お姫様を迎えにいこう3
旅を快適にするのは何か。
十分な準備、気心の知れた仲間、便利な道具と色々とあるが、やっぱりお金である。
良い食料を用意して、途中途中でしっかりと宿で休んでいけば旅の不快感は軽減される。
町までいけば宿に泊まれるという希望もあるし、ギスギスするようなこともほとんどない。
もちろん、十分な準備も気心の知れた仲間も便利な道具もあるので旅そのものは快適だった。
意外とエニの存在も大きい。
多少ほっといても火力をキープできるぐらいに炎を操れるので野営でもあったか料理を提供可能なのだ。
ただ、エニに料理をさせてはならない。
こうしてジケたちは順調に進んで、オルトロンの隣にあるプロビスという国にやってきた。
「すっごい果物安いな」
「この国の特色ですね」
プロビスはどこに行っても果物が安い。
なぜならプロビスは国中に果樹園が存在している国だからだった。
国を上げて果樹栽培を推進していて、色々な果物が育てられている。
そのために色々な種類の果物がお安く手に入るのだ。
タミとケリが来たら大喜びな国だろう。
同じ果物でも甘味が強いの、さっぱりしたの、匂いが強いの、大きいの小さいのと色々とある。
「うんまい」
「これ、甘いね! 市場で売ってる当たり外れあるものだけど……甘いものはちゃんと全部甘い」
甘いよ! と言われて勧められた果物を食べる。
皮ごと食べられるもので、赤い皮の中は白いみずみずしい果実になっている。
一かじりするとサクッとした食感に、ジュワッと果汁が口の中に広がる。
さわかな香りと強い甘みを感じた。
「こっちは甘さ控えめで酸味があるな」
「見た目同じようなもんなのにこうも違うんだな」
もう一つ同じ果物だけど品種が違うものも買ってみた。
こちらはちょっとした酸味があるもので、また違った味わいがある。
甘いものはどれも甘く、酸味があるものはどれも酸味がある。
品質も一定して高い。
ちょっと距離はあるけれど、果物が安く仕入れられるならちょっといいかも、なんてジケは思った。
「この先の町外れにエルオア様がいらっしゃいます」
魔獣が引く馬車を走らせて町の外れまで移動する。
家が少なくなってくると町の外にある果樹園なんかも見えてくる。
「あの家が私たちが住んでいるところです」
「なんつーか……」
「一国の姫様だった人が住むには粗末でしょう?」
「そこまで言わないけどさ」
家というか、大きめの小屋みたいなものがキリエたちが住んでいるところだった。
貧民街にも負けてないとリアーネは思った。
馬車を家の横に止めて降りる。
何かの果物っぽい甘い匂いがかすかに漂ってくる。
「キリエ!」
一人の少女が家に向かってきていた。
キリエを見て目を大きく見開くと、手に持っていたバスケットを落として走る。
「無事でよかった!」
少女がキリエの胸に飛び込んだ。
「ただいま戻りました、エルオア」
キリエは穏やかな笑顔を浮かべて少女を受け止める。
やや暗めの金髪をした快活そうな女の子が、噂に聞いていたエルオアであった。
「どうだった? ウェドン様は見つかった?」
「話すと少し長くなるわ。ただ……悪い結果にはならなかった」
エルオアはジケたちのことを見る。
目を細めて、不思議そうな顔をする。
なかなか見ただけでは難しいメンバーだろう。
リアーネは別にいいだろう。
ユディットもやや若めだがきっとそんなに違和感はない。
だがジケとエニは明らかに若い。
キリエが人を連れてくるということは援軍なのだろうけど、どう見たって援軍には見えないはずだ。
「みんなのことを紹介するわ。二人は……仕事中?」
「うん。でももうすぐ終わって帰ってくると思うよ」
「じゃあ家の中で待ってましょうか。久しぶりにご飯でも作って待ってましょうか。色々と買ってきたのよ」
「本当!? やった!」
キリエが帰ってきたことを喜ぶエルオアは普通の少女に見えた。
ジケたちが入ると家はかなり狭かった。
だがそこからさらに二人帰ってきて、さらにギリギリの状態になっている。
キリエがささっと料理をして小さいテーブルに並べる。
道中にもキリエが料理することがあったけれど、手際が良くて意外と上手い。
安い果物を使った料理やソースなど作られたものは豪勢だ。
「ウーキューです」
「私は、シェルティです」
食べながら自己紹介をした。
ウーキューが元使用人で、シェルティが元兵士らしい。
「そうですか……ウェドン様はすでに……」
キリエがこれまでの経緯を説明した。
ユディットの父親であるウェドンがすでに亡くなっていると聞いて、エルオアは落胆したような顔を見せた。
「ですがウェドンの子息であるユディット君を見つけました。そしてその主君であるジケ様にご協力いただけることになったのです」
「ええと……」
キリエは自信がありそうな表情をしているが、エルオアたち三人は少し懐疑的だ。
やはりユディットではなく、まだ子供のジケの方に引っかかっているらしい。
ジケも気持ちはわかる。
助けとなる人を連れてきたといって子供を連れてこられてもすぐに信頼することは難しい。




