まれたならリンディードレスは誰しも一度は着てみたいものであった。


 過去ではヘギウス家の没落と共に聞かなくなったが今こうして外に目を向けてみるとリンディアのドレスの話は時折耳にすることがあった。

 まさかリンデランのおばあちゃんだとまでは知らなかった。


「マナーなんて相手を不快にさせなきゃいいのよ。


 その点あなたは満点よ」


 ニッコリと微笑むリンディアはジに会ったこともないおばあちゃんの温かさを感じさせてくれるような人だった。


「どっかのおバカさんは出会ってすぐに私の手の甲に跡が残るほどの口づけをしてくれたものよ」


「リ、リンディア、そんな若い頃の話を……」


 パージヴェルが顔を赤くして小さくなる。

 口に手を当てて笑うリンディアを見ているとそのおバカさんが誰なのかは言わずもがなだった。


 商家で財で持って国を豊ませた功績が認められて貴族になったヘギウス家の長男坊は呼ばれたパーティーでとある貴族の女性に一目惚れしたのだ。

 昔から一直線でまっすぐな男だったパージヴェルはひたすらにアタックを繰り返してリンディアと結ばれた。


 その貴族らしくないやり方は今でもリンディアにからかわれるのだ。

 別にバカにしているのではない。


 今ではもうその時のことが愛おしくて、そしてそれを聞いて恥ずかしがるパージヴェルもまた愛おしいのだ。


「パージヴェル殿のところはいつも仲がよろしくて羨ましい」


「あら、私たちは仲良しじゃないって言うのかしら?」


「そう言うことではない。


 一つの夫婦の在り方として素晴らしいというのであってだな……」


「あなたも私が好きな花を町中探して来てくれたわね。


 でも見つからなかったから泣きそうな顔をして押し花の栞をくれたっけ」


「サーシャ!」


「あら、こういうのが素晴らしいんじゃなくて?」


 今度はルシウスが顔を真っ赤にする。

 イタズラっぽく笑うサーシャ。


 やはりウルシュナの母親だなと思うけどウルシュナよりもおてんばなのではないかとも思える。

 どちらの夫婦も女性が主導権を握っているみたいだった。


 ただ仲は良さそうだし子供の前でもいちゃつける仲の良さはそれはそれでいい。


「それでなんでわざわざこんな席を?」


 おそらくウェルデンがこの清掃事業の話のまとめ役なら調べているはずだ。

 今がタイミング的にオランゼが困るだろうことを。


 それにもかかわらず今話を持ってきたのは何かの狙いがあってのことのはずだ。


 まるでジを引っ張り出したかったみたいだ。


「あなたに……ジさんに会いたくて」


 パージヴェルが頬を染めるリンデランを見てショックを受けた顔をしている。

 リンディアもおやおやといった顔をしている。


「そーだよ、だってさー全然会いに来てくんないじゃん?」


 あらっとサーシャが眉を上げる。

 ルシウスは複雑そうな顔をしている。


「いや、別にそんな意味じゃないぞ!


 ただ私たち友達なのにあの後どうしてんのかも分かんないしさ……」


「そりゃ……悪いとは思うけどさ。


 俺は貧民街に住む貧民で、お前たちは貴族だ。


 俺たちは友達でも俺みたいなのが貴族街に出入りすることを好ましく思わない奴らだっている」


 別に殺しはしないだろうけど何かの警告ぐらいは寄越してくるかもしれない。


 そもそも距離も遠い。


 気軽に遊びに来れる場所ではないのである。

 立場が違いすぎるので多分ウルシュナやリンデランに何かが起こることはない。


「それに俺だって休んじゃったから色々やることだってあったんだよ」


「分かってるよ」


 むくれた顔をするウルシュナ。

 言われずとも友達じゃないとか嫌っていて会いにこないのではないと分かっている。


「だから考えたんです。


 おじ様に相談したところ何か1つでも理由があれば周りを黙らせることは難しくないと言われまして、色々とジさんのことを上手く使えるものはないかと調べてくださいました」


「……それで俺がオランゼさんのところで働いていると知ったんだな」


 全部はジを貴族街に引っ張り出すため。

 すぐに貴族街にジが出入りするのは無理でもジが貴族街にいても違和感がなくなっていけばいい。


 だからオランゼが事業を拡大した時を狙い、ジしか期待に沿える人がいないタイミングを見計らった。

 見事にジの一本釣りに成功して、ジが担当することになった。


 全てを裏で操っていたのはウェルデン、のようでウェルデンを操ったリンデランの方なのかもしれない。


「ちょうど私のお婆様とウルシュナのお母様がたまたま帰ってきていて、ぜひジさんに会いたいというのでお食事会でもしようということになったんです」


「ルーやウルシュナからも聞いているわ、あなたに命を救われたと」


「私も夫が話してくれないのでヘレンゼールから聞き出しました。


 どうやらリンデランだけでなくこの人もあなたにご迷惑をお掛けしたみたいね」

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

ブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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